Because, I'm Because, I’m<br>ビコーズワイン開発者
Interview 04 / 石田大八朗さん

Because, I’m
ビコーズワイン開発者

知れば知るほど、ワインは楽しい。

ビコーズがいざなう、ワインの世界。

「知れば知るほど、ワインはおいしい。」をコンセプトに、まったく新しいワインブランドとして展開されるBecause, ワインシリーズ。気軽に楽しく味わいながら、ワインの知識を深めていくことができるのが最大の特長だ。
おいしさとリーズナブルな価格の両立、ワイン知識を育むラインナップの妙、そして難しいワイン選びをかんたんにするラベルの仕掛け。様々な工夫が凝らされたビコーズはどうやって生まれたのか。開発者であるフィラディス代表取締役社長の石田大八朗さんに、ビコーズに込めた想いを聞いた。

Q. ビコーズワインシリーズをつくったきっかけを教えてください。

ワインの入口となるカジュアルな価格帯のワインをもっとおいしく、楽しくしたい。そして、単なるおいしいワインではなくて、知る楽しさを一緒に感じてもらいたい。そう思ってこのシリーズを開発しました。
おいしければ何でもいい、という飲み方には大賛成です。ただ、気分や食事に合わせて「おいしい」の幅を広げていただけたら、きっと、もっと楽しんでもらえるようになると思います。ワインって、少しでも知っていくと、急におもしろさが増すものだからです。

わたしは、日本のフレンチレストランでソムリエをしながらワインを一生の仕事にすると決め、27歳のときに「ワイン武者修行」の旅に出ました。カリフォルニアのワイナリーで半年間過ごした後、ロンドンでワインスクールに通っていたのですが、「地元の普通のスーパー」にある1000円程度のワインがとてもおいしいことに衝撃を受けました。
そうした店のワインは大抵、「マスター・オブ・ワイン(世界で数百人しか持っていない最難関資格)」を持った方か、それに準ずる知識を持つ方が、コンサルバイヤーとして選んだものでした。つまり、きちんと選べば、安くておいしいワインはたくさんあるんです。身近においしいワインが溢れているから、ワインを愛する人が増える。ワインの愛好家が多いから、商品の幅も広がっていく。みんなの舌が肥えているからおいしいものが選ばれて残る――ワイン文化のなかには、こういう好循環がありました。日本にもこの好循環を根付かせたい。その入口としてビコーズシリーズがあってほしいと願っています。

Q. ビコーズワインは「Becasue, I’m 〇〇 from □□」と名付けられていますが、どうしてこのような名前に?

「ワインは好きだけど、よくわからない」という声をよく聞きます。たしかに、世界中にはすごくいろいろな味わいのワインがあり、ワインには600種類以上もの香りの成分が含まれていると言われています。でも、その味わいに大きな影響を与えるのは、実はたった2つだけ。それが、「どこで作られたか」(産地)と、「どんなブドウ品種で作られたか」(品種)です。ワインを知るとは、この2要素を知ることから始まります。
では、その2つをわかりやすく伝えるにはどうするか、そう考えたところから、このシリーズが始まりました。

たとえば、「Im Chardonnay from Southern France」(わたしは南フランスから来たシャルドネです)、「Im Chardonnay from California」(わたしはカリフォルニアから来たシャルドネです)というふうに、 ワインが産地と品種を自己紹介する。それをそのままワインの名前にしました。ラベルを見るだけで、産地と品種が容易にわかるようになっています。

Q. どうやって産地と品種を選んでいるのですか?

シリーズの第一弾には、「カベルネ・ソーヴィニヨン」と「シャルドネ」という赤白のブドウ品種を、それぞれ2つ入れました。この2品種がもっとも多く飲まれているワインだというだけではなく、ふたつの産地にわけて出すことで、同じカベルネでも、フランスとカリフォルニアではこういうふうに味が違うのだ、ということに気づいていただけると思ったからです。飲み比べることで、ブドウの「品種」だけではなく、「産地」についても、味わいを実感していただけるようになっています。

シリーズ第一弾は6種類。

だからそれぞれ、南フランスのカベルネらしさ、カリフォルニアのカベルネらしさが表現できているかを意識して作りました。では、その「らしさ」とはどういうことでしょうか。カリフォルニアというと、いつも天気が良くて、人もオープンで明るい、というイメージがあると思います。ワインもまさにそういうキャラクターです。カラッとした快晴の多い気候ではブドウも自然に完熟しますから、フルーツが爆発するような、ジューシーな味です。
一方、南フランスのほうは、甘やかさの中にも酸味があり、印象としては、もう少しエレガントな、きれいなイメージ。まさにヨーロッパ的な雰囲気です。
カリフォルニアのワインを「濃厚すぎる」と感じる方もいます。そういう方はフランスのほうを飲んでいただければしっくりくるかもしれません。逆にパワフルなワインが好きな方は、ぜひカリフォルニアを試してください。きっと「カベルネ・ソーヴィニヨン」の印象が変わると思います。

Q. だんだん産地と品種を覚えることの大切さがわかってきました自分の好みを知ればワインを注文することが怖くなくなりますね。

そうですね。レストランで「どういうワインがお好みですか?」と聞かれて、答えに困った経験がある方は多いと思います。実際、昔わたしがソムリエをやっていたときには、ほぼ「フルーティーなもの」と返ってきました。わたしの場合は「わかりました」と言いつつ、勝手に選んでいましたが(笑)、それは、ほかに言いようがない、という気持ちもわかるからです。味わいを言葉で表現するのは、実は非常に難しいんです。
そういうときに、好みを品種と産地で表現してもらったら、間違いなく伝わりやすくなります。特殊なワイン用語をマスターしなくても、「カリフォルニアのカベルネのような感じがいい」などと言っていただけたら、きっとぴったりのワインを選んでもらえると思います。

Q. 安くて美味しいワインをつくる秘訣は何ですか?

まずは世界中に製造コストが低い産地がありますので、そうしたところを選ぶこと。人件費や設備費に加え、一番重要なのが気候条件です。放っておいても完熟したブドウが栽培できればいうことはありません。ただし、安く作れてもクオリティが低ければ意味がない。その土地の気候なり土壌や地形なりに適した品種を選ぶことも大切です。ビコーズワインシリーズでは、この産地・品種の優位性がまず第一に活かされています。
その上で、現地から大きなタンクのまま運んできて、日本で瓶詰めをすることで輸送にかかるコストを低減しました。さらに出来上がったワインを買い付けるのではなくて、私自身が現地に行って、何十もの原酒を試飲しながら徹底的に選びぬきました。それが、112001850円(税別)という価格帯に反映されています。

Q. そもそも、なぜワインはこんなに値段がちがうのでしょうか?

あまりにも値段の差がありすぎることも、ワインを難しくしているひとつの理由になっているのは間違いありません。せっかくなので、ワインの値段の差の謎をお話しましょう。
日本の小売価格で500円〜2000円くらいまでは、値段の差は、ほぼクオリティの差です。同じワイナリーで1000円のものと2000円のものがあれば、より良いぶどうを使ったり、より手間をかけてつくったものが2000円の方のワインということになります。
もちろん、より安価につくれる産地というのはありますが、「トスカーナ」とか「ボルドー」とか、ある程度エリアを限定するならば、価格の差は品質の差だと言っていい。
それ以上の価格になると、何を「いいワイン」とするかには、飲む人の好みが大きく影響してきます。ゆえに品質の差という意味では、1000円と2000円より、1万円と2万円の差のほうが小さい。10万円と20万円ではもっと小さくなる、というか、ここまでくると、もはやブランドや希少価値によるプレミア感の差です。

Q. ビコーズワインの今後の展望を教えてください。

ビコーズワインシリーズはまだまだラインナップを増やしていきます。今年6月に新たに加わった「モナストレル」という品種は、スペインでつくっています。スペインは、「安くておいしい」ワインの産出国としてはヨーロッパで随一、世界でもチリなどと並んで最強クラスで、ぜひ仲間にいれたいと考えていました。そして広いスペインのなかから選んだのが、フミーリャ(Jumilla)という地方のモナストレルです。フィラディスの大人気ワインである「シルバーラベル」と同じ醸造所で作っています。
もうひとつの新作が、イタリア・シチリア島の固有種、ネロ・ダーヴォラ。イタリアは地方によってたくさんの固有種がありますが、より「安くておいしい」を求めてこれに行き着きました。いずれも、これまでのラインナップとはまたちがった個性をもつワインです。

実は、10品種10産地くらいを押さえておけば、世界のワインの大枠は把握できます。ビコーズでは今後も、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン、オーストラリアのシラーズなど、品種や産地を増やしていきたいと考えています。最終的には、世界のワインの初級編はビコーズワインシリーズで押さえられる、そんなワインブランドになれたらいいですね。

写真 間部百合

石田大八朗さん

1972年生。大学卒業後、ミシュラン星付きフレンチレストランにてソムリエとして勤務する中でワインの魅力に目覚め、カリフォルニアのワイナリーにてワイン醸造を学ぶ。その後、ロンドン・パリ等でワインビジネスを学んだ後、2001年に帰国。2003年株式会社フィラディスを設立。

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