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ブルゴーニュネゴシアンの苦難

伝統的に、ネゴシアンはブルゴーニュのシステムの中心にいましたが、彼らにとってますます厳しい時代となってきています。


ネゴシアンとして成功するのは難しいことで、世界で最も人気のある(そして高価な)地域の1つで成功しようとすればさらに困難を増すだけです。

 

ブルゴーニュは常に、小さく独立したネゴシアンが非常に重要な役割を担うエリアでした。歴史的には生産者よりも重要でしたが、今や市場を席巻するスーパースター・ドメーヌの台頭や大規模なネゴシアン企業により時代は変わってきています。

 

ワイン・サーチャーでは、ブルゴーニュで自身のブドウ樹を所有せずにワインを作る事の試練と苦難について、ネゴシアンと率直に話をする機会を得ましたが、それは簡単な事ではありませんでした。

 

私は多くの生産者にこのテーマについて話してくれるよう頼みましたが、幾つかは非常に繊細な話題のため、多くで回答を断られるだろうと予想していたのです。しかしこのトリッキーなテーマについて、とても正直に答えてくれた  Loïc LamyとNick Harbour  に感謝します。

 

ブドウもしくはジュース購入の可能性

Loïc Lamy  は数年前、現  Domaine Simon Bize  のワインメーカーであり、以前は  Chateau de Pommard  で働いていた友人の  Eric Pigna  と  ”Vins Saison”  というブルゴーニュ拠点のネゴシアン・プロジェクトを立ち上げました。彼らはジュースとブドウどちらを購入することもありますが、ブドウの購入が常に好ましいと言います。なぜなら、セラーでのプレスが終わった後よりも、ブドウ、もしくは畑から直接扱う方が、全行程における彼らの裁量が増えるためです。

 

2021年のような大幅な収量減の年は、Lamy  の生産できるワインの量は通常に比べ30%程度にとどまります。果物の量が少ない場合、生産者はまず彼らのニーズを満たすことを優先するためです。「壊滅的なヴィンテージの場合、特に我々のようにオーガニックやビオディナミ農法のブドウのみを調達する人にとっては、購入できるブドウを見つけるのはとても困難です。」とLamy  は言います。そのような年でもブドウの販売を申し出る栽培農家もいますが、通常を遥かに上回る値段を提示されるとの事です。

 

海外から移住した  Nick  と  Colleen Harbour  は2013年にサヴィニーを拠点とするネゴスビジネスを開始しました。Lamy  と同様に、この2人も常にブドウの購入を好みますが、難しい決断を下す必要が多々あるといいます。「ジュースの購入は難しい、なぜなら単なるジュースだからです。それはモンラッシェからのジュースなのか、それとも道をおりた先にある果樹園からのプルーンジュースなのか?」さらに彼は信頼できる友人や評判の良い生産者から購入する必要性を強調します。「誰かからジュースを購入するときは、本当に注意が必要です。いつ収穫したのか、どのようにプレスしたのかなど、様々なことを知るべきです。」Harbour  は一方で、特に難しい年の場合は、ジュースの購入には反対しないといいます。

 

ラインナップの一貫性

多くの人にとって、ジュース購入の決定は、生存やラインナップの一貫性、またはそのどちらにも繋がる問題です。Harbour  は、2021年は彼が頼りにする  Chassagne Montrachet  の供給者には販売する果実がなかったと説明します。「唯一、どこかからのバレル半分のジュースを買う機会が訪れました。私は、ラインナップにこのアペラシオンを維持するため、OKと答えました。」

 

しかし、誰からでもオファーを受ける事は決して彼らの戦略ではありません。Lamy  と同様、Harbour  も信頼できるブローカーと協力しており、そのブローカーは彼の基準を満たす  Chassagne Montrachet  を見つけるために地域中を探し回ったといいます。「時には最高のヴィンテージではないこともあるので、リスクを取る必要があります。ここで重要なのは、(前述のバレル半分のジュースの購入により)2017年から毎年生産しているワインを150本確保出来たという事です。もしブローカーを信頼していなければ、2021年は完全に生産がなくなっていたでしょう。」

 

一方で、(継続でなく)シンプルに損失を選ぶ人もいます。「私たちの場合、ボトルの価格とワインの品質には直接的な関係があるはずだと信じているので、購入しないことを選択することもあります。」とLamyは言います。「フランスで  Saint Veran  を40ユーロで販売しても意味がありません。」(注:彼とPignalは、・プロジェクトを副業としており、共に日中の仕事で安定した収入を維持しているからこそ、この損失を被ることが出来ると説明しています。かたや  Nick Harbour  にとって、彼のネゴシアン・ビジネスは主な収入源です。)

 

継続的な価格上昇

ブドウ/ジュース購入の可能性に加え、地域のネゴシアンにとってブドウ/ジュースの価格設定は、同じくらいの試練を与えます。Harbourによると、2013年には  Corton Charlemagne Grand Cru  が1樽あたり€7,000で販売されていたのが、今では€35,000にまで上がっています。

 

「同様に、Batard-Montrachet  は€80,000以上で販売されています。私が(ネゴシアン業を)始めたときは、€10,000~12,000程でした。」更に低価格帯のワインでさえ影響を受け始めています。「彼らは今年、Macon-Villages  が2倍の価格になると話しています。」と  Harbour  は言い、かつて€1,000で売られていたものが今では€2,000になると述べました。

Lamy  は、何よりも果実の価格が白か黒かというように明確になることは決してない、と述べます。「ブローカーを通してブドウを購入する場合は、そのブドウの本当の売値はわかりません。価格はブローカーによって調整されるため見積もりでしかないのです。」最終的な金額は購入量に基づいて決まり、その後複数回にわたって支払いが行われます。「通常、3回払いです。最後の支払いでは、(需要と供給によっておこる)価格変動が考慮された調整価格になります。」と彼は説明します。

 

品質管理

全体を通し、ネゴシアンとして働く事の最大のリスクの1つは、品質管理の確実性です。一部の栽培者は、喜んでバイヤーを畑仕事に迎え入れることもありますが、ほとんどの場合、購入は信頼に基づいて行われます。さらに、ネゴシアンは売り手の寛容さにも翻弄されます。「収穫期、『ここに最高のブドウがありますよ!買いに来てください!』と叫ぶ人は誰もいません。」しかし、質の高い栽培者と取引できると、2番手のブドウであっても、従来型のドメーヌがオファーする最高品質のものよりも優れていることがよくあると、Harbour  は説明します。

 

出来る限り人の手の介入を減らしたワイン造りを求めるネゴシアンにとって、品質管理はさらに複雑です。

「亜硫酸無添加のジュースを購入することは難しいので、栽培者との良好な(そして正直な)関係を築くことが非常に大事です。」と  Lamy  は言います。そして、価格設定の問題は栽培者だけにとどまりません。「こうしたワインは、通常の生産者よりも常に高価になります。」彼のサプライヤーの一部は、2021年のブドウ価格に対し、例年より30%以上を望んだといいます。「最終的なワインがあまりにも高すぎると、結局誰からも買ってもらえなくなります。」

 

厳しく激化する競争

一般に信じられていることとは反対に、小さいネゴシアンにとって、ワイナリー瓶詰ワインとの競争は最大の問題ではありません。ドメーヌによるネゴス詰めのワインとの闘いこそが大きな問題です。Harbour  は、彼と  Colleen  が事業を登録した時、ブルゴーニュのネゴシアンの登録は数百人程度だったといい、今日ではその数は数千人に増えており、その多くは実際のワイナリーに属していると説明します。これは、特にハイエンドのアペラシオンからブドウを購入しようとする小さなネゴスにとって、多くの問題を引き起こします。

 

Harbour  はこう言います。「たとえば、Chassagne Montrachet  の所有者は、Corton Grand Cru  の所有者とブドウを交換することができ、そうすればどちらもそれぞれのワインをネゴシアンとして造ることができます。」ブルゴーニュは現在ドメーヌが所有するネゴシアンで溢れているとし、「この小さなエリアにますます多くのバイヤーがいるので、価格は上昇し続けています」と説明します。ブドウを物々交換できる人にとって価格は問題ではありません。購入しなければいけない小規模な人にとってはこの変化は有害です。

 

なぜブルゴーニュ?

Lamy  はこの地域のワインとライフスタイルを好みますが、他のエリアでネゴシアンとして働く方がより簡単だと感じています。「ここのワインのスタイルは、より飲みやすく、テンションと酸に重点が置かれています。これらのワインに飽きる事はありません」と彼は言い、この地域の恵まれたロケーション(パリ、ジュネーブ、リヨンから2時間)もプラスとして挙げています。

 

Harbour  のような外国からの参入者にとっては、ネゴシアン文化が強く、名声あるアペラシオンステータスのある場所を見つけることが重要でした。

 

「私たちは仕事を辞めてワイン造りに飛び込むという大きなリスクを取りました。なので、最初の年があまり良くないワインだとしても、ラベルにあるアペラシオン名で売る事が出来ると考えたのです。」と彼は言います。このビジネスプランは長期的には機能しませんが、馴染みのある(そして一流の)アペラシオン名がそれだけで売れるという彼の考えは正しいです。

 

「ブルゴーニュでワイン造りを始めた全ての人が成功したと誰かが私に言ったことがあります。これはおそらく真実で、これこそが私がこの地にこだわる理由です。」さらに  Harbour  はアペラシオン名により少なくとも初期投資のお金は取り返すことが出来るので、初期リスクは比較的低いという点を付け加えます。しかし、需要、価格、入手の難しさに関する懸念が高まっているため、(その正誤については)時が経たないと分かりません。

 

ブルゴーニュのネゴシアンの未来

これからも常にブルゴーニュの市場は存在するでしょうが、最終的に誰がこの地域を動かしていくのかについての答えは不明です。Harbour  は、豊富な資金力のあるより大きなネゴシアンが力を拡大し、小さなネゴシアンのビジネスは押し潰されてしまうのではないかと危惧しています。

 

「私たちのような小規模な者は、より大きなネゴシアンに絶えず圧迫され続けているので、この苦難から脱出するのは難しいです。しかし、ネゴシアン業も手掛けるドメーヌの場合、彼ら自身が価格をつけてブドウをやり取りできるという強みがあるので、続けていくことが出来るでしょう。」と彼は言います。

 

では未来に向けての最適な答えは?自分のブドウ畑を購入し、ワイナリーで瓶詰、その傍らでネゴシアン業を手掛けるのが良いでしょう。「私たちにとって、これからの未来を確信する唯一の方法はブドウ畑を購入することです。そうすれば果実の物々交換が出来るようになります。しかし、畑の価格は非常に高くなっているので、それが出来るのは一部の超富裕層のみです。」と  Harbour  は言います。

 

この答えを教えてくれるのはどうやら時間とお金だけのようです。

 

 

引用元:  https://www.wine-searcher.com/m/2021/12/the-trials-of-the-burgundy-negociant

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