フィラディスワインニュース

ワイン業界に新たな息を吹きこむワインツール

 

もしあなたが若くて大柄な赤ワインが好みなら、とっておきの魔法の杖を紹介しましょう。

 

“Wine PrO2”

“Wine PrO2”は、ここ数年で最もシンプルで実用的なワイン向けツールの一つです。その仕組みは非常に単純なもので、特許審査官はそれが画期的なアイデアであることを理解出来なかったため、特許を取得するまでに約9年もの年月を要しました。

 

ワインを空気に触れさせても、その空気中には21%の酸素しか含まれていませんが、Wine PrO2は100%の酸素を一気に注入させることができます。

 

例えばシラーをグラスで飲んだ時、まだ固く、アロマも風味も弱いものだったとします。単に質の悪いワインだったのか、それともまだ閉じていてデキャンタージュが必要なのか?もし後者なら、大きなデキャンタ容器にワインを移し替え、少なくとも1時間は待つ必要があります。

 

しかし、デキャンタージュをする代わりにWine PrO2をグラスに忍ばせて0.5秒ほどボタンを押すと、たちまちワインが芳香を纏わせ、タンニンは柔らかくなり、そしてフレーバーもはっきりとしたものに変化しました。まるで2時間デキャンティングをしたかのような品質になっていたのです。

 

このWine PrO2を開発したのは、オハイオ州のクリーブランドでエンジニアをしているTom Belcher(54)という人物です。Belcherがこのアイデアを思い付いたのは、彼の親族からVinturiというエアレーターを紹介された時でした。Vinturiも他のエアレーター同様、ワインに空気を注入するアイテムです。

 

「当時大流行していたVinturiを妻が誕生日にプレゼントしてくれましたが、私には使用前後のワインの違いがよく分かりませんでした。そのツールが具体的に貢献している効果を定量化するために、もっとアプローチできることがあるのではと考えました。」とBelcherは話します。

 

デキャンタージュの科学

ワインの香りと味わいを向上させるのに重要なのは空気ではなく酸素です。抜栓前のワインの中では、自然発生した硫黄がメルカプタンという化合物を形成する場合があります。悪臭を放つタイプのメルカプタンもあれば、果実のアロマを覆い隠してしまうタイプのメルカプタンもあります。デキャンタージュとはいわばワインの「呼吸」ですが、正確には「おなら」と説明するのが適当です。メルカプタンは空気中の酸素と結合して外部へ放出されるのです。しかしながら空気中には僅か21%の酸素しか含まれていないため、このプロセスには非常に時間がかかります。プロのワインテイスティングでワインを数時間前に抜栓しておくのはそれが理由です。カベルネ・ソーヴィニョンのような若くて大柄な赤ワインや、バローロのようにタニックなワインに特に当てはまります。

 

「若いワインにはこうした好ましくない「ガス」の含有量が多くなりますが、酸素を注入することでそのガスを吹き飛ばし、ワインに果実味や他の良いキャラクターをもたらしてくれるのです」とBelcherは言います。

 

彼は溶存酸素計を用いてそのプロセスの測定をしました。ボトルに入ったワインにはわずか20-25%の溶存酸素しか含まれていないそうです。しかし、Vinturiを使用すると溶存酸素のレベルが一気に40%まで引き上がることを発見しました。しかし理想的なゴールはそのレベルを約80%まで引き上げることで、その数値は2,3時間デキャンタージュした値に相当します。

 

「では、より早く80%に到達するにはどうすべきか。私は純酸素を使用することを考えました。幾度かの実験を繰り返し、ノズルを使用することにしたのです。ノズルには非常に細かい穴が多数あり、そこから細かい泡を作り出します。」このプロセスはまさに、醸造家が行うマイクロ・オキシジェネーションと同様です。つまり、誰もが自宅で天才醸造コンサルタントのミシェル・ローランのようになれるのです!「商品は全て食品利用が可能なステンレス鋼で構成されています。ワインの表面に非常に細かい泡を作り出し、2,3時間のデキャンティングと同様の効果を1秒以内に得ることができます。」とBelcherは説明します。

 

Wine PrO2の構造は非常に単純なもので、ベースとなる装置に純酸素が入った缶を取り付けてボタンを押すだけです。初めてCoravinを使用した時は扱いに苦労しましたが、Wine PrO2の扱いは非常に容易なものです。

 

アルゴンガスによる酸化防止

もともとはワインのエアレーションのために設計されたものですが、彼はその技術をワインの保存用にも応用することにしました。保存用に利用する場合、ベースになる装置には純酸素はなくアルゴンガスが付属します。抜栓後のワインをリコルクする前に軽くアルゴンガスを注入するだけで、酸化を防ぐ効果が数日続きます。

 

是非、あなたもワインに酸素やアルゴンガスを注入してみてください。きっとその恩恵を受けられますから。

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/11/new-wine-gadget-a-breath-of-fresh-air

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