今後数週間で災害が発生しない限り、カリフォルニアはまたしても豊作な収穫を迎えるでしょう。
カリフォルニアのワイン用ブドウの収穫が進む中、最大の懸念点は母なる自然の気まぐれです。ですが、もし雨や猛暑、森林火災を免れたとしても、市場には別の疑問が残ります。今年は畑にどれだけのブドウが残されるのでしょうか?
こう考えてみましょう。今年はブドウ栽培家兼ワインメーカーにとっては最高の年です。自分でブドウを収穫する意欲があれば、これまでにないほどの選択肢が広がっています。評判の高いブドウ畑でも、少量のブドウのみ売るかもしれません。
「今年は収穫されないブドウが確実にでてくるでしょう」
そう話すのはAllied Grape Growersの社長であるJeff Bitterです。「特に2つのタイプのブドウです。内陸部で手摘みされるブドウ、例えばローダイの株仕立てのジンファンデルとか。ジンファンデルの市場は現在非常に弱く、収穫や運搬の費用を賄うほどの収益が得られません。多くの株仕立てのジンファンデルは今年収穫されず畑に残されるでしょう。もう1つのカテゴリーは、沿岸部の赤ワイン用ブドウ全般です。収穫が少なければ問題ないかもしれませんが、そうでなければ沿岸部の赤ワイン用ブドウは畑に残されるでしょう。現在、コストを下回る価格で取引されているブドウもあります。」
では品質はどうでしょうか?今年のカリフォルニアの夏は例年よりも暖かく、7月には長期的な暑さが続きましたが、極端な熱波はありませんでした。
「私たちの畑では40~40.5度を記録しました」
そう話すのは高地に位置するエル・ドラド郡のLava Capのワインメーカー、Nolan Jonesです。「今年は私が経験した中で最も暑かった2022年9月と同じくらい暑かったです。標高823mに位置する私たちの畑では、通常38度を超えることは滅多にありません。35度を超えると非常に暑いと感じますが、今年は40~40.5度という暑さがヴェレゾン前に起こりました。」
こんな条件に良く適した品種は何でしょうか?答えはジンファンデルです。
「収穫は9月第一週から始まり、今朝は9トンのジンファンデルが収穫されました。Zinbambow! これは(ジンファンデルにとって)驚くべきヴィンテージです。記録に残るヴィンテージになると確信しています。」
ソノマ郡にあるJ. Rickards Wineryのオーナー、Jim Rickardsはこのように話します。
ブドウ栽培家は通常、トン単位で報酬を得るため、収穫量が少ない年を望むことはありません。しかし、業界全体としてはその方が良いかもしれません。これまでのところ、カリフォルニアの1エーカーあたりの収穫量は平均的な年になるようですが、全体の収穫量が減った場合、それは収穫されないブドウが原因です。
「ソーヴィニヨン・ブランの収穫は全て終わりました。品質は問題ありません」
Napa Valley GrapegrowersとSilverado Farmingの社長であるPete Richmondはこう語ります。「夏の暑さで収穫量が減るのではないかと心配していましたが、ソーヴィニヨン・ブランの収穫量は維持されています。品質は良さそうです。量については、大量の収穫を今は求めていない状況です。」
収穫が加速
ナパ・ヴァレーはカリフォルニアの中で唯一、全てのブドウが収穫される地域かもしれません。隣接するソノマ郡では、北米で2番目に評価の高いワイン地域として知られていますが、今年は大手のブドウ畑がコスト削減のために一部耕作放棄されているという噂が飛び交っています。
「ブドウの供給についての噂は聞いていますが、収穫が進んだ後で様子を見てみます」と、Ram’s Gateのジェネラルマネージャー兼ワインメーカーのJoe Nielsenは話します。「現在、収穫は25%まで進んでいます。我々はソノマ全体に広がるブドウ畑で作業を進めていますが、今のところ収穫した果実は美味しいです。ピノ・ノワールに関しては、最適な熟度に達しており、果実の凝縮感がありながら、良い酸味も維持しています。」
カリフォルニアの多くの地域は7月に暑さに見舞われましたが、Nielsenを含む複数のワインメーカーは“暑さが成長期の早い段階で起こり、ブドウ樹は徐々に回復した”と話しています。
「夏の間ずっと暖かかったですが、ここはソノマなので、10度の涼しい夜が続いています。今日も日中と夜間の気温差は22度を超えました。私は中西部出身なので、この涼しい夜は特に有難く感じています。」
多くのワインメーカーが、今年の収穫が例年よりも速く進んでいることを指摘しています。ソノマ郡のMunselle VineyardsのBret Munselleは、例年より遅かった2023年の収穫開始日の2日前にはすべての白ブドウの収穫を終える予定だと話します。
もし冷え込みや雨がなければ -いずれも現在の予報にはありませんが- これは良いニュースかもしれません。なぜなら、森林火災が起こる前にほとんどのブドウがタンクに入る可能性があるからです。
「10月の第2週以降も収穫が続いているとしたら驚きです」とLava CapのJonesは言います。
Jeff Bitterによると、2023年は高く評価されましたが、今年より収穫が大変だったと話します。「前年に比べ、今年は腐敗やカビによる障害が多くはありませんでした。昨年はそういった問題が多くありましたが、今年は成長期としては比較的楽な年でした。ワインの品質の観点では、今年は酸度が急速に落ちているのが特徴です。」
エル・ドラド郡のMadroña Vineyardsのオーナー兼ワインメーカー、Paul Bushは、自身のブドウのpH値は良好ですが、総酸度が低いという科学的不一致があると話します。これはワインが実際よりもフレッシュに感じられない可能性があることを意味します。
「ワイナリーを訪問する顧客から ”収穫時のブドウの糖度(Brix)は何度ですか?” とよく聞かれますが、私にとって重要なのはBrixではなくpH値です。pHが急上昇し始めると、ブドウは熟しすぎている領域に入ります(補足:pH値は低いほど酸性、高いほどアルカリ性を示す)。ここはカリフォルニアなので、酸は多少調整できますが、pHの調整は容易ではありません。グラスの中で感じるワインの最終的な仕上がりですが、少し厚みのあるテクスチャーのバランスの良いワインになることを期待しています。赤ワインの場合は、包み込まれるような大らかな仕上がりを予想しており、白ワインにはもう少し酸味があるでしょう。」
通常、この時点では「ブドウが蔵に運ばれるまでは何が起こるか分からない」との免責事項を筆者サイドで付け加える必要がありますが、今回はMadroña VineyardsのBushがその役割を担ってくれました。
「あくまでこれは全て推測です。私に聞くべきなのは2006年のヴィンテージのことです。それなら良く知っていますよ。」
引用元:California Set for Another Classic Vintage
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