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良い方向へ向かうカリフォルニアの収穫

パソ・ロブレスとサンタ・バーバラは互いに隣り合った高級ワインの銘醸地ですが、気候が各地域に与える影響は全く異なります。しかし今年は特にトラブルにも見舞われず、同じような気候の恩恵を受けています。

 

2021年の気候条件

米国西部の他の地域が記録的な高温と干ばつに苦しんでいる間、カリフォルニア州のこの地域は比較的冷涼かつ穏やかな気候で、大きな熱波や降雨、雹や台風、そしてありがたいことに山火事やそれによる煙害の影響もありませんでした。

 

寒い冬や現在進行中の干ばつ、そして開花時期にあたる5月の冷え込みによって、例年よりも若干収量が減少する可能性はありますが、この重要なエリアの 2021 ヴィンテージが素晴らしいものになることは間違いありません。しかし1つだけ懸念点があります。この地域のブドウは他の地域よりもブドウが遅く熟す傾向にあります。今のところは非常に順調そうですが、あくまでもまだ途中段階です。

 

パソ・ロブレスのワイナリー  Tooth and Nail Winery   で醸造担当を務める  Jeremy Leffert  は次のように語ります。「2021年は非常に冷涼ではありますが今のところ順調です。7 月 1 日から 8 月 15 日までの期間に気温が 37 ℃を上回る日はほとんどなく、温暖な時期は生育期の良いタイミングにあたりました。夜間の低い気温はブドウの酸度を保ちました。これらの気候要因はこのヴィンテージの品質を支える原動力となっています」

 

  Holus Bolus  の共同経営者である  Amy Christine  マスター・オブ・ワインは、サンタ・バーバラでは記録上最も遅い収穫を迎えたと語っています。

 

「冷涼な春だったので、2019 年や 2020 年に比べると遅い発芽となりました。また夏も同様に冷涼だったので、2019 年や 2020 年のような熱波はありませんでした。ピノ・ノワールを例年より2週間遅れの 9 月最終週に収穫しましたが、これはワイナリーの歴史上初めてのことでした。2020 年と比較すると、全品種で pH 度が低く、一方で糖度は高くなりました。2020 年は主に pH 度に基づいて収穫を決定しましたが、2021 年は糖度とフレーバーの成長に基づいて収穫を決定しました」

 

Lucas Pope  は、パソ・ロブレス周辺で複数のブドウ畑を管理している  Coastal Vineyard Services  社のディレクターです。彼によると、カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの収量は例年よりやや少なく、シラーの収量は例年に近いとのことです。

 

「パソ・ロブレスのブドウは非常に品質が高かったです。黒ブドウは干ばつの影響で、小粒で色が濃いものになりました。極端に暑い日がなかったため、白ブドウの酸味は比較的高く保たれ、その結果として素晴らしいワインが出来上がるはずです。少ない降雨量と快適な気候が、2021 年ヴィンテージの指標となるでしょう」

 

“小さい” は美しい

パソ・ロブレスのワイナリー  Tablas Creek Vineyard  のジェネラルマネージャー  Jason Haas  によると、2021 年は房も果実も小粒で、つまりは良いワインの兆候が見えるといいます。

 

「偉大なヴィンテージの特徴をすべて備えていますが、少なくとも我々にとってはレアなことです。今年の収量はここ数年と比較すると約 30 %減少しているようですが、デメリットだけではありません。果汁に対する果皮の割合がとても高いのです。色も非常に美しく、果実の凝縮感も見事です」

 

Haas  によると、彼のブドウ畑では冬の降雨量が例年の約 60 %程度でしたが、その大半が 1 月下旬の 2 日間に集中的に降ったもので、地面が吸水するスピードよりも早かったといいます。

 

サン・ルイス・オビスポの冷涼な沿岸部に位置するワイナリー  Haliotide Wines  の  醸造家  Nicole Bertotti Pope  によると、当初は平均以下になるだろうと予想されていた収量が想定以上に多くなったのは、生育期に大きなトラブルがなかったからだといいます。

 

「春と夏の気温が低かったために生育期間が長くなり、ブドウはゆっくりとしたペースで熟し、フレーバーも発達していきました。現時点では、ブドウの品質に悪影響を及ぼすような大規模な気象現象は発生していません。バランスのとれた収量と小粒な果実と房のおかげでフレーバーは凝縮し、見事な酸度が保たれました」

 

サンタ・バーバラのワイナリー  Kunin Wines  のオーナーである  Magan Kunin  によると、冷涼な生育期間は、パソ・ロブレスで最高のワインを生み出すムールヴェードルのような晩熟のブドウにとっては難しい年になることを懸念しています。

 

「ローヌ品種の白ワインにとっては良い年で、ブドウが樹に実っている時間が長かったため、メリハリのあるフレーバーと適度な酸が得られました。2021年の収穫は、成熟スピードの遅さだけではなく、 Brix  値 (糖度)の急激な上昇に対する策も必要です。2021 年の最初の収穫では、Brix 値が 19.8 %で、予想されていた23.5%を大きく下回りました。その 8 日後、2 回目の収穫では 26 %まで上昇していました。クラスターや区画によって、熟度のレベルには大きなばらつきがありました」

 

サンタ・バーバラのワイナリー  Melville Winery  の栽培責任者  Chad Melville  によると、彼のワイナリーの収量は過去 10 年間の平均収量と同等だそうです。

 

「区画やクローン、土壌、標高などの様々な要素によって、ブドウの品質は今のところ  ”良”  と  ”優良”  の中間といったところです。結論から言うと、ピノ・ノワールとシャルドネの期待値は非常に高いです。シラーはまだ収穫を終えていませんがそれは例年通りです。今のところシラーも順調そうで、果皮は非常に柔らかく色づきも良いです」

 

Haas  は、低収量と小粒な果実によって、2021 年は記憶に残るヴィンテージになるのではないかと考えています。

 

「乾燥した寒い冬が続いたという点で、2007 年を彷彿とさせます。ブドウ樹がとても健康そうに見えたので驚きましたが、いざ収穫を始めると収量は低くなりました。しかしそれが影響して、2007 年は今までで最高のワインになりました。今年もそうであることを期待しています」と、 Haas  はまとめています。

 

引用元:  https://www.wine-searcher.com/m/2021/10/california-harvests-raise-optimism-levels

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