Because, I’m
厨二星人 後編
浮世離れっていいと思います。
「日本厨二化計画」「厨二革命」「厨二サバイバーの逆襲」。これはすべて、アーティストHIDEYUKI KATSUMATA氏が開催したり、計画していた展覧会のタイトルです。
“厨二”は中二のネット語ですが、今、強く中二病をポジティブに捉えるそのココロはいかに?
もともとは音オタクと聞きつけての取材スタートから、一転。後編は、KATSUMATA氏とともに流れ着いた“厨二”のお話です。
Q. 厨二(中二)のままいられることを幸せだ、とおしゃっていましたが、それに気づいたきっかけは何だったのでしょう?
そもそも、アートは脳で納得するものではなくて、見てなんだか泣いてしまうとか、ココロが動くとか、そういうもののはず。新鮮で、感動するものであればいい。でも、今の美術界には理由をつけたり、アンチテーゼを唱えたりと違うアプローチも多く存在します。アートが錬金術になってしまっているところがあるんですよね。
自分の展覧会のことを考えていた時に、そんなアート業界とか、今の政治とか社会とか、さまざまなシステムに違和感を感じていたんです。僕はそういうシステムはよく分からないし、やっぱり、ピカソとかゴーギャンとか、浮世絵とかが好き。で、自分はどういうアプローチにしようかと思った時に厨二のキーワードに行き着いて、がぜんやる気が出てきました。
Q. 厨二という言葉に行き着いて、作品にも変化があったんですか?
ありました、ありました。僕の春画にリーゼントやヤンキーが登場するようになった(笑)。
北斎って90歳くらいで死ぬんですけど、“あと5年生きられたらもうちょっと人並みの良い絵が描けた、あと10年生きられたら本当の画家になれた”なんて言っていたらしいですよ。名言ですよね。90歳で何を言っているんだか。偉人も厨二なわけです。
生きている人で言えば、みうらじゅん大先生は厨二のヒーローですよ。あの人は本当にこじらせちゃっている。でも、世間との付き合い方もうまくて、ひょうひょうとそのままの自分でいる。僕はただの厨二で、まだあんな風にはうまくできないなあ。
よく、中二病は悪のように捉えられているけど、“何が悪いの”って肯定して、浮世から離れてそのまま存在していることが結果的に社会を動かす原動力にもなると思うんです。今こそ必要な存在というか。
Q. ちなみに、女性有名人だと誰がそのグループに入りますか?
清水ミチコさんとか、ナンシー関さんかな。女の子は割に早い段階で大人びるから、実際に中二の頃には大人になっていることも多い。ハイハイ、男子がアホなことやって…って冷ややかな目で見ているような気もしますね。
理想でも、怒りでも、それぞれの人が秘めている先天的な思いが中二病的な部分だと思います。ある意味、浮世である現世から離れて、普段我慢していることを出すことが、ブレークスルーになることってあるんじゃないかな。中二病って“病”という言葉がついちゃっているけど、ちょっと言い方を変えたらいい。そうだ、厨二星人というのはどうかな。世の中全員が厨二星人というわけにもいかないだろうけど、ま、そこは多様性の時代に似合う役割分担でいけばいい(笑)。
フランスのフレグランスブランド、MAD et LENのプロモーション動画を制作。
それで、お酒を飲んだ時なんかは、いつもは違う星で生きている人も厨二星人になることで新しい動きを作り出してみるとか。普段は大人な人だって、お酒を飲んだ時に中二の部分が呼び起こされて、ロマンチックになったり怒りを叫んだりする人も多いですよね。そういうスイッチが入ることって悪いことじゃないと思うんです。
(後半 了)
写真 河内露
インタビュー・校正 土本真紀(µ.)