Because, I'm Because, I’m<br>革新的な五代目社長 前編
Interview 30 / 島田正孝さん

Because, I’m
革新的な五代目社長 前編

知れば知るほど押したくなる! エレベーターボタン

オーダーメイド専門メーカーならではのクオリティ

東京は八王子に、エレベーターボタンで話題になった企業がある。会社名は、島田電機製作所。1933年創業のエレベーター用意匠機器を専門に作っている老舗メーカーだ。一般の人が参加できる「工場のぞきみ見学会」では、製造工程の見学に加えて、壁一面の「1000のボタン」が押し放題。参加者は大人も子供も「30秒間早押しチャレンジ」というボタン押しゲームに真剣に挑戦しているという。TVのバラエティ番組などでも紹介され、日本一予約がとれない工場見学としても有名になった。広々としたショールームでは噂の「1000のボタン」が色とりどりの美しい光を放っている。なにやらユニークな会社とお見受けしたが、五代目社長・島田正孝さんにお話を伺った。

Q. こちらは全部エレベーターボタンですか。すごくきれいですね。

ほとんどは当社が実際に納品をした製品ですが、このうち約400個は新型コロナで工場見学を中止していた時期に、一般の方々からアイデアを公募して製作した面白ボタンなんです。現在は工場見学を再開し、3カ月ごとに抽選予約ができるシステムにしています。最近の申込状況は、15組の枠に対し800件を超える応募があり、当選確率は1%となっています。

コースは、「モノづくり見学コース」と「ボタン押しまくりコース」があって、後者はお子様に大人気です。そもそも、なぜこのような企画を始めたかというと、「子供がエレベーターボタンが大好きで、思いっきり押させてあげたい」といった、お母さんからの声が複数寄せられたからなんです。いまでは一般の方々とコミュニケーションができる貴重な機会になっていますね。

エレベーターボタンが大好きな子供たちのために製作した「1000のボタン」と島田社長

Q. エレベーター用意匠器具といいますと、具体的にはどのようなものになるのでしょうか。

当社で製造しているのは主に「エレベーターボタン」、エレベーターの到着を知らせる「到着灯」、階数を表示する「階床表示灯」です。発光させるものが得意なんですね。

一口にエレベーターといっても業界的には2種類ありまして、ひとつは「規格品」で、エレベーターのカタログに掲載されるいわゆる量産品で、一般的なビル・マンションなどに多く設置されています。もうひとつは、「オーダーメイド品」で、ホテルやランドマークになるような商業施設、高層ビルなどに多いんです。国内での比率は、規格品が全体の3/4、オーダーメイド品は1/4程度。当社はオーダーメイド品の意匠器具が専門です。専門というのは日本、いえ世界でも唯一当社だけだと思います。そもそも需要が少ない上に、オーダーメイドならではの特殊なデザインばかりなので、商売としてのウマみも少なく参入しにくい、まさにニッチビジネスといえます。

「ボタン押しまくりコース」の「30秒間早押しチャレンジ」は子供たちに大人気。

現在の記録保持者は同社企画部の小倉心愛さん。両手で同時に4個を押し進む荒ワザで316個達成。

よく知られている建物では、日本初の高層ビルである「霞が関ビルディング」や、「東京都庁舎」、「東京スカイツリー」、「六本木ヒルズ」、「あべのハルカス」など、多くの高層ビルのエレベーターに当社の製品が使われています。
こういったビルはコンセプトに基づき、建物はもちろんエレベーターも設計・デザインされるため、製作には難易度の高いものを求められることも多いです。でもその都度、それまでに積み上げてきたノウハウや技術力をいかして課題を解決し、ひたむきにお客様の要求に応えてきたからこそ、私たちも成長できたといえます。

2008年からは中国にも進出し、現地の経済成長のスピードに合わせた製造にも挑戦してきました。日本では年間2万台のエレベーターが作られているのですが、中国では年間60万台と30倍の市場規模なんです。超高層ビルの象徴、上海タワー(632m・127階)にも当社の製品が収められているんですよ。

日本では見かけることのない3桁のエレベーターボタンは中国の上海タワーのもの。

海外に出てみて気づいたのですが、エレベーターにもお国柄があるんですよね。
日本のエレベーターは「閉まる」ボタンから寿命がくるんですよ。日本人ってエレベーターは自動で閉まるのに、必ずこのボタンを押すでしょう()。海外では「閉まる」ボタンそのものがなかったりする。

最近では、時代を反映したエレベーターボタンが求められるようになりました。コロナ禍の影響で、非接触型のボタンや換気促進のボタンもあります。
ペットOKの商業施設も増えてきていますから、ペットが中にいることを知らせる「ペット」ボタンもあるんです。

押すと扇風機がまわるインドのエレベーターボタン

「-1」の表示は地下1階のこと。ヨーロッパに多い表示

コロナ禍で求められた非接触式ボタン

中にペットがいることを知らせる「ペット」ボタン

ひときわ目立つ「ポケモンボール」ボタン。株式会社ポケモンのオフィス用エレベーターで使用されている。

Q. 全部自社工場で作られているそうですが、工場は同じ社屋内にあるのでしょうか。

いまいるショールームとオフィスは2階で、1階の全フロアを工場にしています。
当社は創業時の世田谷から2013年に八王子に移転したのですが、それを機に工場のレイアウトを見直しました。世田谷の時はいかにも町工場的な環境でした。

‘80年代頃までは製品については安全に機能することが最優先でしたが、時代とともに機能+意匠性が問われるようになりました。そこで、クリエイティブな発想が生まれる工場でなくてはだめだと思ったのです。
生産体制についても、企画・開発・設計から、製造、組立、検査の工程を一貫して行う、無駄のないワンストップの生産体制にシフトしました。こうすることで、お客様からの要望に対して、クオリティはもちろんスピード感をもって応えられるからです。

生産ラインだけでなく、「部品の製造メーカーがなぜここまで?」と言われるほど、職場の環境づくりにおいて、革新的なことに取り組んできたんですよ。

「お客様の年収では押せません」ボタン

フタを開けてからボタンを押す「マヨネーズ」ボタン。どちらも一般公募で入賞した作品をもとに製作した。

(前編 了)

後編はこちら

ネットショップでは、本物のエレベーターと同じ材料を使ったキーホルダーも販売。新作は、乳白色のプレートに推しの写真を貼ったり、手書き文字や絵を書いて自由にアレンジできる、押しボタンならぬ「推しボタンキーホルダー」
https://shimax.thebase.in/

撮影 sono
編集 徳間書店

島田正孝さん

島田正孝(しまだ・まさたか)さん
1969年生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、1990年に内原電機製作所に入社。3年間、出向先の日立工場などで経験を積んだ後、1993年に24歳で株式会社島田電機製作所に入社する。工場長や専務を経て、2008年に中国・上海に設立した現地法人の代表取締役に就任。2013年に5代目の代表取締役社長に就任、現在に至る。

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