イギリスは素晴らしいワインを数多く生産していますが、なぜ消費者への浸透がこれほどまでに難しいのでしょうか?
イングリッシュ・ワインが答えを出すべき大きな疑問が一つあります。それは、「価格が高すぎるのか」、それとも「単に過小評価されているだけなのか」ということです。
一人あたりのワイン消費量で世界第5位にランクインしていることからも、イギリスの消費者がワインと良好な関係を築いていることに疑いの余地はありません。しかし、ボトル1本あたりの平均小売価格がわずか7.07ポンドであることを考えると、日常的な買い物客はプレミアムワインよりも安価な「テーブルワイン」を強く支持しているように見えます。
その一方で、イギリス産ワインはこの平均価格を大きく上回っており、スティルワインは通常12〜15ポンド、スパークリングワインは平均32.47ポンドに達します。このことは、業界全体によくある疑問を投げかけています。イギリス産ワインは平均価格にもっと歩み寄るべきなのでしょうか、それとも消費者にもっとお金を使うよう促すべきなのでしょうか?
一見すると、価格を下げるのが明確な解決策のように思えます。もしイングランドやウェールズのワインが全国平均の7ポンドに近ければ、間違いなくより多くのボトルがスーパーの買い物かごに入るでしょう。しかし、現実はそれほど単純ではありません。イギリスの生産者にとって、価格を下げることは単に難しいだけでなく、ほとんど不可能に近いのです。
海外に目を向けると、その理由が見えてきます。
例えばアメリカでは、ワインの価格は同国の三層流通システム*によって形成されており、関与する業者の数が多いため、自然と小売価格が押し上げられます。アメリカの消費者は店頭でおよそ10〜15ドルでワインを購入できますが、熱心なワイン愛好家の多くは小売店を完全に介さず、オンラインやワイナリー直営ショップ(セラードア)で直接ワイナリーから購入しています。こうした取引によってボトル1本あたりの平均価格は約57ドルまで跳ね上がっており、価格の高さが必ずしもこだわりのある消費者を遠ざけるわけではないことを示しています。むしろ、高価格はしばしば品質と特別感の証となっています。
一方、フランス、イタリア、スペインのような伝統的なワイン生産国は、全く異なる経済環境の中で動いています。
これらの国々においてワインは日常生活の一部であり、何世紀にもわたる生産が巨大な規模の経済を生み出し、自国産ワインへの忠誠心を根付かせてきました。ブドウ畑は、より温暖で適した気候、地方における地価の安さ、そして生産コストを抑える確立されたインフラの恩恵を受けています。
さらに国内の消費者は地元のワインを買う傾向があるため、輸送費やマーケティングコストが削減され、生産者は利益を出しながら低価格で販売することができます。その結果として手頃な価格のワインが豊富に出回り、「良いワインは安くあるべきだ」という認識がさらに強化されています。
(*三層流通システム:生産者または輸入業者→卸売業者→飲食店を含む小売店)
重税という試練
しかしながら、イギリスは全く異なるゲームを戦っています。
イギリスでのワイン生産は、そもそもコストがかかります。ブドウ畑は、予測不可能な天候、高い人件費、そして生産の大半が集中するイングランド南部における高額な地価と戦わなければなりません。霜害対策、キャノピーマネジメント、病害対策には絶え間ない投資が必要となります。
イギリスの主力製品であるスパークリングワインでは、伝統的製法(トラディショナル方式)と長期熟成が求められるため、さらに多くの時間とリソースが必要となります。このような状況下で価格を下げるということは、利益率を持続不可能なレベルまで削ることを意味します。
加えて、税金がさらに状況を複雑にしています。イギリスの酒税は世界トップクラスの高さであり、関税と付加価値税(VAT)が最終小売価格の45%以上を占めています。生産者や小売業者が利益を得る前の段階で、ボトル価格の大部分がすでに政府に渡っているのです。20ポンドのイギリス産ワインの場合、VAT、物品税、さらにEPR(拡大生産者責任)によって、英国政府は少なくとも6.50ポンドを徴収します。しかも、これには法人税、事業税、雇用関連税などは含まれておらず、それらはいずれも今後さらに増加する見込みです。
こうした背景を考えると、イギリスのワイナリーに値下げを求めるのは、経済戦略というよりもむしろ財務的に実現不可能な要求に近いと言えます。
イギリス産ワインの低価格化が非現実的であるならば、必然的に代替案へと目が向きます。それは、消費者を巻き込み、より多くのお金を喜んで使うよう説得することです。しかし、生活費が高騰する現在、それは言うほど容易ではありません。イギリスのワイン愛好家はすでに世界で最も冒険心に富む消費者の一つであり、ヨーロッパ、南北アメリカ、南半球など世界中のワインを日常的に探求しています。この姿勢は、イギリスの消費者が伝統的・古典的なものに固執しているわけではないことを示しています。
したがって、教育こそが重要な主戦場となります。気候の課題、限られたブドウ畑の面積、税金、あるいは単に生産方法に起因するものであれ、なぜイギリス産ワインのボトルが15ポンドや30ポンドもするのかを消費者が理解したとき、その価格は納得できるものになり始めます。ブドウ畑のツアー、テイスティング、小売店スタッフの教育、そしてワインのSNS発信はすべて、消費者の認識を形成する上で役割を果たしています。消費者が学べば学ぶほど、イギリス産ワインが価格だけが高い珍しいワインではなく、プレミアムワインであることを理解する可能性が高まります。
イングランド産スパークリングワインの成功は、この戦略が機能していることを示す明確な例です。
Nyetimberは国際的に権威あるコンクールで数多くの賞を受賞しており、2023年にはChapel Downが、名前を伏せた「主要な」シャンパーニュ・ブランドとの比較試飲において、フランスの消費者の60%から支持を獲得しました(Chapel Downがシャンパーニュ地方で実施した調査によるものです)。品質と生産方法の両面でシャンパーニュと並び称されるようになり、現在では多くのイギリス産スパークリングワインがプレミアム価格で取引され、国際的な評価を得ています。消費者が30ポンド以上支払うことを厭わないのは、そのワインがイギリス産だからではなく、その価格に見合う価値、品質、そして名声を備えていると信じているからです。このことは、問題は価格ではなく、認識にあることを示唆しています。
結局のところ、価格を引き下げるべきか、それとも消費者の理解を深めるべきかという議論は、一つの明確な方向を示しています。イギリス産ワインがコスト面で輸入ワインと競争できる可能性は低く、そうしようと試みるべきでもありません。むしろ、業界の未来は、より高い金額を支払うことは負担ではなく、品質、職人技、そして地域のアイデンティティを反映したものであると消費者を納得させることにかかっています。
長年にわたり安価な輸入ワインとスーパーマーケットの値引き販売が市場を支配してきた英国において、イングランドやウェールズのワインの課題は、より安くなることではありません。「正しく理解されること」なのです。
引用元:The Struggle Facing English Wine
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