カリフォルニアに最新の、そして最もビーチに近いAVAが誕生し、生産者達は活気付いています。
“SLO Coast”とはなんと素晴らしい響きでしょう。頭文字をとったものですが、このエリアの生活様式やブドウの成熟期を映し出しているようです。先日、この地では例外的なほどに”クール”な新しいアペラシオンが誕生しました。
米国政府は3月頭、San Luis Obispo Coast AVAを新たに承認し、異例なことにSLO Coastという愛称を正式なAVA名としてワインボトルに使用することも直ちに許可しました。
この新しいAVAの申請書を書いたAaron Jacksonによると、申請の過程で気象観測所から集めたデータを参照したところ、カリフォルニア大学Davis校が用いるブドウ生育期における日々の温度測定システムに基づいた場合、SLO CoastはカリフォルニアのAVAの中で最も気温が低いことが分かったと言います。
「この地域の90%以上が海から6マイル(=約10km)以内にあります」
Paso RoblesのAequorea Winesのオーナー・ワインメーカーであるJacksonはこう言います。「ほとんどのAVAでは、このような事を謳うことができません。Sta Rita Hillsであっても、ブドウ畑が始まるのは、海から約10マイル(約16km)先です」
Paso Robles AVAもSan Luis Obispo County内にありますが、このAVAは暑いことで有名な州内で最も暖かい高級ワイン産地です。しかし、Paso Roblesは海岸沿いでなく群の北部にあり、群の南部とは気象条件が大きく異なります。
有名なハースト・キャッスルに近いCambria周辺のブドウ畑では、このことが長らくの問題でした。海岸沿いで冷涼なエリアにも関わらず、SLO Coast AVAが承認されるまでは、ラベルに記載できるAVAの選択肢が、大量生産ワインの受け皿となりがちなCentral Coastか、暑いPaso Roblesのせいで実際とは異なる印象を持たれていたSan Luis Obispo Countyの2つしかなかったからです。
新しいSLO Coast AVAは既に存在するEdna ValleyとArroyo Grande Valleyという2つのAVAも包括しています。Edna Valleyは、皮肉にも今ではほとんどが地域外のブドウから造られたワインブランドのおかげでそれなりに有名ですが、Arroyo Grande Valleyは誤ったイメージを持たれがちという問題を抱えていました。
「皆ここを暖かいエリアだと思っていたんです」
Arroyo Grande Valleyにワイナリーを構えるTalley Vineyardsの社長、Brian Talleyはこう言います。「しかし、San Luis Obispoの知名度は上がってきており、この名前を認識する人は増えてきています。新しいAVA名に“コースト”という言葉を取り入れたのは重要な事だったと思います」
Talleyは、AVAが承認されたことで、これまでArroyo Grande Valleyにある自社畑のブドウだけを使用していたエステート・シャルドネの造り方が変わると話します。これからは、さらに冷涼なEdna Valleyの畑のシャルドネを加えて、より酸味とフレッシュさを加えたワインをSLO Coastと名乗ってリリースできるようになるのです。
オン・ザ・ビーチ
新しいSLO Coast AVAは、北はロス・パドレス国有林、東はサンタルチア山脈、南はサンタ・マリア・ヴァレーに囲まれています。西側は太平洋に面しており、面積は750平方マイル(約20万ha)と広大で、現在78のブドウ畑が6.2平方マイル(約1600ha)に植えられています。50以上のワイナリーがこの地域のブドウを購入しており、ブドウ栽培協会には32の会員がいます。
「この地はまさに海岸沿いのAVAです」
そう言うとJacksonはさらにこう続けます。「“沿岸”と“沿岸からの影響を受ける”では大きな違いがあります。私たちのAVAはカリフォルニアで最も沿岸に位置するという重要性を持っています。ビーチにいながら数分でワインの国に行ける、それは全米でもそう多くのAVAが特徴として持っているものではありません。本当にユニークであり、イタリアやカナリア諸島、タスマニアなどの特別なアペラシオンと同じような位置づけになるでしょう」
このAVAでは、シャルドネ(43%)とピノ・ノワール(35%)が栽培の大部分を占めています。
Vintners Associationの会長を務めるSteve Dooleyは「グリューナー・フェルトリーナーやアルバリーニョ、ソーヴィニヨン・ブランといった冷涼地域の品種でも良い結果が出ています」と話します。
彼はSteven Ross Wineryのオーナー兼ワインメーカーでもあり、新AVA認定が発表された直後の水曜日午前9時にラジオに出演していたそうです。そこで彼はこう語りました。
「私たちはその時Steven Ross San Luis Obispo Coast / 2019 Blancs de Noirを飲んでいました。ラベルの承認が下りるまで待たされましたが、やっとそのワインでお祝いする事が出来たのです!」
引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/03/californias-newest-ava-a-slo-grower
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
文責はFiradisに帰属します。