ボルドーからブルゴーニュ、ロワールからラングドックまで、フランスの生産者は天候不順に苦しんでいます。
毎年、母なる自然と戦わなければならず、ブドウ栽培者たちはブドウ畑の状況を悲観的に見ています。こういった状況を考慮した上でも、フランスの2024年シーズンの始まりは、多くのワイン産地で理想的なものではなかったようです。
すでにカオール、ジュラ、ベルジュラック、シャブリは、大きな霜や雹に見舞われています。特にカオールは、この地域の2024年収穫の約80%が4月末の霜害で減少する見込みです。
「霜はカオールのアペラシオンのブドウ畑の存続を脅かしている」と、フランス国民議会で地元の代議士Aurélien Pradié は述べました。
この話はジュラ地方でも同じで、シャトー・シャロン「では、Domaine Berthet-Bondetの Hélène Berthet-Bondetが地元紙『La Voix du Jura 』の取材に対し、「全体で収穫の70%を失った」と語りました。
ポリニーの Domaine Noir FrèresのJean-Yves Noirは、「11haのうち、8haを失いました。残りの3haは6割が被害を受けた」と話しています。
そうです、この地域のワイン生産者たちは、今後自分たちの職業を続けていけるのかと疑問を抱き始めているのです。
「8年間で4回の霜害を経験し、その犠牲が出始めている」と、Serge Castel 地方県知事は、この地方のワインと果実生産者の集まりで語りました。
西の方では、ボジョレーとブルゴーニュで比較的早く生育期が始まったにもかかわらず、大雨が降ったためブドウ畑の生育が遅れており、ボルドーと同じくベト病の脅威が始まっています。
オーガニック栽培団体AgriBio Rhône et Loireの Brieg Clodoréは、ワインニュースサイト『Vitisphere.com』でこう語りました。「2~3日間に30~40mm以上の雨が降り、散布期間は非常に短かった。継続的に葉にベト病の斑点が見られるようになった。もちろんベト病については、大雨の後に猛暑になるのが理想です」。
問題を引き起こしているのは葉についた水分だけではありません。ブドウ畑がぬかるんでいるため、トラクターがブドウ畑に入ることができず、ベト病に対する薬剤散布が困難になっているのです。「先週は、トラクターが入れなかったので、30haを背負い式噴霧器で散布しなければなりませんでした」と、あるボジョレーのワイン生産者は『Vitisphere』に述べました。
黒腐病(ブドウの木に発生する別のカビ感染症)の発生の可能性さえ指摘する生産者がいる一方で、もっと前向きな姿勢の生産者もいます。
「ここ数年はそうではありませんでしたが、地中に水を蓄えた状態で夏を迎えています」とBrieg Clodoréは言います。
ブルゴーニュの北でも似たようなことが起きています。特にマコネでは雨の多い天候でトラクターでの作業が阻まれています。コート・ドールでは、雑草が旺盛で頭痛の種になっていると言う者もいます。
ブルゴーニュ地方が雷雨に見舞われた時、雹が降ったのはディジョンの町の中だけだったようです。しかし、この地方ではカビの報告も上がっています。
さらに北のシャブリでは、天候が生産者を苛立たせ続けています。4月には破壊的な雹の嵐がこの地域を襲い、シャブリの町のすぐ北に大きな被害をもたらしたと広く報じられています。
「3つの村が特に大きな打撃を受けました。フォントネ・プレ・シャブリ、ヴィリー、シャペル・ヴォペルティーニュです」とDomaine Seguinot-BordeのJean-François Bordet は言います。「そこでは、ほとんど全てのブドウ木が壊滅的で、100%やられました」。
産地の人々が雹害を訴え続ける一方で、病害の圧力は衰えていません。
ヨンヌ(シャブリ地方)農業会議所のAudrey Cellierは、『Vitisphere.com』に「病害の脅威は前シーズンよりずっと早く現れ、4月初めにスプレー散布を開始したところもある」と語りました。
しかし、コート・ドールではベト病の斑点が見られるものの、Maison Louis Latour のChristophe Deolaは、「現段階では全てコントロールされている」と語っています。
ダメージ・コントロール
北の方では、5月中旬にシャンパーニュ地方で報告された激しい雹の嵐による被害が数値化されたようです。この暴風雨により、エーヌ県では約200haのブドウ畑が被害を受けたと報告されています(この地域のブドウ畑総面積の約0.6%に相当)。
それ以来、この地方のワイン業界団体であるCIVCは、より具体的な評価を発表しています。同団体は、4~500haが被害を受け、この地域の収量は70%減少したと推定しています。
さらにCIVCは、4月の霜も2024年の収量に多少の影響を与えるだろうとしています。
「CIVCは、シャンパーニュ全域で9%の最初の萌芽が失われたと推定している」と、ローカル紙『l‘Union』は伝えました。「これは、シャンパーニュ地方のブドウ畑の30%が霜に覆われた2021年(大々的に報道された一連の大規模な霜害の年―)よりもかなり少ないです」。
一方、フランス西部のミュスカデの地域は、前例のない困難に直面しています。『Vitisphere』は先週、異常な寒さがこの地域のブドウ木に 「フィラージュ 」と呼ばれる開花中止の現象を促したと報じました。この現象は、ブドウの実をつけるはずの新梢が普通の蔓になってしまうというもので、この現象が蔓延すれば、収穫量に大きな影響を与えることになります。
ペイ・ド・ラ・ロワール農業会議所のブドウ栽培アドバイザーであるFlorent Banctelは、「我々は、特にムロン・ド・ブルゴーニュ(この地域を代表する品種ミュスカデ)で、かなりの量のフィラージュに直面している」と言います。「このところの低温を、ブドウ木は1ヶ月間耐えながら生長していました。ブドウ木が生育を続けるために、自ら房を犠牲にすることを選んだのです」。
「今後を推測するのは難しい」と彼は言います。「このようなことは初めてです。潜在的な収量を考えると、かなり心配だ」。
「ナント郊外にある Domaine de la FolietteのEric Vincentは、「かなりの損失が出るだろう。しかし、どのように推測すればいいのかわからない。房の数を数えるべきだろうが、スプレー散布で忙しいのでできない」と言っています。
ここでもベト病が産地を脅かしていますが、今のところコントロールされているようです。
さらに南へ行くと、ボルドーで再びベト病の再発が報告されています。現在のところ、昨年のような被害は報告されていないが、昨年のベト病の被害がまさにこの地域に対応を促しています。
「今のところ、“ベト病”の攻撃は“2023年”ほど酷くははないが、特に広がり方が早い」と地元ラジオ局『France Bleu Gironde』は述べています。「感染広がりは、特にリブルヌとサンテミリオンの周辺に集中しているようだ」ということです。
実際、ベト病の脅威が早い時期にやってきたことは、2024年の収穫の注目すべき要因のひとつです。サンテミリオンに早くから訪れたこの脅威は、ある生産者に 「完全に狂っている 」と言わしめました。
「私たちは天気予報アプリを凝視し、降雨量を監視し、スプレー散布の時を模索しました」と、Château Belle-Nauve のNathalie Châtonnet-Castan はラジオ局にこう語りました。「私たちは”散布”の時期について話し合っていますが、今のところ、検討がつきません。わずか2時間でやらないといけない時もあるのです」。
先頃、リムー地方は雹の嵐に見舞われました。暴風雨はリムーの町のすぐ北の回廊を切り裂きました。
「葉がなくなり、房がなくなり、新梢は10cmに切り戻された」と、地元のブドウ栽培コンサルタントのGiacomo Pinnaは言います。「まるで生産者が生垣バリカンで刈り取ってしまったかのようだ」。
このアペラシオン全体で被害が広がっているわけではないが、すぐ東のコルビエール西部では、数回の雹の嵐に見舞われ、およそ1000haのブドウ畑が全滅に近い被害を受けたと報じられています。
しかし、コルシカ島に関しては良いニュースがあります。今のところ、雹や悪天候、本土で見られるベト病の被害(全てではないが)を免れています。
コルシカワイン研究センター(CRVI)の所長Nathalie Usciddaは、Vitisphere.comに対し、「全体的に、ブドウ木の生育は2023年ヴィンテージより8~10日進んでいる」と語りました。
引用元:Bad Weather Hammers French Vineyards
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