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シャンパーニュの収穫、慰めの冷涼さ

今年のシャンパーニュ地方は、天候不順によりブドウの収量が激減しました。


シャンパーニュの人たちがよく使う言葉のひとつに「ヴィンテージは続いていくが、似て非なるもの」という言い回しがあり、各年のヴィンテージはそれぞれ異なることを意味しています。しかし、2024年と2023年ほど正反対のヴィンテージも珍しいです。

 

昨年の収穫を一言で表すと、莫大な収量、莫大な房の重量、莫大な腐敗問題、そして不運にも莫大な不祥事を引き起こした莫大な労働条件違反でした。今年はもっと控えめで、今のところ昨年の反意語である「ちっぽけ」で表現できるかもしれません。しかし、シャンパーニュ委員会(CIVC)の品質およびサステイナブル開発ディレクターであるSébastien Dubuissonが選んだ言葉は、「不均質」です。

 

実際、収量(ブドウの木に実際にどれだけのブドウが実っているか)は区画によって、さらには畑によって大きく異なります。潜在的なアルコール度数(成熟度)、収穫日、収穫期間についても同様です。このようなバリエーションの多さの理由は、2024年の不安定で複雑な天候にあります。

 

共通項があるとすれば、昨年10月から降り続いた雨です。しかし、降水パターンは地域によって大きく異なり、アペラシオン南部のオーブ県と西部のエーヌ県が最も雨に見舞われました。

 

オーブ県では開花前に年間平均降水量に達し、開花から収穫までの間にほぼ同量の雨が降りました。9月頭からの10日間で、100ml近い雨がオーボワの収穫者を濡らしました。DuBuissonによれば、これが房の重量に良い影響を与えたということですが、Champagne Etienne Sandrinのようにあまり納得していない生産者もいます。

 

「房に数粒しか実が残っていないのであれば、これ以上雨が降っても量的な違いが出るとは思えません」とDuBuissonは言います。オーブのように霜、雨、ベト病、雹、そして日焼けまで、すべての小地区が同じようにさらされているわけではないのですが、このDubuissonの結論はシャンパーニュの他の地域にも当てはまるでしょう。

 

オーブ地方の生育期は始まる前から絶望的で、 4月22日の夜、オーブ地方の大部分は深刻な霜害に見舞われました。Champagne Drappierのマネージング・ディレクター、Michel Drappierは、バール・シュール・オーブとバール・シュール・セーヌの両地区は、「モスクワ-パリ間シベリア氷河特急(非常に高速で進路上のすべてを凍結させた)」によって大打撃を受けたと語りました。この黒い霜害は、その日の夕方に降った雨によってさらに悪化し、被害は甚大でした。

 

『L’Est Éclair』紙によれば、「雨はおよそ2日おきに降った」というひどい雨の生育期は、ベト病の理想的な発生条件を作り出し、ベト病は野火のように広がり、霜で弱ったブドウ木に繁殖しました。春から夏にかけては、局地的な雹の嵐に見舞われ、残っていたブドウが壊滅するケースもありました。また、8月末にこの地域を襲ったごく短期間の熱波のために、いくつかのブドウは萎んでしまいました。

 

莫大な損失

これら全てが莫大な損失をもたらしました。Champagne Fleury のJean-Sébastien Fleuryは、同社の収穫の95%を失ったと説明しました。

 

「わずか2日間で10haを収穫しましたが、非常に小さな収穫チームで、プレス機も数台しか使いませんでした。」

 

収穫チームとプレス機は、同じ境遇にある近隣のドメーヌのChampagne Robert Barbichonと共有することになりました。Thomas Barbichonによると、このドメーヌはプレスセンターを開かず、Champagne Fleuryでプレスすることを選択しました。9haのブドウ畑を所有しているにもかかわらず、Champagne Robert Barbichonが他の場所でプレスするという選択をしたのは、この8年間で3度目です。このことは、オーボワが直面している困難を明確に示しています。公的機関や報道機関の注目はマルヌ県に集中していて、オーボワはあまり注目されません。

 

とはいえ、マルヌ県もそれほどバラ色ではありません。ほとんどの産地がベト病に甚大な被害を受け、50%もの損失は例外ではなく、むしろ一般的です。さらに、灰色カビ病がいくつか発生していますが、今のところほとんどのアペラシオンで寒波がそれらを抑えています。例外は南部のセザンヌで、ここもオーブと同様、9月初めから雨に見舞われています。この過度の雨は、この地域の灰色カビ病の発生を加速させ、成熟を妨げ、場合によっては潜在的なアルコール度数にさえ悪影響を及ぼしています。

 

さらに、この小地区では主にシャルドネが栽培されており、この品種はシャンパーニュ全域で成熟に苦労しています。CIVCが発表した最新の公式成熟統計によると、9月12日のシャルドネの平均潜在アルコール度数は8.5%で、9月5日から1.1%上昇しました。しかし、これはCIVCが予測した1日あたり0.2%の熟成曲線がやや楽観的であったことを意味しており、さらなる腐敗の進行を心配する生産者は収穫を開始することを切望しています。

 

それでも、Cahier des Charges(アペラシオンの規則書)によれば、ブドウは最低9%の潜在アルコールに達する必要があり、CIVCはシャルドネとピノ・ノワールを10.5%、ムニエを10%の潜在アルコールで収穫するよう要請していました。Dubuissionによると、当初はこれらの潜在アルコール度数は最適なものだったのですが、9月13日までに彼はこの理想を撤回し、潜在アルコール度数を9.5%から10%の間まで引き下げました。
現在の冷涼な気象条件と遅い成熟サイクルからすると、おそらくより現実的な数字でしょう。しかし、現在の潜在アルコール度数からは、この数字までもまだ遠い状況です。

 

リザーヴ(Réserve individuelle、RI)は、いくつかの理由から、今年は微妙な問題となっています。理論的には、この制度はアペラシオンに利益をもたらすはずです。というのも、2024年に10,000kg/haに設定された商業収量(来年瓶詰めできる収量)に達するまで、不足する収量を補うことができるからです。しかし、昨年、腐敗が多発した年にRIを8000kg/haから10000kg/haに拡大したことで、RIの品質が部分的に損なわれているのです。

 

公式見解として、アペラシオンのRIの10%は、品質水準を満たしていないためタンクレベルで取り除く必要があります。さらに20%はクリーンではないため、理想的には交換されるべきですが、非常に良いワインとブレンドされれば、おそらく合格するでしょう。つまり、メゾン、協同組合、生産者がRIをどのように管理するかによって、今年生産されるシャンパーニュの大半を占めるノン・ヴィンテージワインの品質に大きな影響を与えることになります。

 

さらに心配なのは、DrappierやRoederer のような品質重視のメゾンの多くが、昨年のあまり品質の良くないワインはすべて「売却」したと言っていることです。これは、他のメゾンが購入し、このワインがシャンパーニュのアペラシオンで流通していることを意味するのです。ノン・ヴィンテージの不振が主因となっている今年の売上急落を考えると、これはアペラシオンにとって良いニュースではありません。この不振の理由のひとつは、消費者がシャンパーニュ・ブランドにより高い品質を期待していることを示しています。

 

RIが、ワインの生産とメゾンへのブドウ販売の両方を行う多くの生産者にとって微妙な問題であるもう一つの理由は、2022年に変更されたRIの規定がマイナスに働くことです。これは、生産者がRIを全て使用しても商業アペラシオンの規定量を満たさない場合、次年度以降、メゾンや協同組合にその差を補填する義務があることを意味します。複数のワインブローカーによると、この制度は特にオーブ地方で問題があり、それは商業的な収量を達成するのが難しく、マルヌ地方よりも蓄えが少ないからだということです。この信用システムは、メゾンや協同組合にとっては有効ですが、ブドウ栽培を行う生産者が自身のRIを築くことを妨げ、最終的にはワイン造りを断念せざるを得なくなるのです。

 

今年のシャンパーニュの収穫を一言で表現するのは時期尚早だとしても、Dubuissonの「不均質」という言葉は正しいかもしれません。「ちっぽけ」も候補のひとつです。200kg/haから20,000kg/haまで、収量に関する予測はいくらでもありますが、冷涼な今年の収穫期において、このような負荷を背負ったブドウ木が最低限必要なアルコール度数に達することはないでしょう。最終的に、全体を見ると、今年の収量は昨年の半分以下になると言ったところです。

 

ブドウの品種や村による成熟速度の違いを考慮して、正式な収穫開始日は9月7日から24日の間と異なります。昨年も潜在アルコール度数はあまり高くなかったが、今年はさらに低くなる可能性が高いです。これまでのところ、収穫時の気温は低く、氷点下ぎりぎりの朝もありました。

 

極小か不均質か、いずれにせよ、今年も難しい収穫になることは否定できず、残念ながら偉大なワインはできないでしょう、たとえ最終的なワインがクリーンで満足のいくものであったとしても。

 

引用元:Cold Comfort for Champagne Harvest

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