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Napa Greenは見せかけの環境配慮(グリーンウォッシュ)なのか?

環境認証機関は口先ではいいことを言っていますが、実際に有機農業に関心を持っているのでしょうか?


ワインラベルの「グリーン」とはどういう意味でしょうか?

 

Napa Greenは2004年に設立された認証団体で、2019年からは独立した非営利団体となっています。Napa Greenの認証を受けたブドウ畑の約3分の1はラウンドアップなどの合成除草剤を使用していて、ここでいう「グリーン」はオーガニックを意味しないのです。

 

Napa Greenは、2026年までにラウンドアップを廃止すると発表し、大きな話題となりました。ナパ・ヴァレーで40年間有機農業を営んできたMark Nealは嘲笑しました。

 

「Napa Greenは、ラウンドアップ(除草剤)は使用できないが、一定割合の傾斜地であればラウンドアップは使用できるというスタンスを取った」とNealは言います。Neal Family Vineyards のオーナーであるNealは、95のワイナリーに有機農法で栽培したブドウを販売しています。「マーケティングなんだ。グリホサート(ラウンドアップの主成分)を除去しなければならないようなマーケティングをしていますが、その必要はないのです。私のワイナリーに来る人は、なぜNapa Greenでないのかと尋ねるのです。Napa Greenとは有機農法だと思われている。でもそうではないのです」。

 

では、「Napa Green」の 「グリーン」とは何を意味するのか?

 

表明されているNapa Greenの最も重要な側面は、社会的公正、正義、包括です。Napa Greenのエグゼクティブ・ディレクターAnna Brittain は、次のように語っています。「私たちは、社会的持続可能性をすべての基本と考えています」。

 

「Napa Greenについては、どのような名前であっても、この組織が何をするのかを簡潔に表現するのに苦労する」とBrittainは言います。「2004年に開発された名前です。開発された当初は、環境侵食と水のコントロールに重点を置いていました。私たちが力を入れているのは持続可能性です」。

 

しかし、その名前は 「グリーン」のままなのです。それが、見せかけのグリーンウォッシュなのかという疑問に繋がりました。

 

「私にとって“グリーン”とは、土壌、水、空気、そして次の世代に何を残すかということです」と、メンドシーノ郡近郊に1988年から有機栽培認証を取得しているブドウ畑を持つMartha Barraは言います。「社会的公正は結構。しかし、有機栽培の土壌を作ることはできないのです。2026年までにラウンドアップを全廃?なんてことだ、笑っちゃうね。2024年から26年の間に何が起こるのか?何ガロンのラウンドアップが使われるのか?私には、不誠実なことにしか思えません」。

 

「グリーン」とはどういう意味か、という答えは見けられませんでした。しかし、人々がオーガニック食品を買う理由は見つけることができました。2016年のPew Research Centerの調査によると、アメリカ人が有機農産物を買う場合、76%が「より健康的な食品を手に入れるため」と答え、33%が「環境を助けるため」と答えています。味覚のためではなく、59%がオーガニックと従来の野菜や果物の味は「ほぼ同じ」と答えています。Pewは、社会的公正、正義、包括については問うていません。

 

Dominus Estateのブドウ栽培・ワイン醸造責任者であるTod Mosteroは、社会正義が基本だと言います。

 

「消費者と話をする時、同僚と話をする時、私はいつも有機栽培、再生可能、持続可能といった言葉の定義について語ります」とMostero は言います。「環境について話すとき、自然があって人間があるという考え方がある。しかし、人間を自然から切り離すことはできない。人間はとても重要な要素なのだ。持続可能性という側面では、農場で働く人々を大切にしなければならない。持続可能性について語るとき、有機農業を視野に入れるなら…廃棄物管理、水資源保護、社会的健全性を視野に入れなければならない。社会的健康、つまり多様性、包括の概念はとても重要だ。というのも、廃棄物処理と水資源保全を行っているのは人間だからです。人間がこのコミュニティの中で繁栄していなければ、他の柱は倒れます」。

 

私が 「グリーン」という言葉が引っかかると伝えると、Mosteroはこう言いました。 「“グリーン”という言葉は、今日では少しゆるいものだという考えがある。今日、“グリーン”が何を意味するかということに関して、強力な一致があるわけではない。悪質なプレーヤーのせいで、そしてこのような用語のせいで、私たちは今日少し苦しんでいる。自分たちの価値観を貫く農園もあるけれど、有機栽培農園の中には、環境保全に努めていないところもあるかもしれない」。

 

実際、カリフォルニアでは反有機栽培農業運動が起こっており、それはNapa Greenの方向転換と重なっています。

 

米国農務省によると、2021年の米国の有機認定農場数は17,445であり、2016年より23%増加しました。有機作物の総栽培面積はさらに、この5年間で34%増加しました。カリフォルニア州は圧倒的に有機農業をリードしており、3000以上の有機農場があり、これは全米の17%で、2番目に多いウィスコンシン州の2倍以上です。

 

これは、より多くのアメリカ人がオーガニック食品を望んでいることを示しています。『The Hill』紙は2020年、オーガニック製品の消費者の90%が農薬を避けるために支持していると主張しています。

 

しかし、アメリカ全土的に有機栽培面積が増加している一方で、カリフォルニア州では2019年から2021年の間に有機栽培面積が16%減少しました。私は他の作物を追っていないので、その理由はわかりません。

 

「ナッシュビルにあるワインショップに行ったとき、オーガニックのコーナーがありました。しかし、ラベルを見ると、そこには認証がないのです」とBarraは語ります。「正直ではありません。書類が多すぎるとか、コストがかかりすぎるという言い訳は信用できません。コミットしたら、認証を受ける必要があります」。

 

Nealは、有機農法で栽培されていないナパ・ヴァレーのブドウ畑の寿命は平均17年だと言います。

 

「先日、ある人に『15年以上もたない』と言われた」とNealは述べました。「15年ごとに畑を切り開いて、それでは脱炭素問題はどうするのだ?」

 

Napa GreenのBrittainは言います。「名前は完璧ではないのです。『グリーンってどういう意味?』とよく聞かれます。『オーガニックのことですか?』消費者は素早い手がかりを求めているのだと思います。消費者が価値あるビジネスを支持したいという証拠はたくさんあります。私たちの業界では、若い飲み手を惹きつける必要がある。持続可能性や社会問題に深く関係している人々をテーブルに惹きつける必要がある。私たちは購買力についてよく話します。嘘をついているとわかれば、彼らはその企業を拒絶するでしょう」。

 

「有機栽培の枠を超えて、人々に考えてもらう必要があると思います」とBrittain は言います。「有機栽培はパズルの小さな一片です。有機栽培とは、化学合成農薬を使わないということです。有機栽培が連邦政府のプログラムであることを人々は知らないので、ロビー活動の対象となるのです。何が有機栽培なのかは時代とともに変化しています。有機栽培であっても、水の使用量がひどく、従業員のケアをしていなくても、有機栽培であることは可能なのです」。

 

カエルのカーミットの歌のように、”グリーンでいるのは簡単じゃない“のです(そうでない限り)。

 

引用元:Is Napa Green Just Greenwashing?

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