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シャンパーニュ、コルク下で熟成

シャンパーニュは伝統的に王冠の下で二次発酵を行いますが、現在ではコルクを使用する生産者もおり、素晴らしい結果を出しています。


シュール・リー熟成はシャンパーニュの生産において不可欠な手法ですが、その方法により様々なニュアンスが生み出されます。

 

最近、多くのシャンパーニュ生産者が、王冠の下での二次発酵・熟成を避け、コルク栓に置き換え始めています。多くの生産者にとってコストと労力がかかるものですが、コルクを使用するという決断は、先行投資が必要としてもそれだけの価値があるのです。

 

コルクの下でシャンパーニュを熟成させること、そしてそれが最終的なワインにどのような影響を与えるかについて、3人の生産者に話を聞きました。

 

マイクロ・オキシジェネーションの利点

リュドに本拠地を構える Domaine Les Monts Fournoisのワインメーカー、Juliette Alpisは、まだリリースされていない自社シャンパーニュの最初のワインをコルク下で熟成させることにしました。従姉妹のドメーヌであるChampagne Bérèche et Filsの影響で、彼らが何世代にもわたってこの方法を実践してきたからです。

 

「コルク栓をすることで、空気中とボトル内のワインの間で、酸素の微小な交換が可能になります」と彼女は説明し、ワインの熟成期間中に起こる化学反応は、酸素に触れずに熟成させたボトルとは大きく異なると述べます。Alpisは、このような酸素との微小な接触による作用が、最終的に、よりアロマティックで複雑なシャンパーニュ、そしてより小さなきめ細かい泡を生み出すことを見出しました。

 

キュイルに本拠を置くChampagne Moussé FilsのワインメーカーCédric Mousséもこの点に言及し、コルク熟成による二酸化炭素の発生量は、王冠の場合とは明らかに異なり、しかもそれは時間とともに変化するものだと強調します。

 

「コルクは最初のうちは非常に柔らかいので、より多くの二酸化炭素が発生します」とMoussé は説明します。時間が経つにつれて、コルクはより木に近くなり、最終的にはクラウンキャップよりもしっかりと閉められるようになります。「クラウンキャップの場合、(最小限の)ガスの発生具合は常に同じです」。

 

マイクロ・オキシジェネーションの長期化

Alpisのように瓶詰め前に樽でワインを醸造する造り手にとって、コルクの下でワインを熟成させることは、醸造と熟成の全過程を通じて、より一貫した酸素との交流作用を生み出すことになります。

 

Domaine Les Monts Fournoisのマストはすべて樽(450Lまたは600L)で発酵させ、初期段階からワインと酸素の相互作用を促します。「こうすることで早い段階から、ワインは酸素と共存し交流することを学ぶのです」と彼女は言い、コルクの下で熟成させる行為は、醸造プロセスにおける「論理的な継続」であると定義します。

 

「直線的で安定した醸造を行うことは私にとって重要です」と彼女は言い、コルク下での熟成がもたらす一貫性を強調します。「私の願いは、ワインが熟成条件や温度で“激しい”ジャンプをしないことです」と彼女は言い、穏やかで安定した環境がワインにとってより良いものだと断言します。

 

さらなる労力とコスト

しかし、長時間の労働と消耗品の使用はワインの価格を釣り上げます。ワインメーカーのEtienne Calsac(リュドにある自身の名を冠したドメーヌの醸造家)は、通常のシャンパーニュの生産コストは、通常のワインよりもすでに高く、さらに王冠ではなくコルクを使用することで発生する追加コストも考慮しなければならないと繰り返します。

 

「さらに、醸造のこの段階でコルクからの汚染がないように、最高品質のコルクを使用する必要があります」と彼は言います。TCAに関しては、コルクメーカーは最近、Amorim社のNDTechスクリーニングを使ってTCAの痕跡を識別できるようになったので、リスクは非常に低いとAlpisは述べます。

 

Mousséは、コルク下熟成の製造コストは、使用するコルクにもよるが、一般的にボトル1本あたり€ 2~3の費用追加になると指摘します。「王冠で栓をしたボトルのデゴルジュマンは機械化できますが、コルク下熟成のボトルは手作業で1本1本デゴルジュマンをしなければなりません」とAlpisは説明します。

 

機械では、1時間に1400本もデゴルジュマンができますが、手作業では400本しかできません。「もちろん、この手作業によるデゴルジュマンには時間がかかり、コストもかかりますが、品質向上的にはそれだけの価値があります」とCalsacは言います。

 

Alpisと同様、Moussé も手作業でデゴルジュマンする場合、機械で行う場合の4倍時間がかかるがそれに値すると述べます。

 

「1本1本のボトルに触れ、1本1本の泡を味わう喜び。最高だ!」

 

コルク下で得られる時間

コルク下での熟成には、さらなる労力と費用がかかるが、結果的に時間の節約にもなります。

 

「伝統的に、コルク下での熟成は、7〜8年くらいもしくはそれ以上の長期熟成を目的としたヴィンテージ・シャンパーニュにのみ行われることが多い。しかし、私は2年や3年といった比較的短い熟成期間のものにコルクを使います」と、Calsacは言います。「若いワインの “イースト”的なニュアンスを消す」には、最初の数年間の酸素との強い交流が有効で、その結果、より短期間のうちにクリーンなアロマが得られると説明します。

 

「何度も試した結果、私の Clos des Maladries のキュヴェを王冠の下で4年間熟成させても、コルクの下で(より短い期間)熟成させたときと変わらないことがわかりました。熟成期間が短くても、同様に私が求めているものが得られるのです」と彼は言います。また、コルク熟成はワインをよりクリーミーにし、より親しみやすくもすると付け加えました。

 

同様にMoussé は、二次発酵の期間に酸素濃度を高くすることで、最終的なワインの完成度が高まり(多くの場合、残糖が少なくなる)、長期熟成もできるようになると考えています。

 

Alpisは、シャンパーニュにおけるアロマの複雑さは、コルクの下で熟成させたものと王冠の下で熟成させたものでは異なり、コルクの方がより親しみやすさのあるワインになると指摘します。「長期間のシュール・リー熟成を行った後の還元香は、コルク下での熟成の方が目立ちません」と彼女は言います。そして、きめ細かく繊細な泡になると付け加えます。

 

さらに、Alpisは、デゴルジュマン後、市場に出る前に新しいコルク栓(「出荷用コルク」)が使用されると教えてくれました。そして驚くことに、シャンパーニュがコルク栓の下で熟成されたかどうかは、栓を開けたときに実際にわかるのです。「その場合、ボトルには隆起した四角い跡があるのです。“コルクを固定するため”に金具で留めるためです」と彼女は説明します。

 

何よりも、この方法によってもたらされた品質と複雑性がその効果を物語っており、Mousséは「コルクの下で熟成されたシャンパーニュは、よりフレッシュで緊張感があり、熟成の可能性も高いワインになります。」とまとめています。

 

引用元:Champagne Goes Under Cork

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