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ボルドー2022、第一印象から

ボルドーの世紀のヴィンテージと言われるワインを、ワインディレクターが果敢に現地に赴き試飲してきました。


2022年のボルドー・プリムールは、最初のChâteau Cheval Blanc とChâteau Angelusのリリースと共に市場に提供され、他の魅力的なワインが続々と登場しています。

 

4月下旬にボルドーを訪れ、プリムールのワインを試飲しました。2022年のワインはどのようなものだったのでしょうか。そして、私たちはこれらのワインの割り当てを急いで確保すべきなのでしょうか?

 

2022年が特別なヴィンテージであることに疑いの余地はありません。このヴィンテージは、干ばつ、高温、絶え間ない日差しによって生まれたものです。私は品質の悪いワインも試飲しましたが、いくつかは非常に凝縮感がありました。もう少し熟成の時間が必要かもしれませんが、私がしばしば苦心して避けているいくつかのワイナリーのワインでさえ、魅力的で驚くほどバランスが取れていました。

 

このヴィンテージの第一印象はグラーヴとペサック・レオニャンの白ワインがよく表していて、カシスの葉とパッションフルーツの鮮やかなアロマの魅力的なワインでした。トップ・ヴィンテージのような酸味には欠けるかもしれませんが、ワインには鋭さと強いアロマがあり、非常に魅力的です。

 

赤ワインは、骨格がしっかりしていてパワフルですが、驚くほどフレッシュで落ち着きがあります。このような暑い年のヴィンテージで、バランスのとれたアルコール度数を示すこと、そしてフレッシュであること、この2つの逆説的な特徴によって定義される凝縮感のあるワインです。この2つの逆説を理解することが、すなわちこのヴィンテージを理解する鍵になるのです。

 

ワインの特徴

ワインは色が濃く、若いワインは強烈で鮮やかな赤紫色から黒紫色をしており、縁は鮮やかな紫色で、スワリングするとグラスを染めるものが多いです。青紫色ではなく赤紫色であり、pHがかなり低いことを示すことに留意する必要があります。

 

アロマはリッチで熟していて豊かです。マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤックのワインによくある、青臭さのあるカシスや黒スグリのアロマは、もっと熟してジューシーなブラックチェリーや、より濃厚なエルダーベリーのアロマに置き換えられています。葉っぱのようなメトキシピラジンの香りは稀でした。凝縮感のあるワインの特徴として、特にメドックのワインは、甘草のアロマで表現されることがしばしばあります。甘い甘草の場合もありますが、苦い甘草の硬い芯のようだと表現されることも多いです。

 

タンニンは豊富ですが非常に繊細で、シルキーな黒鉛のような特徴となり現れることが多く、時にはそれが果実のアロマを覆ってしまうこともあります。多くのワインは、フィニッシュにはっきりとした塩味のニュアンスが感じられます。

 

これらのワインの逆説的な特徴は、そのフレッシュさです。

 

干ばつの状況から、また2003年のような熱波のヴィンテージは酸が柔らかく、アルコールが高くなると予想していましたが、ワインの全体的なバランスは刺激的でした。酸度は高くなく、pHもそれほど低くはなかったのですが、生産者は、酸度がそれほど低くなく、pHが高くなかったことに安心と驚きを隠せなかったと言います。それを考慮しても、私はワインの予想外のフレッシュさを理解するのに苦労しました。私の最初の認識修正は、ワインのフレッシュな性質は単に酸度とは関係なく、むしろワインはその口当たりの良さの多くを、上質なタンニンと酸との相互作用から得ていることに気づくことでした。そのため、私は自分のコメントで酸味に言及することを避け、フレッシュさに言及してきました。

 

もう1つの逆説は、より納得のいく説明ができます。ほとんどのワインで、14〜14.5%を超えるアルコールレベルのワインがバランスよく感じるという事実です。果実の深みと豊かさがあり、アルコールが特に目立つことはありませんでした。もちろん、生き生きとしたフレッシュさはバランスを保つのに役立っています。多くのワインでは、アルコールが杉のような樽香に由来するエキゾチックで豊かな甘いスパイスの香りを強調する役割を果たしていることがわかりました。

 

酸味の逆説を解明する

このヴィンテージのワインにおけるフレッシュさを理解するのに苦労したので、別記者(Olivier Styles)の2022年ボルドーの酸に関する記事を興味深く読みました。
Oliverの見解を正確に言い換えれば、2022年は、発酵中に酸が魔法のように上昇するなどということはなく、すべての期待を裏切るような奇跡のヴィンテージではないと感じたということです。Pascal Chatonnetのような評論家が主張したように、醸造家であるOlivierは、発酵中に酸が増加することはないと捉えています。Oliverにとってそれはシンプルなことで、酒石酸の添加を考えるべきだということです。

 

2023年のボルドー地方で、酒石酸の添加が全く行われていないとは思えません。しかし、ワインを試飲したところ、全体的に調和がとれており、補酸が問題となるとは思えませんでした。私はワインに添加された酸を識別する専門家ではありませんが、Oliverの説は私が試飲したものと一致しないように思えました。

 

ワインに含まれる他の酸を調べてみると、コハク酸が解決の鍵である可能性が高いことがわかりました。コハク酸は、ブドウには含まれない有機酸で、発酵中に酵母が作り出すものです。500mg/ℓ以上の濃度でワインに存在する唯一の自然発生酸です。私が読んだ研究では、完成したワインには1ℓあたり2~3gという高い濃度で存在する可能性があるとされており、これは確かに感じる酸味を変化させるレベルです。AWRIの研究によると、発酵中にコハク酸の生成を増加させる可能性のあるいくつかの要因があり、そのうちの1つは果実の糖度が高いことで、2022年のボルドーはこのケースに当たるようです。

 

コハク酸の特徴として、その風味にはっきりとした塩味の要素があることを指摘する評論家がいることに気づきました。このことは、このヴィンテージの多くの赤ワインから感じられた特徴を説明するものであり、またいくつかのワインにみられた黒鉛のような性質にさえ寄与している可能性があります。このヴィンテージの多くのワインに見られる、非常に特徴的な風味です。

 

では、コハク酸が発酵中に生成されるのであれば、熟練した醸造家であるOliver Stylesが、なぜ発酵中の酸の増加を見てこなかったのでしょうか。

 

通常、発酵中にマストに存在するカリウムが酒石酸と反応して酒石酸塩の結晶を生成し、ワインから抜けることで酸が減少します。通常、失われる酒石酸の量は、得られるコハク酸の量よりも多いので、発酵中に総酸度が低下し、pHが上昇するのが普通です。では、2022年のボルドーでは何が違ったのでしょうか。単純な話、干ばつがあったのです。通常、灌漑用水や雨によって土壌が湿ると木の樹勢が強くなり葉が生い茂ります。葉が重なって影がかかるとブドウ内にカリウム塩が生成されます。2022年のボルドーでは干ばつによって樹勢が抑えられ、葉が影を多く作らなかったためにマスト内のカリウムが非常に少なかったと思われます。そのため、発酵でワインから失われる酒石酸の量が少なかったのです。

 

2022年ワインが驚くほどフレッシュなのは、別の酸が関与している可能性も指摘されています。サリチル酸です。サリチル酸のワインへの添加は違法ですが、天然には微量に存在し、有害なものではありません。サリチル酸の特徴は、刺激的な苦味です。もし2022年に通常より高いサリチル酸が検出されたなら、この苦味と予想外の酸度との相互作用が、多くの赤ワインの口当たりの良さを説明するのに役立つと思われます。酸度を計測することは、この複雑なワインの問題を解明するものではないようです。

 

ワインについて

では、これらのことは一体ワインにどのような影響をもたらすのでしょうか?私は、ワインが見事に熟成することを意味していると考えていますが、その熟成能力は、酸ではなく、たっぷりとした上質なタンニンと豊かなアルコールに由来していることは明らかでしょう。フレッシュさとアルコール度数の調和が、若いうちから親しみやすいワインに仕上げてくれるかもしれません。

 

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2023/05/bordeaux-2022-first-impressions-count

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