

Because, I’m
ホットドッグリーダー 後編
ホットドッグと聞いて連想できるスタイルのすべてはどんな形でも正解!
著書『ホットドッグの発想と組み立て』の中で、本場アメリカのホットドッグに加えオリジナルドッグのレシピも紹介している恩海さん。後編ではホットドッグの作り方のポイントを押さえつつ家庭で楽しめるレシピをいくつか伝授していただく。といっても、ソーセージを一から手作りするような本格的なレシピではない。ホットドッグはストリートフードでありファストフードでもある。そんな肩ひじ張らない自由な精神にのっとって考えると、シンプルにバンズとソーセージだけでも、立派なホットドッグになるはずである。しかも自宅で作るのだから、身近で手に入る食材を使って、おいしい自分だけのホットドッグ作りに挑戦してみよう。
Q. 自宅でホットドッグを作る際に、こうすると美味しくなるといったポイントがあれば教えてください。
ホットドッグはソーセージ、バンズ、トッピングの3つで構成されています。まず、このうちの何を中心に組み立てればいいかというと、家庭で作る場合はやはりソーセージですね。ソーセージに合わせて、バンズやトッピングを決めていくのが、やりやすいと思います。まずはざっくりと細挽きにするか、粗挽きにするかで考えてみましょう。細挽きは口当たりが滑らかで、白ソーセージなどがあります。粗挽きは肉の味わいがしっかりと残り、パリっとした食感も楽しめると思います。どちらを選ぶかによってバンズも変わってきますね。一般的には細挽きには、コッペパンのようなスタンダードなやわらかめのタイプ、粗挽きにはバケットのような硬めのタイプが合うと思います。
それぞれのレシピを紹介しますと、『ベーコンレタスチーズドッグ』は、滑らかな白ソーセージとシャキシャキのレタス、スモーキーなベーコンを組み合わせたもので、スタンダードなバンズで作ってみてください。テクスチャーの調和がとれた美味しさが味わえます。また粗挽きソーセージを使った『ハニーマスタード ホットドッグ』は、バゲットタイプのバンズがおすすめ。バターをしみこませてカリっと焼いたバンズと歯ごたえのある粗挽きソーセージの相性は抜群で、そこに甘じょっぱいハニーマスタードが加わって、まさにクセになる味わいです。

本場のホットドッグの研究のほかにも、シェフとしての経歴を活かし、数多くのオリジナルドッグの創作も手掛けている恩海さん
ベーコンレタスチーズドッグ
滑らかな白ソーセージにソフトなバンズを合わせた、ホットドッグの定番にしたいベーシックな1品。
材料(ホットドッグ1個分)
ホットドッグバンズ 1個
白ソーセージ 1本
ベーコン 1枚
レタス 2枚
チェダーチーズ(スライス) 2枚
オリーブオイル、黒こしょう 各適量
作り方
1. フライパンを中火にかけ、オリーブオイルを熱し、ソーセージを入れて全体に焼き色がつくまで焼く。
2. ソーセージを端に寄せ、ベーコンを入れて全体に焼き色がつくまで焼く。
3. バンズの側面に切り込みを入れて開き、チーズをのせる。
4. 天板に3のバンズをのせ、トースターでチーズが溶けるまで2,3分焼く。
5. 4のバンズにベーコン、レタス、ソーセージを順にのせ、こしょうをふる。
※レシピ:『ホットドックの発想と組み立て』(誠文堂新光社)より抜粋
ハニーバター マスタードドッグ
バターがジュワッとしみ出してくるバタートーストに粗挽きソーセージをのせた。ハニーマスタードの甘じょっぱさが加わってやみつきになる味!
材料(ホットドッグ1個分)
粗挽きソーセージ 1本
バター 25g
ハニーマスタード 15g
はちみつ 10g
オリーブオイル 適量
※ハニーマスタード(作りやすい分量:仕上がり45g)
マスタード 30g
はちみつ 10g
水 5ml
ボウルにすべての材料を入れて混ぜ合わせる。
作り方
1. バターは常温に戻す。バンズの側面に切り込みを入れて開く。
2. フライパンを中火にかけ、オリーブオイルを熱し、ソーセージを入れて全体に焼き色がつくまで焼く。
3. アルミホイルの上に1のバンズを開いた状態でのせ、トースターで2分30秒焼く。
4. 3を取り出し、バター(15g)を塗り、トースターに戻し1分30秒焼く。
5. 4を取り出し、残りのバターを塗り、2のソーセージをのせ、ハニーマスタードとはちみつをかける。
※レシピ:『ホットドックの発想と組み立て』(誠文堂新光社)より抜粋
あと、ソーセージに使われている肉は多くはポークかビーフ、またはそれらを合わせたものが多いですよね。ポークはソーセージの本場ドイツをはじめ多くの国でソーセージ作りに最も多く使われています。肉汁が多くジューシーな感じでパリッとした美味しさが出やすいと思います。一方のビーフはソーセージにした際にポークを使ったときのような滑らかな舌触りにはなかなかならないんです。しかし、逆をいえばビーフならではの力強さが前面に出ますから、パンチのあるソーセージになります。
それから、トッピングがボリューミーかどうかで、バンズも変えたいです。もしバンズにソーセージを挟んだだけのシンプルなホットドッグなら、やわらかめのバンズ、でもボリューミーになる場合、バンズは硬めなバゲットタイプの方がバランスがいいです。また、トッピングにじゃがいもなど炭水化物が多いものを使うと、バンズも炭水化物なので外した方がいいのでは?と思われるかもしれませんが、炭水化物×炭水化物の組み合わせは意外に合うんです。ポテサラパンとか焼きそばパンのノリに近い。むしろ積極的に取り入れたいです。
また、ホットドッグといえばビールのイメージじゃないですか。でも、ワインに合うホットドッグがあってもいいなと考えたときに浮かんだのがブルーチーズです。たとえば、ベーコンとビーフソーセージにブルーチーズを加えるだけで、ブルーチーズの強い塩気と甘みのある後味がアクセントとなり、まさに旨みの塊のようなホットドッグになりますよ。

ビーフソーセージとベーコン、ブルーチーズ(ロックフォール)を組み合わせたホットドッグ。ブルーチーズと生クリーム(2:1の割合)と合わせて小鍋で溶けるまで加熱したブルーチーズソースをかけるとさらに良し。ワインに合わせて楽しんで。
Q. 恩海さんのポップアップイベントなどで、人気のあるホットドッグがあれば教えてください。
パンケーキにベーコン、メープルシロップを組み合わせると美味しいですよね。ホットドッグに限らず、料理はしょっぱいものと甘いものをうまく組み合わせるのも一つのコツなんです。その方式で考えたのが『エルビスドッグ』です。ピーナッツバターとバナナのねっとりとした甘さ、そこにベーコンとソーセージの塩気がマッチして、たまらない美味しさです。ポップアップなどでは一番人気で、みなさん一口食べて「バナナとソーセージが合うとは意外」と驚かれます。こちらはぜひ一度、作っていただきたいです。
エルビスドッグ
かのエルビス・プレスリーがピーナッツバターと焼いたベーコンとバナナを挟んだサンドイッチが大好きだったというエピソードにヒントを得たホットドッグ。
材料(ホットドッグ1個分)
ホットドッグバンズ 1個
白ソーセージ 1本
ベーコン 2枚
バナナ(厚い斜め切り) 1本分
ピーナッツバター 30g
オリーブオイル 適量
作り方
1. フライパンを中火にかけ、オリーブオイルを熱し、ソーセージを入れ全体に焼き色がつくまで焼く。
2. ソーセージを端に寄せ、ベーコンを入れ全体に焼き色がつくまで焼く。
3. 小さめの鉄のフライパンを中火にかけ、オリーブオイルを入れて熱し、バナナを入れて片面に焼き色がつくまで約30秒焼く。火を止め裏返して余熱で中まで温める。
4. バンズの側面に切り込みを入れて開き、ピーナッツバターを塗る。ソーセージとベーコン、バナナをのせる。
※レシピ:『ホットドックの発想と組み立て』(誠文堂新光社)より抜粋
Q. 最後にホットドッグリーダーとして思うことはありますか?
ホットドッグはバンズにソーセージを挟みトッピングを施した実にシンプルな食べ物です。でも、その背景にはアメリカ移民の人たちや多くの人たちの食文化があり、地域や人の好みによってアレンジされながら、自由に進化してきた歴史があります。ホットドッグの魅力ってそんな多様性にあると思うんです。だから、ホットドッグをイメージしたときに人によっていろいろなイメージが浮かぶと思うのですが、そのどれもが正解だと思うんです。こんな自由度が高い食べ物は他にないのではないでしょうか。僕がホットドッグに望むことがあるとすれば、これからもやはり、ストリートフードとして発展してほしいので、身近な公園や人々の集まる場所に行けば、必ずホットドッグスタンドがある、そんな風に日本もなれば最高だなと思っています。
(後編 了)

著書『ホットドッグの発想と組み立て』(誠文堂新光社)
イラスト 恩海洋平
撮影 sono
原稿 網野由美子