ワイン生産者は、雨や霜、干ばつには慣れていますが、強力な熱帯低気圧はまったく別次元の話です。
2月のホークス・ベイの丘は通常、夏の厳しい日差しのせいで干あがった草のような黄金色、色ざめたような黄土色をしています。しかし、今は青々とした緑に覆われ、ブドウ畑の所々に水が溜まっているように見えます。雨の多い生育期だったのです。
ギムレット・グラベルズ、ブリッジ・パ、さらに内陸にあるブドウ畑は、緑豊かなキャノピーとその周辺風景だけで、一見して何の問題もないように思われます。しかし、ロイズ・ヒル(ギムレット・グラベルズとブリッジ・パの両方を北から見下ろす丘)から州道50号線に向かって土砂崩れが発生したのです。
もう一つは(いくつかあるうちの一つ)、テ・マタの丘陵からトゥキトゥキ川渓谷にあるCraggy Rangeのセラードアに通じる道路に流れ落ちてきたものです。テ・マタ山頂から渓谷を見下ろすスポットは、セラードアやレストラン、ブドウ畑が眼下に広がり、ホークスベイで最もよく写真撮影される場所の一つで、その中を川は海に向かってゆるやかに流れていきます。2月中旬、川はカーキ色に濁り、対岸には木々の先端が見え、低い平地にある果樹園は水面下にありました。
しかし、ざっと見たところ、トゥキトゥキとナルロロの間にあるブドウ畑は最悪の事態を免れているようです。水たまりがあるべきではないような場所に水が溜まっています。ブリッジ・パの一部は浸水しています。ブリッジ・パのワイン産地の南側を流れる小さなパリトゥアの小川は、明らかに下方が浸水していますが、Paritua wineryのブドウ栽培者によると、この小川周辺の水域は2週間前に大雨の時ほどは高くないとの事です。
他の場所では、いくつかのブドウ畑の轍は小さな小川になっており、あちこちでブドウの木の幹が池から突き出ています。実際の被害(ブドウ木が多くの水分を吸収して果実に裂け目が生じて誘発される、ベト病などの病害リスク)は、今後数週間でようやく明らかになるでしょう。
なぜ、このブドウ畑の話に固執しているかといえば、洪水で大きな被害を受けた友人たちがいるからなのです。まだ連絡が取れない人もいます。大まかにヘイスティングスの南側の地域と海岸の辺りは明らかに最悪の事態を回避できたと思いますが、北側の地域はそうではありません。
エスク・ヴァレー(ワイナリーではなく、物理的な谷)では、信じられないような水位に見舞われました。SNSで配信されていた写真は、壁や屋根の上部などを映していました。
コロキポ通り(ナルロロで堤防が決壊した付近)では、丘の斜面から果樹園の木々が連なって見えるだけで、ブドウ畑は水面下に消えていました。このあたりは開墾された沼地なので、修復はできるようです。
ある友人は、輸送コンテナが激流に漂い、コンクリート製の鉄塔にぶつかり、そのまま静かに回転して下流に流れていくのを見ました。彼は、クジャクが穏やかに瓦礫の上に乗って流れて行くのを見たそうです。
ブドウ栽培とワインの被害が明らかになるまでには、少なくとも数週間、あるいは数カ月かかるでしょう。13haのブドウ畑が海に流されたと聞いています。しかし、様々な噂が広まっています。
この話をポジティブに終わらせるのは難しいですし、気候変動について背景説明をする必要もないでしょう。洪水に見舞われたワイン産地は私たちが初めてではないし、最後でもないでしょう。
しかし、2023年のヴィンテージをラベルで見たときに、未来の自分がどのような感情を抱くか、今それを想像するのは難しいです。
引用元: Hurricane Destroys Hawke’s Bay Vineyards
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