スペインで最も有名なワイン産地で、静かな革命が起こっています。
この困難な時代に、誰もが明確に称賛できる発展を遂げる事は稀ですが、スペインにはそんな事があるかもしれません-リオハ・ブランコの台頭です。
20年前、(Viña Tondoniaを除いて)ほとんどが国内市場に限定されていたような状況下で、活気のないカテゴリーに時間と資源を投資しようと決めたワインメーカーの機智については疑問を持たざるを得なかったでしょう。
2023年、リオハの不作な赤ワイン畑をすべて焼却し、ヴィウラに大量に植え替えることは、正気の沙汰とは思われなかったでしょう。
なぜ、このようなことが起きたのでしょうか?それは、赤ワインよりも、白、ロゼ、スパークリングワインの購買に引き寄せられ続ける消費者のせいなのです。リオハの原産地呼称統制委員会(Consejo Regulador)によると、リオハの白ワインの生産量は、2012年にはわずか5%だったのですが、2021年には全体の9.72%を占めるようになりました。一方、白品種の作付面積は2015年以降、約50%増加しています。
「Nivariusでは現在、30万本以上の白のリオハを生産しています」と、Vinos de Finca Palacios(Nivariusの親会社)の国際セールス・ディレクター、Borja Laroccaは言います。「買い付けに適した、質の高いブドウ畑が見つかれば、生産量を拡大します」
これはヨーロッパ全土で起きている事です。ローヌ渓谷の生産者を代表する組織インター・ローヌのトップは、需要の高まりを受けて、この地域の白ワインの生産量を倍増させる計画を最近発表しました。このように、より持続可能な未来を提供するカテゴリーへの投資は、毎月のように話題になっています。昨年、リオハの複数の生産者が、テンプラニーリョの樹の一部を伐採して-あるいは栽培者に金を払ってやらせる-白品種に植え替えるつもりだと私に言いました。しかし、彼らの名前は絶対に明かす事のないように言われたので従っています。
「最近、リオハの白ワインに対する需要が急速に高まっているため、生産者がもっとその生産量を増やそうとしている事は確かです」と、Remirez de GanuzaのオーナーJose Urtasunは言います。「このまま消費者の関心が高まり続ければ、ワイナリーは将来的にもっと多くの白品種を植えることになるでしょう。また、地球温暖化の影響で、今後テンプラニーリョが異常気温に悩まされることが多くなり、その解決策の一つとして、白品種を含む他の品種に植える事も重要となってきます」
今日、リオハの主要生産者で白ワインに手を出さないところはほとんど皆無です。Rodaは2022年に新しいキュヴェを発売し、CVNEは2021年に長い休止期間を経て白ワインブランド“Monopole Gran Reserva”を再登場させました。ムルソーの先を見据えるバイヤーにとって、選択肢は決して少なくないのです。ざっと列挙してみましょう。Abel Mendoza 5V, Finca Allende Blanco, Marqués de Murrieta Capellania, Palacios Remondo “Placet”, Remirez de Ganuza Olagar, Remulluri Blanco, Viña Tondonia Blanco, Valenciso Blancoなどです。 考えてみると、アメリカの消費者の多くは、リオハがマルチカラーのワイン産地であることをつい最近まで知らなかったのです。
皆のための何か
リオハの白は、単一品種とブレンドスタイルの両方を特徴とする非常に異質なカテゴリーであり、小売価格は$12未満(Campo Viejo Blanco)からCastillo Ygayのグラン・レセルバ・エスペシアルの1986年ヴィンテージ$700以上までと、様々です。 単一畑のワイン、100%グルナッシュ・ブランの白ワイン、印象的なテンプラニーリョ・ブランコなど、全て揃っています。 一方、Telmo Rodriguezは、シャルドネ主体でルーサンヌ、マルサンヌ、ソーヴィニヨン・ブラン、ガルナッチャ・ブラン、モスカテル・デル・パイス、ヴィオニエをブレンドして、2019年のRemulluri Blancoを造りました。未だかつてないような、唯一無二の味わいになっています。
ところで、私のお気に入りのワインの多くは、ヴィウラのしなやかさを軸に、木樽(現在はアメリカ産はあまりない)で慎重に熟成させ、クリーミーな豊かさと複雑さを存分に引き出しているのです。私は、よくできた高級リオハ・ブランコを鼻で笑うような人はいないと思います。リオハ・ブランコは、熟した果実とスイカズラの香りが特徴で、スペインで最もハズレのないワインとされています。
リオハの白ワインの歴史は紆余曲折しており、1980年代は全栽培面積の25%近くが白ブドウ品種でした。 しかし、『バックトゥザフューチャー』Brown博士のデロリアン・カーに飛び乗ると、1700年代後半には白ブドウの海が広がり、黒ブドウは少数派であったことがわかります。リオハの白ワイン産業を消滅させたのは、ボルドー人だったのです。19世紀にフィロキセラがボルドーのブドウ畑を食い尽くした後、商人たちは新しいブドウ酒の供給源を必要としていたのです。悲しいことに、2000年代半ばには白ブドウの栽培面積はほとんどゼロになりました。
そしてその後、復活したのです。もちろん、リオハの10本に1本が白ワインというほど大げさな話ではありません。リオハ・ブランコの全てが口当たりが良いというわけでもありません。市販のワインは、飲めるという程度の週末用ワインのレベルを超えることはめったにありません。
幸いな事に、青雲の志を抱く人たちがいます。 2021年、Remirez de GanuzaはOlagar Gran Reserva Blancoの初ヴィンテージ(2013年)をリリースしました。Urtasunによると、すべての割り当て分が3週間で売れたという事です。「2015年夏にRemirez de Ganuza Blancoをリリースして以来、私は白ワインの生産量を増やそうと必死になってきました。2015年当時、私たちにとって最も制限となっていたのは、高品質な古木のブドウ木が十分にない事でした」と説明します。
「しかし、それ以来、素晴らしい品質の古木の畑を購入することができ、今では畑よりもワイナリーの条件によって制限されています。今後数年で、白ワイン用の新しいスペースを作り、品質と量の両方を少しずつ上げていけるとよいのですが、まだ時間がかかりそうです」
彼が恐れているのは、今後数年の間に、若い樹齢のブドウを使ったワインで市場が飽和してしまうことです。「これまでにも何度もあったように、需要に左右されるだけのトレンドでは失敗します」とUrtasunは言います。
「だから、輸出量だけでなく、ワインの品質や名声、同様に産地のステータスも高めていかなければならないのです。若いブドウ畑に頼りすぎると、質の悪いワインができ、需要が減ります。しっかりとやって行かなければなりません」
とはいえ、リオハが白ワイン優位の畑になるのはまだ先の話ですが、18世紀の栄光の時代に戻る可能性は十分にあることをUrtasanは認めます。「ブルゴーニュの価格高騰と相まって、高級白ワインへの需要が高まり、ソムリエたちは他所に目を向けざるを得なくなっています。我々の時代なのです。今がチャンスなのです」
一方、真実に気づき始めた消費者も増えています。樽熟成の白ワイン、リオハは、ピュリニー・モンラッシェやペサック・レオニャンの偉大なワインに挑戦できるのです。にもかかわらず、ほとんどの場合、安いのです、半分の価格です。オレ!
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