ピノ・ノワールの次なる大規模栽培地は、ワインの伝統主義者にとって驚きの産地でしょう。
徹底的な探索の末、筆者はヨーロッパで最高のコストパフォーマンスを持つピノ・ノワールを見つけたかもしれません。
15年以上、私はこの重要な瞬間を待ち続けていましたが、ついにその時が来た時、私は完全に不意をつかれたと言わざるを得ませんでした。
その候補は、アルト・アディジェのアルプス斜面で栽培されたピノ・ネロや、ラングドックのリムーの高地で生産された「赤いブルゴーニュ」、そしてもちろんコート・シャロネーズの最良のワイン、さらに、増え続けるドイツやオーストリアのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)など多岐にわたります。
ですが、今回の衝撃的な体験は全く予想外の場所から現れました。
ラランド・ド・ポムロールから愛を込めて
今年の7月、私はラランド・ド・ポムロールにあるChâteau La Fleur de Boüardを訪問しました。この立派な建物は、1998年にChâteau AngelusのHubert de Boüardが購入するまでは保険会社が所有していましたが、そのテロワールは素晴らしいものです。粘土が混ざった石の多い深い砂利質に加え、砂利の上に砂質粘土が広がる区画でもブドウが栽培されています。これらの自然の利点に加えて、低収量と緻密な醸造技術が組み合わさり、隣接するより有名なワイナリーにも匹敵する濃厚で素晴らしいワインを生み出しています。
グラン・ヴァンと「Le Plus」と呼ばれる特別なキュヴェを試飲した後、ホストはグループに、1つは赤、もう1つは白の最後の2つのグラスを提供し我々を驚かせました。それぞれしっかりと香りをかぐと、赤の方は、赤い果実と森の下草が調和したポマールの特徴を持ったピノ・ノワールだと感じました。白は明らかにオーク樽で熟成されたシャルドネでした。2分ほどスワーリングし、口に含み吐き出した後、シャトーの共同所有者であるEmmanuel Teilletはその予想が正しいことを教えてくれました。私たちはボルドーで栽培されたブルゴーニュ品種のワインを飲んでいたのです。
この試飲はショックという言葉では足りないほどでした。ボルドーの人々は、初見では分かりにくいですが、実は素晴らしいユーモアのセンスを持っているので、私は最初、Teilletが冗談を言っていると思いました。それは、プリムールでの弱いヴィンテージの彼らの価格設定を見てもわかるでしょう。ですが、実際には、私は非常に洗練されたピノ・ノワールとシャルドネを手頃な価格で楽しんでいました。この体験を記念し、帰り際に数本のボトルを購入したので、クリスマスに開けるつもりです。
Emmanuel Teilletによると、Hubert de Boüardは2011年にベルジュラックのブドウ畑でブルゴーニュ品種の試験栽培を開始し、これが右岸でのプロジェクトの前兆となったそうです。彼はオレゴン、スイス、ブルゴーニュの友人たちから影響を受け、3.5ヘクタールのシャルドネ(現在は7ヘクタール)と1ヘクタールのピノ・ノワールを植えました。
「Hubertは好奇心旺盛なエノロジストだということを理解してください」とTeilletは言います。
「好奇心旺盛な彼は、ラランド・ド・ポムロール周辺の一部の土壌がピノ・ノワールとシャルドネの栽培に最適だと気づきました。フレッシュな土壌、白い石灰岩、そして深い粘土の下層があります。当然、ピノ・ノワールは気難しい品種で、よりフレッシュさが必要なので、品種の割合は少ないままですが、シャルドネははるかに適応性が高く、消費者の関心も高いです。であればボルドーでブルゴーニュのブドウを栽培しない理由はないでしょう?」
そうはいっても、これは私にとって驚きで、ボルドーに対する認識を変える出来事でした。ボルドーが長年のライバルをそのゲームで打ち負かすことができるとは、誰が想像できたでしょうか?
新しい始まり
残念ながら、La Fleur de Boüardがこの素晴らしい赤ワインを大量生産するまでには時間がかかるでしょう。事実、Teilletはピノ・ノワールに最適な土地を追加で見つけるのは容易ではないと認めています。数年前に会ったオーストラリアのワインメーカーの言葉を借りると、「ピノ・ノワールを手懐けるのは、反社会的行動をとるピラニアを手懐けるよりも難しい」ということです。
このワインは他の競争相手を圧倒しているからこそ余計に残念です。実際、コート・シャロネーズやコート・ドールの無名の畑から生まれたピノ・ノワールでさえ、この品質と価格のバランスに匹敵するものを思い出せません。シャルドネもまた、緊張感と生き生きとしたフレッシュさを備えた素晴らしいワインで、白い花、バニラ、柑橘類、ネクタリンの香りを備えています。
「このシャルドネは何年も熟成できると信じています」とTeilletは言います。
「ボルドーでブルゴーニュの品種を使って作られたこのワインには、本当に消費者の関心が寄せられています。好奇心の後に、この素晴らしい品質に驚く瞬間がやってきます。ブルゴーニュのワインメーカーでさえ、ブラインドテイスティングでこのシャルドネに驚いていました。」さらに彼は、ピノ・ノワールもまた、幸運にもボトルを手にした消費者から愛されていると付け加えます。これは、de Boüard家が所有するレストランやワイナリーのショップでも販売され、直接プライベートクライアントにも送られています。
今、私たちはパラダイムシフトの目撃者となりつつある、とTeilletは考えています。つまり、最も保守的なワイン産地の一つであるボルドーでも、トップ生産者やクリュ・クラッセのシャトーが、非伝統的な品種を積極的に取り入れようとする意欲が高まっているのです。
「ボルドーには多様な土壌があることを忘れてはならず、少しの好奇心があれば、さまざまな品種を植えることができます。例えば、フィロキセラ危機の前にはシラーもボルドーで生産されていました。さらに、現代の消費者は新しいボルドーワインのスタイルを探求することに興味を持っています。La Fleur de Boüardは最近、グルナッシュとシラーのロゼを初めて生産しましたが、成功しています!」
少し調べたところ、マルゴーのChâteau Kirwanなど、いくつかのボルドーの格付けシャトーがシャルドネを植えていることがわかりました。Kirwanでは、マルゴーの世界的な砂利質のテロワールで育ったであろうシャルドネを使用した見事な白ワインを生産しています。そして、ブルゴーニュの品種にとどまる理由はないのです。
「新しい品種の実験はINRA(フランス国立農学研究所)に任せています。」
そう話すのはChâteau Lagrangeのゼネラルディレクター、Matthieu Bordesです。
「しかし、マルセラン(Marselan)※が良い結果を出していると聞いており、来年にはその機会があるかもしれません。」
(※注釈:マルセランは1961年にINRAで生み出されたカベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種)
最近、ポイヤックの見事な土壌で育てられた興味深いトウリガ・ナシオナルも味わいましたが、残念ながらシャトーの名前を明かすことは禁じられています。
ですが、どの体験も、ボルドーのピノ・ノワールを初めて口にした時の「バン!」という瞬間には匹敵しませんでした。これは冒涜なのか、馬鹿げているのか、あるいは単に愚かなことなのかはわかりませんが、この大胆な経験から得た喜びは、ラランド・ド・ポムロールの名高いグラン・ヴァンから得られるものを上回りました。
他のボルドーのワインメーカーもHubertに倣い、ブルゴーニュ人の先祖代々の精神を受け入れるのでしょうか?この一瞬の光景を見る限りでは、そうしないのは愚かでしょう。
引用元:Bordeaux Leans into Pinot Noir
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