【このワインについて】
ガストン・コラール。所有畑はグラン・クリュであるブジー村にすべて所有する、当店随一の人気シャンパーニュ生産者です。ブジーというグラン・クリュは、南向き斜面で昔から赤ワインが造れたというくらい、日照量が多く熱がこもり、力強いピノ・ノワールが生産されます。それはダイレクトにシャンパーニュのスタイルにも表れていて、ブジーのピノ・ノワールを使ったシャンパーニュは基本しっかりしている。いわゆるリッチなタイプが多いです。

こちらはそんなブジーのピノ・ノワールを90%使用して、残りもブジーのシャルドネを使用しています。ブジーの黒ブドウを贅沢に使っているのがとても魅力です。

ベースヴィンテージは暖かいヴィンテージである2020年なので、補糖する必要がないからこそドサージュ・ゼロの魅力が増すという面もあります。といいますのも、最近のドサージュ・ゼロというのは昔とは意味あいが変わってきていると思っておりまして、昔は酸味が強いからドサージュでバランスをとる必要があったんですが、最近は暖かい年が多く、酸味がほど良くなっているからこそドサージュ・ゼロでバランスを取れるという面があるかと思います。

【テイスティングコメント】
色合いはレモンイエローの爽やかな色合いです。香りは柑橘のニュアンスが強いですね。柑橘、フリント、引き締まったシャンパーニュにみられるさわやかなトーンがあります。レモンゼスト、グリーンアップルといったところです。シャンパーニュに特徴的なトーストの香りもありますが、さっと焼いた食パンぐらいの香りがします。ジンジャーブレッドのような甘さとトーストが絡まったような重い香りじゃなくて、ライトトーストの印象です。やや鉱物的な印象もあります。そしてほのかに感じる、みかんの缶詰のような香り。これがさらなる複雑さをもたらしています。爽やかで凛とした、清涼感のあるアロマです。

口に含むと期待を裏切らない。ビビットな明るい酸味をまず初めに感じます。この酸味が非常にタイトな印象を作り出しています。レーザービームのような酸。ただ温暖な2020年のブドウなので、酸っぱいという感じではないです。ビビットな酸が全体を引き締めることで生まれる抑制された雰囲気が感じられます。スリムボディと言っても良いです。中盤はきめ細かな泡も感じますし、ノンヴィンテージのドサージュゼロの教科書的な仕上がりだと思います。

このシャンパーニュは、私が従来思っているブリュット・ゼロとかドザージュ・ゼロとは違っていて、どこか親しみやすさがあります。おそらくこの親しみやすさはブドウの質に起因します。気温が上がって昔ほど酸味が強くないブドウを使っているということ、やはりグラン・クリュ、ブジー村らしいブドウの力強さが、魅力的な余韻のやわらかさを形成しています。逆に、この力強さを全面的にわざと出さないように、ドサージュ・ゼロで造っている面もあるかと思います。

【おすすめの楽しみ方】
ドサージュ・ゼロのシャンパーニュは、定番としては食前に楽しみますが、私のおすすめはもう一つ、食後に楽しむことです。食事が終わっておなかがいっぱいになって重たくなっているときに、キリっと爽やかなこちらのシャンパーニュを飲むと、食事が爽やかに終えられます。完全に食事が終わった後、もう一杯飲みたいなという時に、このドザージュ・ゼロを取ってみてはいかがでしょうか。その際は、ぜひしっかり冷やしてお楽しみください。

ドサージュ・ゼロは通常酸が高く感じられやすいので、温度は高いほうが良いこともあるんですが、こちらは暖かい年主体でブドウの力強さもあってバランスが取れているので、通常の温度、8-10度くらいでサーブするのが良いと思います。セラーから出してすぐとか。二人とかでゆっくり楽しむなら、冷蔵庫を出し入れして飲むのが理想です。グラスも中ぶり、あるいはチューリップ型の典型的なシャンパーニュグラスでいいと思います。トースト感が控え目というのが特徴かもしれないですね。15ー24カ月のシャンパーニュ的には浅い瓶内熟成なので、ライトに爽やかに飲みたいなっていう時にまさにお勧めで、決して重くならない。前菜、アフターミールにピッタリなシャンパンだと思います。