Because, I'm Because, I’m<br>「かわいい❤️」イラストレーター 前編
Interview 08 / たけいみきさん

Because, I’m
「かわいい❤️」イラストレーター 前編

知れば知るほど、「かわいい❤️」は最強

「かわいい」を探してわかったこと

レースやリボンのドレスを着たウサギや猫、お星様をまとった巻き毛のペガサス、キラキラのティアラや鏡、ハートやお花でデコった宝物箱、背景にはバラやパンジー、水玉模様……。ピンクやパープルのパステルトーンで、これでもかというぐらいファンシーでキラキラ。それがイラストレーター・たけいみきさんの世界。たけいさんの言うところの、「かわいい」を身に着けると、幸せがやってくる!?

Q. たけいさんのかわいい好きはいつ頃から?

私、子ども時代から、自分の容姿にコンプレックスがあり、自分をかわいいと思ったことがなかったんです。小学生のとき、クラスにすごくモテる、かわいい女の子がいたんです。A子ちゃんといって、男子全員、A子ちゃんを好きになってしまう。私はまったくの対象外。ならば逆に、「カッコよくなってやる!」と。ジーンズ履いて、男の子みたいな格好して、スポーツタイプの自転車に乗って、筋トレしたり。その頃から好きだったイラストもカッコいいものをずっと描いていました。
10年くらい前、イラストレーターを本気で目指し、もやもやと、自分らしい表現を探しているうちにふと気づいたんです。私の根底には、リボンやハートや水玉みたいな、女の子に共通するものへの憧れがある。キラキラ、フワフワした、そういうものを描きたいと。それで、手作りでイラスト入りのポストカードを販売し始めて初めて、本当に好きなものを描きました。その「人魚姫」のポストカードを売場に置いてみたら、なんといちばん売れたんです。

左)人魚姫はたけいさんにとって特別なお姫様。右)ティアラにレースのドレスは、お姫様を連想させる憧れスタイル。

どこかはかなげで、清濁あわせ呑むものの美しさ。それを人魚姫で表現したかったのかな。明るい絵ではなかったけれど、それが良いという人もいたりして。白雪姫やシンデレラとか、さらにいろいろなお姫様をシリーズ化してカレンダーを作りました。私にとってのお姫様というものを描いてみたいと思ったんですね。お姫様といえば、どこか別世界の主人公。私にはまったく関係ないスペシャルな存在として憧れもありました。小さい頃からディズニー映画を観ていたから、冒険に巻き込まれながらも、最後は幸せになるヒロインみたいなイメージです。

「お姫様」を描いたことが、自分らしい生き方の転機にもなった。

そんな私に、あるとき、「お姫様をテーマに本を書いてみませんか」と、ある編集者さんが声をかけてくださったんです。タイトルは既に決まっていて、『お姫様になれる本』だと聞いた瞬間、絶対に書けないと()。「お姫様になりたいと思ったこともない」と正直にお話したんです。結局、受けることになったものの、3年くらい書けなかった。その制作プロセスの中で私はやっぱり自分のコンプレックスと向きあうことになっちゃって……

たけいさんプロデュースのノートやスケジュール帳は、すべての年代の女性たちに人気。

Q. そこから「かわいい」というキーワードが出てきたのですか。

誰もが思い浮かべるお姫様は、憧れのかわいい存在。かわいいって何だろうと考えたんです。そこで男女、年齢も問わずいろんな人に、「あなたにとって『かわいい』とは何ですか?」と聞くことから始めたんです。
すると、ひとつヒントになったのは、漢字で書くと「可愛い」だから、愛することが可能だと思えるものじゃないかという意見。かわいいって瞬間的に湧きあがる感情だし、感じることでとても幸せな気分になれる。かわいいって見た目だけに反応しているわけじゃないんじゃないかなと思い始めて。そこで男性に、何に対して「かわいい」と感じるか聞いていくと、多くの人が「女性」と答えたんです。つまり、女性であることだけで、既に「かわいい」と感じるというのです。「え、本当?」と思いました。そのときは、女性ってすごいな、もっと誇りをもっていいんだと思えました。

『お姫様になれる本』を書くことは、自分と向き合う旅だったというたけいさん。

小学校時代の同級生、A子ちゃんに再会したときにも聞いてみたんです。
「あなたにとって『かわいい』とは何?」。すると、約30年間、知らなかったことを教えてくれました。彼女は小学生の頃から、「私は自分のことを世界でいちばんかわいいと思っていた」と言うのです。いつも両親から「かわいいね」と言われて続けて育ったそうで、ある日、鏡を見たら、「本当だ、私ってなんてかわいいんだろう!」と怖くなったほどだと。ちなみにA子ちゃんは、正直言ってそこまでではないんですが。以来、男の子と目が合ったとか、お店の人が優しくしてくれたとか、周りの好意的な反応はすべて「私がかわいいからだ」と解釈したと聞いて、さすがに爆笑しちゃいました。
でも、そこで発見したのは、自分の現実をつくるのは自分の考え方なのだということ。そして思考した通りのことが現実になっていくのかもしれないと。つまり、自分が自分自身をどう扱うかによって、周りの世界も変わっていくのですね。
かわいくなりたいと無理なダイエットしたり、悩んだりしている人がいるけれど、私もそうだったけれど、自分はかわいくないと思っていても、親、恋人、友人まわりの誰かにとって、絶対にかわいい存在。だから自信を持つべきなんです。

リボンはたけいさんの大好きなモチーフの一つ。

子どもたちに楽しい学校生活を送ってほしいという思いでデザインしたランドセル。

Q. たけいさんにとって「かわいい」を見つけるコツはありますか?

私のおすすめは、日常の中の「かわいい」を写真に撮ること。街を歩くときも、ただ視界に入っているだけでは「風景」としてとらえていたものを、「素敵なものを探す」という意識で向かい合うだけで別世界になります。
手芸屋さんにある光るビーズや色とりどりのリボン。きれいに並べられたたくさんのマニュキュアやリップ。大好きなカフェの照明やインテリア、スイーツショップに並んだたくさんのキャンディーの色。ショーウィンドウ越しの素敵なインクの陳列棚。お気に入りブランドの新作スカートの模様。見つけた瞬間、シャッターを切らずにはいられません。
自然の中にも数えきれない「かわいい」が潜んでいます。たとえば、満開のときを迎えた桜。野原にひっそりと咲く一輪の花。美しい海岸に落ちている珊瑚のかけら。見たこともない昆虫の透明な羽根。鈴なりになったさくらんぼやトマト。鳥のさえずりと木々の木漏れ日。鹿の親子とか、キツネやたぬきの後ろ姿など、自然界に存在するものの愛らしさには心を動かされますね。
それまで気づかなかったものを「かわいい」と感じるようになることは、人生が変わるほど素敵なことなのです。

(前篇 了)

写真 sono
インタビュー 歌代幸子
編集 徳間書店

たけいみきさん

1983年山梨県生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒。デザイン会社に勤務しながら、日本メンタルヘルス協会にて心理カウンセリングを学ぶ。独立後、書籍、文具、アプリ、食品パッケージ、ネイルシールなどのイラストやデザインを手がけ、数々の「かわいい❤️」作品を生み出している。著書に『お姫様になれる本』(サンマーク出版)『“かわいい”の魔法にかかる夢色ハピネス塗り絵(大人の塗り絵)』(河出書房新社)などがある。

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