フィラディスワインニュース

ナパ・ヴァレーとウィラメット・ヴァレーの2020年レポート

 

 

ナパとオレゴン州北部のワイナリーの大半が、2020年の収穫量の出来を「平均以下」または「悪い」と報告しました。どちらの地域も山火事とその煙害の被害を受けた影響で、ブドウの収穫すら行わなかったワイナリーも多くあったようです。

 

シリコンバレー銀行のワイン部門で副社長を務め、“State of the Wine Industry”でこの結果を報告したRob McMillanは、2020年を「悪い」と判断するワイナリーが存在するからといって、消費者に届く全てのワインがそれに当てはまるというわけではないと言います。「残念なヴィンテージになってしまったワイナリーもあれば、見事なヴィンテージとなったワイナリーもあります。平均点をつけるべきではなく、それぞれのワイナリーに個人点を与えるべきなのです。」

 

しかしながら、「カリフォルニアの偉大なヴィンテージが新たに誕生した」という言葉を毎年のように聞いている人々にとっては、ワイナリーのこのような告白は衝撃的でした。ワイナリーは2020年の収穫の調査に対して匿名で回答しているので、記者から実名で直接インタビューされる時よりも正直なものだからです。

 

地域別の収穫レポート

地域別の収穫の品質に対する質問では、調査対象であるナパのワイナリーのわずか8%が2020年の収穫を「素晴らしい」と回答し、21%は「良い」と回答しました。一方で、「平均以下」と回答したワイナリーは24%で、31%は「悪い」と評価しました。山火事の影響を大きく受けたウィラメット・ヴァレーを含むオレゴン州北部では、「素晴らしい」と回答したワイナリーはわずか12%で、26%が「平均以下」、28%が「悪い」と回答しています。ソノマではわずかに良い結果となっていますが、それでも45%のワイナリーが「平均以下」または「悪い」と回答しています。

 

上記の調査結果は他の地域よりも厳しいものとなっています。パソ・ロブレスでは83%、サンタ・バーバラでは75%のワイナリーが「素晴らしい」、または「良い」と回答しています。西海岸で大きな被害を受けた山火事を回避したワシントン州では、その数字は86%にも昇ります。ニューヨーク州のワイナリーは非常に楽観的で、なんと67%が「素晴らしい」と回答しています。

 

まやかしのワイン

通常、質の悪いブドウは質の悪いワインを生み出します。McMillanは、煙害の被害を受けた畑はそもそもの収穫をせず、また収穫されたブドウから生産されるワインはタバコのようなフレーバーを除去する処理が施されているため、2020年は必ずしもそのケースには該当せず、またそのような工程で造られたワインは通常よりも安価な価格設定となるだろうと説明します。その品質の高さから業界の羨望の的になるような価格設定が可能なナパ・ヴァレーでは、たとえそれが標準以下のヴィンテージだったとしても、ワイナリーの名誉を守るために標準以下の品質のワインはリリースしません。「それらのワインはバルクで売りに出され、安価なワインとしてブレンドされるかもしれません。」とMcMillanは語ります。

 

来年は「2020 Napa Cabernet」のラベルを付けたワインが店頭に並ぶかもしれません。それらは煙害を受けたブドウで造られたワインを最新の技術を駆使して綺麗に処理していますが、同時に本来あるはずのフレーバーやアロマまで除去されてしまっています。ネゴシアンのような起業家が安価なナパ・カベルネを売りに出す機会を得るために、こうした“修理済みの”安価なバルクワインに飛びつくことでしょう。

 

オレゴン産ピノ・ノワールの行き先

少なくともナパ・ヴァレーでは代替策がありますが、オレゴンのワイナリーはより深刻な状況下にあります。オレゴンの主要品種であるピノ・ノワールは煙害の影響をより受けやすいうえに、またオレゴンのワイナリーはカリフォルニアほど山火事を経験してきていませんでした。McMillanによると、ワイナリーの大半は作物保険に加入していなかったので、畑の所有者は出来るだけブドウを収穫し、それらを売りに出す衝動に駆られてしまうだろうと述べます。しかしながら、赤のブレンドワインを大量生産しているカリフォルニアとは異なり、オレゴンにはそのような大量生産の文化はないので、“修理済みの”ウィラメット・ヴァレー産ピノ・ノワールが行き着く場所がないのは明らかです。

 

「オレゴンのワインメーカー数人と話をしたが、果汁を有効活用する実験の機会と捉えているようだ。しかしながら煙害を受けたワインを瓶詰めする人は居ないでしょう。それはさすがに恐ろしすぎますから。」とMcMillanはまとめています。

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/01/napa-and-willamette-suffer-poor-2020-vintage

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