Because, I'm Because, I’m<br>革新的な五代目社長 後編
Interview 30 / 島田正孝さん

Because, I’m
革新的な五代目社長 後編

知れば知るほど押したくなる! エレベーターボタン

前編はこちら

ボタンを押して、皆のやる気スイッチをオン!

オーダーメイド品のエレベーター用意匠器具の製造において、島田電機製作所の国内シェアは約7割になるという。まさにニッチトップ企業といえる。数々の高層ビルや商業施設に起用されてきた理由は、製品のデザイン性や品質クオリティの高さにある。後編では、ニッチトップ企業として磨き上げてきた技術力と、モノづくりへのまっすぐな姿勢、またそんな真摯なイメージとは打って変わるユニークで自由な社風も紹介しよう。

Q. どの製品も表面が滑らかでとても触り心地がいいです。これがオーダーメイドならではのクオリティなのですね。材料は何なのでしょう?

材料は主にアクリル樹脂と金属ですね。アクリルについては、薄いものの加工はいろいろな業界でもされていますが、当社の強みは厚みのあるアクリルもいろいろな立体形状に美しく加工できることです。成形や型取りではなく、プログラムを組んで切削するため、様々な形状を作ることができます。当社では厚さ13㎝のものまで常備しています。この厚さのアクリル板があるのは、水族館か島田電機製作所と言われるんですよ(笑)。

材料のアクリル板。13㎝の厚さのものまである。

3cmの材料を加工して製作した到着灯。アクリル板を球体にカットし、透明の部分とフロスト加工した乳白の部分を組み合わせることで、光を美しく拡散させている。

色については、特色も含め様々な色を出すことが可能です。また、違う材質のものをアクリルの中に埋め込んだり、泡を閉じ込めるようなこともしています。
エレベーターボタンには数字やモチーフが入りますが、これはプリントするのが一番簡単ですが、これだと触っていくうちに剥がれてきます。当社では、細い刃物で文字を彫り込んで、そこに色入れをし、バフ研磨で表面を平らに仕上げています。
仕上げの美しさにはとことんこだわり、透明と乳白など異なるアクリル同士を接着した際も、接着面がどこかわからないと思います。

アクリルを数字やモチーフの形にくり抜き、そこに色付の素材を流し込むという細かい作業で作られるエレベーターボタン

バフと呼ばれる研磨機で表面を滑らかにする。微妙な力加減、角度の調整など熟練の技術が要求される作業だ。

Q. 金属についてはどんな特出した技術がありますか?

エレベーターの中には点字表示がありますよね。あの部分はどうしていると思いますか?
普通は点字の頭の丸い部分を貼りつけていると思われるんです。そうではなく、実は細いピン状の点字を金属板から切削して作り、それを手作業で土台に
11本打ち込んでいるんです。

エレベーターって手で触れる部分が多いんです。ですので、金属の器具の角の処理にはとても気を使っています。
金属は、内側に細い溝を掘ってから曲げることできれいな角を出し、研磨して丸めています。機械的に曲げて作った角の場合、いくら研磨してもきれいに仕上がりません。
高性能のマシンを使いつつも、手作業の手間を惜しまないことが当社のものづくりのスタイルといえます。

点字は細いピンを土台に1本ずつ打ち付ける非常に細やかな手作業だ。

エレベーターボタンに沿えられた点字

厚い金属版も、コンピューター制御の高速マシンであっという間にカットされる。

繊細な力加減を要する手作業も多い。

技術はどんどん進化していきます。でも僕は技術を支えているのは、人の力、つまり心だと思っています。オーダーメイドのモノづくりは、お客様の要望に応えようとする努力や姿勢がなければよい製品は作れません。

会社の事業というのは言い換えれば企業のファン作りだと思います。お取引先も含めて周囲のすべてをファンにしていくことが発展につながるのです。それにはまず社員に会社を好きになってもらうことが大切です。

2013年に僕は社長に就任し、「会社をどうして行きたいか」を深く考えました。部品の工場というと、ひたすら黙々と部品を作るイメージがあるじゃないですか。まさに仕事=我慢とお金でしかありません。それでは社員のモチベーションも上がらない。もっと現代の価値観に合う職場にしなければと目指したのが、社員が皆で協力し、自分らしくイキイキと働ける職場。それから徐々に一つひとつ、様々な取り組みをしてきました。

島田電機製作所のオフィス。いわゆる製造業の工場というイメージとは違い、お洒落で明るく、開放的な空間が広がっている。

Q. その一環ですか?社員が出社した時に押すのは、タイムカードではなく……

「やる気ボタン」なんです()。僕も含めて社員は出社するとまず、やる気ボタンのスイッチを押します。
また、「会社にプライベートを持ち込もう」をテーマに、「遊び場」というフリースペースもつくりました。ヨガをやったり、ビリヤードをしたり……自由にすごせるようにしています。休日も開放しているので、家族を連れて会社に遊びに来る社員もいるほどです。

オフィス入口にある「やる気ボタン」

一つひとつのボタンには社員のイラストとやる気フレーズも。

「ボタンちゃん」というマスコットキャラクターがいるのですが、その名を冠した、「ボタンちゃんBar」は、社員が終業後に気軽に利用できるスペース。お酒も無料で飲めますし、社員同士のコミュニケーションの場として、積極的に活用してもらっています。

マスコットキャラクターの「ボタンちゃん」と一緒に。

社員の交流の場「ボタンちゃんBar」はお酒も無料という羨ましい環境

地域との交流も盛んで、たとえば、地元の美容系専門学校の生徒さんを招いて、エステやマッサージの施術やメイク講座をしていただいたり、地元の農家さんとコラボして、冬はスープ、夏はアイスを作っていただき、それを社員にふるまったり。

昨年にはカンパニーソングも製作しました。『ボタンを押せば』という楽曲で、自社レーベルを立上げ、レコーディングも自社内で行い、社員全員がコーラスや手拍子で参加したんです。この曲で世界中のがんばる皆様のやる気ボタンを押しまくろうと。

当社の取り組みは、YoutubeInstagramTwitterなどのSNSで、社外にも積極的にアピールしています。マスコミの方はじめ周囲の方々にも、当社に興味を持っていただき、もっともっとファンを増やしていきたいと思っています。

エレベーターボタンのキーホルダーのガチャは、工場見学の人気商品

(後編 了)

ネットショップでは、本物のエレベーターと同じ材料を使ったキーホルダーも販売。新作は、乳白色のプレートに推しの写真を貼ったり、手書き文字や絵を書いて自由にアレンジできる、押しボタンならぬ「推しボタンキーホルダー」
https://shimax.thebase.in/

撮影 sono
編集 徳間書店

島田正孝さん

島田正孝(しまだ・まさたか)さん
1969年生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、1990年に内原電機製作所に入社。3年間、出向先の日立工場などで経験を積んだ後、1993年に24歳で株式会社島田電機製作所に入社する。工場長や専務を経て、2008年に中国・上海に設立した現地法人の代表取締役に就任。2013年に5代目の代表取締役社長に就任、現在に至る。

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