高温と乾燥した天候が、ボルドー南部の豊かな森を燃え盛る地獄に変えています。
7月中旬の時点で、大西洋に面する Arcachon 村と Graves 地方の Landiras 付近で発生した火災により、12,000人が自宅や現地のキャンプ場などからの避難を余儀なくされています。
Gironde 県からの発表によると、フランス全土から集まった約1,700人の消防士が連日炎と闘っているといいます。この記事をリリースした7月19日時点では、2つの火災は Gironde 県の約19,300haの森林を焼き尽くしています。地上と空からの大規模な消火活動にも関わらず、事態はまだ収束していません。
焼失したのは、La Teste-de-Buch 地区の6,500haと、Landiras 地区の12,800haの合計19,300haに及びます。この地域の避難は進行中で、「これらの火災による煙の存在と焦げた木の臭いは、ボルドー中心部だけでなく、Gironde県外でも感じられた」といいます。
多くの道路が閉鎖されたままであり、被害を受けた森林地帯は、丁度迎えた夏のハイシーズン中も一般に公開されていないとニュースは報じています。これには、大西洋に近い Arcachon の町はずれにある、地元のハイカー、バイカーにも長年愛されてきた、フランス最大級(26,000ha)の緑豊かな La Teste-de-Buch 原生地域も含まれています。
Gironde 地方のプレスリリースは、状況は危機的であり、強風のために状況が悪化していると指摘しています。さらに Landiras 地区での火災は意図的に起こされたものであると付け加えていますが、どのように発生したかについてはそれ以上詳しくは述べていません。La Teste-de-Buch での火災については、トラックによる出火が原因で今も続くこの悲劇が発生しており、2000年もの歴史を持つ森を引き裂いていると指摘しています。
この地で船による地域のツアーを行っている Des Hommes et des Mers 船長の Patrick Anderson は、燃えた木の多くが樹齢100年以上であることから、状況は非常に悲しいものだと語ります。
ワインへの影響?
Pauillac の Château Pédesclaux の総支配人である Vincent Bache-Gabrielsen は、火災からかなり離れた場所にいます。ボルドーのブドウ畑ではまだヴェレゾンが始まっていないので、この地域の数多くのワイン産地のブドウが収穫前に煙害を受けない事を願っていると話します。また、収穫量や品質、ワインの価格についても、収穫について現時点で語るのは時期尚早だと付け加えます。
「今のところブドウ畑に影響はなく、ブドウ木が燃えたケースもありません」
ボルドーワイン委員会(C.I.V.B)の広報担当者、Cécile Haはそう語ります。「風向きの関係で、火災の煙はブドウ畑から遠ざかっています。今のところ、煙の影響を心配する必要はありません」
スイスで醸造学を学び、ボルドー並びにカリフォルニア州 Rutherford でもコンサルタントをしている Jean Hoefliger は、ボルドーに近いブドウ畑には“まだ”煙の影響はないと考えます。また彼が言うには、この状況は「ブドウの木がいかに回復力があるか」を見るためのようなものだと言います。しかし、この秋の収穫は予定通りかもしれませんが、現在の気温を考えると、「植物は活動を止めて、身を守る状態に入る可能性がある」と付け加えます。植物が生育プロセスを再開するのを待つと収穫が遅れることになるので、7月時点ではこの火災が収穫にどのような影響を及ぼすかはまだわかりません。
またJeanは、カリフォルニアでは近年、フランスの大半の地域よりも多くの火災によるブドウ畑の被害が出ていると付け加えます。長い目で見れば、火災がこれ以上激しくならなければ、この地のブドウ畑にはあまり影響がないはずだと言います。
しかし、Langoiran の Château Biac のオーナーである Youmna Asseily は、ワイナリーの40km先には煙が見え、風がそれをあちこちに広げていると話し、彼女はこれを「1960年代のロンドンのスモッグの影響に相当し、呼吸が憚られるほどだ」と例えています。
彼女はさらにこう続けます。「多くの火事が同時に発生し、雨も降らないので、消防士が火事をコントロール出来ないかもしれない、と懸念しています。1940年代以来の生態学的災害です。今日は気温が15度ほど下がったので少し安心しましたが、大規模な雨が必要です」
ボルドー地方の観光に関しては、ワイナリーを訪れ、シーフードや美しい森、ビーチを楽しむ予定をしていた観光客の予定は全て白紙になってしまいました。この種の火災はフランスのこの地方ではほとんど発生せず、実際 Gironde 地方ではここ30年一度も火災が起きていなかったのです。通常、南西部ではなく、スペイン、ポルトガル、南フランスで火災が発生しやすい傾向にあります。
残念ながら、このような状況は、今後より一般的になっていくかもしれません。「今現在、ヨーロッパは歴史的にもトップ4に入るほどの暑い夏を記録しており、スペイン、ポルトガル、フランスで火災が発生し、これまでに約600人がなくなっています」と Hoefliger は話します。
前述の Anderson 船長は、「Arcachon 地域では、多くのキャンプ場やホテルの客が避難している」と指摘し、この火災が観光に悪い影響を与える事を懸念しています。フランスで最も美しく、歴史ある地域の一つである Arcachon が、少しでも物事が良い方向に向かうことをただただ願うばかりです。
引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/07/huge-blaze-still-burning-in-bordeaux
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
文責はFiradisに帰属します。