Because, I’m
迷惑メール評論家 後編
桜庭のように、魅せて勝つ。
インターネット時代。毎日送りつけられる迷惑メールに辟易している人も多いだろう。そんな迷惑メールとのやりとりを取材し、ネット記事に仕立て上げて好評なのがロケットニュース24編集長で、迷惑メール評論家のGO羽鳥さんだ。迷惑メールの取材は〈格闘技〉という羽鳥さん。しかし格闘技なら攻撃を受けることもあるだろう。どう防御しているのか。そして思い出に残るベストバウトは? 時代とともに移り変わる迷惑メールとの戦いの末に、孤高のファイターがたどり着いた境地とは。
Q. 迷惑メールに対しての〈防御法〉はありますか?
怪しげなサービスに誘導する迷惑メールに、あえてクレジットカード情報を入力することもあるのですが、そういう場合、認証は通るけど一定以上のお金は引き出せない特別なクレジットカードを使っています。するとしばらく経ってから、「請求されたけど引き落せませんでした」というメールが来るので、「しめしめバカめ!と」思いますよね(笑)。
空の財布を見せて盗ませてやったみたいな気持ちよさ。向こうはメチャクチャ頭来てると思いますけよ。実際かなりの数の請求が来ますから、普通のクレジットカードを使っていたら相当被害があるだろうと思うと怖いですけど。
バトル用アカウントもありますよ。Facebookは先日一つ乗っ取られて潰れちゃいましたけど、メールアドレスは10個くらい持っています。住所も自宅ではなく事務所にしています。それくらい防御をちゃんとしていないと、エンタメにはできませんね。
もっと真相を知りたい方はコチラ⇒ https://rocketnews24.com/2020/08/14/1402388/
Q. では被害にはあっていない?
金額的なダメージはあまりないですが、精神的なダメージは相当ありますね。
最近の〈選手〉たちはキレやすいと言うか、短気なんです。辛抱がないというか、言葉のラリーもしてくれないし。やっと中の人が出てきてやり取りしても、こちらがちょっと核心に迫ったパンチを打ったりすると、向こうはバレたと思って急に「f***you!」とか厳しい一言を僕に浴びせ、強引に終わらせるんです。あとは「死ねゴミクズ」とか。
なんでこの人達は、見ず知らずの人間にそんなひどい言葉をかけられるんだろうと泣きたくなります。こっちはただ〈拳の交流〉をしたいだけなのに、いきなりナイフでグサって刺されたみたいな感じです。
もっと真相を知りたい方はコチラ⇒ https://rocketnews24.com/2018/04/09/1042612/2/
ちょっとバレそうだと思ったら罵声浴びせて帰るみたいなやり方、詐欺師としてどうなんだろう思いますよね。昔はバレそうになっても誤魔化してきて、それも芸のうちでした。こっちもそれを期待しているところがあったのですが、最近は開き直って「じゃあ死ねよ」って、これじゃあ記事になりません。
Q. なぜ味のある迷惑メールが減ってしまったのでしょう?
若者が切れやすくなったんじゃないですかね。あと、向こうも焦りが出てきているのかも。最近は迷惑メールに騙される人って減っているので、悠長に相手をしている余裕が無いのかもしれません。明らかに日本人じゃないなという人も多いですし。やりとりの言葉で分かりますよね。
あと最近思うのは、迷惑メールの世界もターゲットが高齢化しているのではということ。古典的なアダルト系の迷惑メールは、いまもたくさん来ますが、近ごろは〈熟女系〉が多いんです。「私は70歳なんですけど……」って、えーー⁉これに反応する奴って?と驚きますけど、確かにコンビニのエロ本も熟女系が多いですからね。
一方で、ネットを始めたばかりの血気盛んな10代の若者たちも被害に遭っています。先日も友達の息子が興味本位でアダルトサイトにアクセスして、「写真撮られてお金を請求された!」と泣きついてきたので、リベンジしてやりました。実際は「カシャッ」というシャッター音がするだけで、写真なんて撮られるわけがないんですけど、中学生くらいだとメチャクチャ怖がっちゃって。そこで私も同じサイトにアクセスして騙されたふりをして、架空請求先に「写真撮ったんですか⁉ 本当ですか⁉」ってしつこく電話したら「撮ってねえよ! 金もいいからもう電話して来るな!」って(笑)。
もっと真相を知りたい方はコチラ ⇒ https://rocketnews24.com/2017/01/31/856152/
Q. 羽鳥さんにとっての〈ラスボス〉はいつか現れるんでしょうか?
ラスボス的な戦いはもうやっちゃったんですよ。昔LINE乗っ取りっていうのが流行っていて、たまたま知り合いが乗っ取られてくれたので、それを相手に戦ったのですが、それはもう自分の中でベストバウトって言えるぐらいの戦いができて、記事も天井を突き抜けるくらい反響があったので、変な話ですが「これがピークかな」っていう気持ちが自分の中ではありますね。燃え尽きたわけではないけれど、一番良い戦いを東京ドームでできたみたいな。格闘技に例えれば、対ホイス・グレイシー戦を終えた桜庭和志のような心境です。
もっと真相を知りたい方はコチラ⇒ https://rocketnews24.com/2014/09/18/488323/
Q. 今後はどんな戦いを繰り広げたいですか?
実は去年から海外編を考えていまして。
ヤフオクにパソコンとかスマホとか一眼レフカメラを出品すると、必ずといっていいほど英語で「それ売って下さい」とメッセージが来る。実はこれは詐欺で、商品を送ってもお金は振り込まれません。そして相手は基本的に外国人です。というのも、古い話ですが、iPhone 6 Plusが発売された時に、そのモックを〈これはモックです。日本人は騙されないで下さい〉と書いて出品したら、案の定「この商品良いですね。15万円で売って下さい」と英語で来ましたから。日本語が読めないんです。
それで送り先を調べたら、インドネシアの特定の場所だということを突き止めました。そこに乗り込んで、モックを渡して「はい、15万円下さい」ってやろうかと。さすがにそれをやったら怒って刺されるかもしれないので、綿密に計画を練らないといけないなとか考えているうちに、コロナになっちゃって実現できてないんですけどね。
ピークは過ぎたといっても、格闘家としてはまだ諦めきれていないところがあって、まだまだ良い戦いはお見せできるつもりです。
ただ昔と同じことをやっても絶対面白い戦いにはならないので、新しいリングと言うか、新しい相手というか、例えば今だったら盛り上がっているYouTubeとか、常に新しい敵なり戦いの場を求めているところです。
ただし、10年以上やって来て、ある程度経験も積んでいるので、 並大抵の迷惑メールじゃ興奮できない。もっと強いやつ出てこいや! って感じですね。
(了)
写真 sono
インタビュー いからしひろき
編集 徳間書店