Because, I'm Because, I’m<br>ファッション・スタイリスト 後編
Interview 15 / 地曳いく子さん

Because, I’m
ファッション・スタイリスト 後編

知れば知るほど、服は恋人選びに似ている。

服もワインも「ジャケ買い」します!

家の中で過ごす時間が増えたことで、身のまわり、生活まわりのことに関心が向いてきたといえるこの頃、日々の生活やおしゃれに対する向き合い方が変わったという地曳さん。どんなことに時間やお金をかけるのか、自分にとっての「ニューノーマル」が見えてきたという。家の中でも気分が上がるファッションやおうち時間の楽しみ方などを伺った。

Q. おうち時間における、ファッションの楽しみ方ってありますか?

私は部屋着にお金をかけるようになりました。部屋着姿で鏡に向かったとき「わぁ、すごいブス!」ってハッとしちゃうことってないですか。部屋着にも気分が上がるものと下がるものがあるんですよ。私は、家の中でこそ、カシミアのセーターを着ようと思って、ユニクロで購入したトレーナーのようなデザインのカシミアを着ています。家でも簡単に洗えるし、着ていて心地良いし、気分が上がります。

思い切って「自分に合わないもの」をリセットすると、その先に新しい自分が見えてくる。

毎日、パジャマも着替えます。夏用と冬用も入れ替えるので、それぞれ8セットくらい持っています。夜、洗いたてのパジャマを着て寝ると、その日の疲れやストレスを吸い取ってくれるから、朝起きると、私の代わりにパジャマが疲れている感じ()。一日24時間のうち8時間寝ているとしたら、人生の3分の1はパジャマを着ているわけでしょう。だから、お気に入りのパジャマを選ぶのは、最高の贅沢といえるのでは。
コロナ前は外出が多かったので、コートやワンピースにお金をかけていたけれど、今は使うところも変わりました。

在宅ワークでも、家の中だと思ってメイクをせず、ブラさえせず、着替えもしない。そんなだらけた格好を続けていると作業能率が落ちるし、何よりブスになります。
家で仕事するときもメイクをすると、「よし、やるぞ!」とスイッチが入るものです。気持ちが下がっているなと感じたら、手っ取り早いのはネイルを塗ることです。手はいつでも見えるパーツだから、自分を立ち上がらせてくれるきっかけになる。ちょっとリッチなネイルオイルやハンドクリーム、グロス系のリップとか、プチ贅沢アイテムは、「おしゃれスイッチ」を入れてくれる効果てきめんです。

ポール&ジョーとフォーミーのリップは、地曳さんがこの日、バックに入れていたお気に入りのアイテム

家で過ごす時間が増えたので、最近は窓辺やベランダで植物の世話を楽しんでいます。多肉植物なんてどんどん増えるので、まるで温室みたいになっちゃって(笑)。自粛中は本を読んだり、ガーデニングをしたりの日々ですが、気分を晴らしたいときはNetflixで映画を観ます。トム・フォードが監督した『シングルマン』はおしゃれ空気感満載の映画。『クレイジー・リッチ』、『AJ&クイーン』、あとは『愛の不時着』など韓国ドラマにもハマりました。

私は隅田川沿いのマンションで暮らしているので、窓を開けると自然の風が心地いいのです。晴れた日はベランダで過ごし、ワインを楽しむのが至福のときです。

以前は夏でも冬でもビールが大好きだったけれど、いまは休日の昼のみワインが生活の中のお楽しみに。

ワインは若い頃から好きで、バブル時代は仕事で良いものを飲む機会が多く、そのときにフランスの産地や銘醸ワインの名前などいろいろ覚えました。けれど、その知識があまり役に立たない時代になり、日本でも世界各国の個性的なワインを買えるようになった。昔はブランドものに頼っていれば良かったけれど、今はかなり多様化しているのでそんなわけにはいかなくなった。ではどうやって選んだらいいかなと思ったときに「ジャケ買い」があったんです。つまり見た目重視!直感で選ぶ。服もワインも同じです。

ワインの場合はエチケットのセンスと中身がリンクしていることが多いので、これは可愛いとか素敵だなとピンときたものを選ぶと、自分の好みに合うワインが見つかるんです。昔はやっぱり高いワインが良いという考え方もあったけれど、いまは手頃な価格帯に美味しいワインが増えている。だから、服も、ワインも、恋人も、出会った時のインスピレーションが大切! ブランドじゃなくて「ジャケ買い」です。

「ワインも、洋服も、自分の直感とセンスで選べばいいのです」と地曳さん。

Q. 大切なのは自分が好きか、嫌いか。シンプルで良いんですね。

自分が楽しく心地良くいられるのが、いちばんのおしゃれじゃないかと思います。人は歳を重ねていくほど、よりいっそう個性が出てきますよね。
いまはもう何歳だから、何を着なければいけないとか、何を持っているべきという時代ではありません。周りから「もういい歳なんだから」とか「もっと明るい色を着た方がいいわよ」なんていわれても、その人が責任を持ってくれるわけじゃない。だったら、自分が心地良いものを選べばいいんです。私もいまは黒や紺が多いけれど、もっと白髪になったらいきなりピンクを着たくなるかもしれない。その人なりにおしゃれを楽しめばいいんじゃないかと思うんです。

ひと昔前はトレンドが一つか二つ、料理に例えればフレンチや和食のコースがあるだけでした。それがいまはいろんなトレンドが並ぶ、ビュッフェスタイルになりました。若い頃はまだどれが好きかわからないし、いろいろ取り入れることで発見があるかもしれません。でも、この歳になれば、どれが好きで、どれが苦手かわかってくるのでビュッフェでもバランスよく取ろうと思わなくていい。日本人はとかく全部一つずつ取ろうとするけれど、好きならローストビーフだけでもいいくらい。とにかく好きなものだけ取ればいいんです。

私もそれは50歳を過ぎたくらいから見えてきたこと。50歳ってまだ人生の折り返し地点じゃないですか。だったら、そんなにきっちりやらなくてもいいかなと思う。おしゃれも人生も10割を求めるのではなく、7割、8割でいい。そう思うと、本当にやりたいことやいまやるべきことが見えてきます。

(了)

写真 sono
インタビュー 歌代幸子
編集 徳間書店

地曳いく子さん

じびき・いくこさん
1959年東京都生まれ。「non-no」をはじめ、「MORE」「SPUR」「Marisol」「eclat」「Oggi」「FRaU 」「クロワッサン」などのファッション誌でスタイリストとして30年以上のキャリアを積む。近年ではファッションアイテムのプロデュース、テレビやトークショーなどでも活躍する。著書に『50歳、おしゃれ元年』『服を買うなら、捨てなさい』『ババア上等!余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo!&Don’t』(槇村さとるさんとの共著)『若見えの呪い』など多数。

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