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バローロ 2021ヴィンテージ:3度目の正直

イタリアに強いワイン・ジャーナリストであるTom Hylandが、この記事を通し素晴らしい2021ヴィンテージのバローロについて深堀りします。


4年前、バローロ地区を訪れた際、何人かの生産者が今後リリースされる素晴らしい3つのヴィンテージ──2019、2020、そして2021──について興奮気味に語ってくれました。気候変動によりこの地域では20~30年前に比べてぶどうの熟成がより均一になっているとはいえ、3年連続で見事なヴィンテージが実現するというのは前代未聞のことです。

 

2023年にリリースされた2019年のバローロは、力強く、品種特性に優れ、20年以上熟成できる構造を備えたワインでした。2020年は、味わいはより軽やかですが、同様に特別な年であることに変わりはありません。親しみやすいワインが多く生まれたヴィンテージで、ピークは多くの場合15〜20年後。記憶に新しいヴィンテージの中でも調和が取れており、魅力にあふれていました。

 

では、2021年のバローロはどれほど素晴らしいのでしょうか?
「2021年は5つ星のヴィンテージだと考えています。ぶどうは完璧な酸を保った状態でセラーに届きましたから。」そう語るのは Michele Chiarloの醸造家、Stefano Chiarloです。
アルバに居を構えるPio Cesareのオーナー、Federica Boffaは、「2021ヴィンテージは、伝統と現代的な特徴が完璧に調和したものです。これは天候が非常に良好だったおかげです」と話します。

 

2021年についてバローロの生産者に話を聞くと、誰もがその年とワインを形容する際に最高級の賛辞を惜しみません。
「私が2021年で気に入っているのは、果実の凝縮感、ふくらみのあるミッドパレット、タンニンの質ですね。過去20年で最高のヴィンテージのひとつかもしれません」と、モンフォルテ・ダルバにあるPoderi Aldo ConternoのGiacomo Conterno は語ります。
「2021年は、バローロがなぜ長期熟成に耐えるかを人々に伝える素晴らしい機会になります。本当にクラシックなヴィンテージで、これから20年の間、バローロファンが楽しむことのできるワインになるでしょう。」

 

2021年のワインの品質は、生育期の恵まれた気象条件が大きく貢献しています。
「2021年には世界的に大きな困難(新型コロナウイルス)がありましたが、母なる自然は私たちに非常に恵まれた天候と驚くほどの品質を与えてくれました。ぶどうは健全で、構造に優れ、タンニンは強く、酸と糖のバランスも見事で、凝縮感も完璧でした」とPio CesareのBoffaは話します。「畑での健康状態が完璧だったおかげで、バローロとバルバレスコは非常に優れたものが造れました。」

 

カスティリオーネ・ファレットにあるViettiの醸造家、Eugenio Palumboによると、2021年の冬は山に多くの雨と雪が降ったので、とても良かったと振り返ります。「これは、春になって畑が成長を始めるときに、地中にしっかりと水があるということを意味します。これによりぶどうの房が完璧な状態で育つことができ、すべてがスムーズになるんです。」

 

さらに Palumbo は、2021年は生育期間が長く、“ネッビオーロにとって完全な熟成が得られた”と語ります。
「夏には極端な暑さや寒さもなく、近隣のロエロでは雹が降りましたが、バローロ地区では雹害もありませんでした。Vietti では収穫は9月末に始まり、10月15日ごろに終わっています。収穫が非常にコンパクトだったため、すべてのエリアでぶどうが完全に熟したのです。」

 

ラ・モッラ村にあるPoderi OdderoのCristina Odderoにとっても、天候はヴィンテージの優秀さに大きく寄与しました。
「2021年は素晴らしい年でした。春から収穫まで、季節は安定していて、極端な暑さや寒さ、大雨もありませんでした。雨はどの月も均等に降り、大きな気象イベントもありませんでした。2021年は収穫が遅かったのを覚えていますが、ネッビオーロにとって遅い収穫は良い条件です。房がしっかり熟し、タンニンもよく熟します。私は収穫が早い年よりも遅い年のほうが好きですね。収穫は10月頭の10日ほどで行われました。」

 

Oddero は、2021年を「テロワールのヴィンテージ」と表現します。つまり、ラ・モッラのワインはモンフォルテ・ダルバやカスティリオーネ・ファレット、ヴェルドゥーノといった他の村のワインとはっきり異なる個性を持っている、という意味です。

 

「2021年は、それぞれのクリュの個性をとても明確に表現してくれました。ひとつのクリュを別のものと間違えることはありません。それが、私たち生産者が2021年を愛している理由のひとつです。」彼女のこの意見に、Conternoも同意しています。

 

2021年と近年のヴィンテージとの比較

この10年間でバローロのヴィンテージで特に成功した年としては、2010年、2013年、2016年、2019年、2020年が挙げられますが、2021年はこれらのヴィンテージとどう比較されるでしょうか?

 

ViettiのPalumboは2019年と比較し、こう話します。
「2019年のほうがタンニンの質において、ややアグレッシブだったと思います。2021年はより熟したタンニンとなり、それは果皮だけでなく種から来るタンニンも含めてでした。こうした完全に熟したタンニンがあると、バランスや完璧さを得られるのです。」

 

同じ比較をして、Odderoはこう語ります。
「私は2021年のほうが好みですね。というのも、2019年は2021年より少し暑かったと思うからです。2021年のほうがクラシックなピエモンテ・スタイルでした。」

 

そしてConternoはこのように言います。
「2021年は2016年のクラシックスタイルと、2013年のとても魅力的なアロマのちょうど中間だと思います。2013年のアロマは本当に印象的でしたし、2016年は信じられないほど複雑な構造を持っていました。2010年と2013年はタンニンの構造が非常に優れていましたが、2016年はまた別の凝縮感がありました。ですが、2021年のアロマには、時に2013年を思い出させるような魅力があるんです。」

 

最後にもう少し、2021バローロへのコメントを見てみましょう。Boffa はこの年を「素晴らしい熟成ポテンシャルを秘めており、力強さと複雑さの間に完璧なバランスがある」と評します。そしてConterno は「2021年は華やかさに寄った典型的なヴィンテージですが、同時に驚くべきフレッシュさも保っていて、飲み手に圧倒的な喜びをもたらします。もちろん、まだ若いし、明日飲むためのヴィンテージではないですが、ポテンシャル、エネルギー、活力があり、そこが気に入っている点です。」

 

引用元:Barolo 2021: Third Time’s the Charm

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