寒波の影響でフランスにおけるブドウ収穫量の約3分の1がダメージを受け、業界全体の被害額は約24億ドルにも上る見込みです。
4月中旬フランスは冬の気候に逆戻りし、夜間の気温がマイナスまで落ち込むエリアが国全体で観測されました。農業が受ける影響は甚大で、フランス政府はこの自然災害に対して莫大の経済的支援を行うことに同意しました。フランスの殆どのワイン産地で霜害を記録しており、今後も夜間の気温は更に落ち込むことが予測されています。
広範囲で収穫の激減が発生した理由の一つとして、3月下旬の異常気象が萌芽を促したことが挙げられます。
フランス全土での被害
寒波が襲う前のボルドーでは、1週間にわたって気温が摂氏20度半ばくらいで推移しており、多くのブドウ樹で展葉が確認されました。そして先週気温がマイナス5度まで落ち込むと、その結果は悲惨なものでした。ボルドーワイン委員会は、2021年の収穫高は霜害に大きな影響を受けるだろうという声明を発表し、40-50%もの収穫減を予測しています。
ブルゴーニュワイン委員会はブルゴーニュ全域(シャブリからマコネまで)が多かれ少なかれ霜害を被っていると発表しました。2016年に発生した霜害ではコート・シャロネーズやマコネは害を免れましたが、今回はその地域でも被害が確認されています。
シャルドネはピノ・ノワールよりも萌芽がわずかに早いため、より大きな影響を受けているようです。ムルソー一帯の畑が壊滅状態であるという噂もありますが、ブルゴーニュワイン委員会は現段階では被害の規模を計測する術がないと警告しています。
ローヌでは4月7日夜にマイナス7度を記録し、エルミタージュの斜面では2021年の収穫を救うために何千ものキャンドルが燃やされました。当初の報告ではコンドリューとサン・ジョセフで大きな損害が確認されており、コンドリューでは80%、サン・ジョセフでは60%の収穫減が予測されています。
ロワールでも、ナントとブロワの中間地点でマイナス7度が観測されています。InterLoireによると、様々な霜害対策が施されているものの結果は地域によって異なり、害を免れている地域がある一方で、80%もの収穫減が予測されている地域もあるといいます。
シャンパーニュの例
シャンパーニュでは費用対効果の観点から、多くの生産者が霜害対策に従事していませんでした。シャンパーニュ・メゾンMarie CourtinとPiollotのDomique Moreauは、スプリンクラーを用いた霜害対策を20年間以上行ってきたものの数年前にその慣行を取りやめ、収穫高に大きな違いは見られなかったと語ります。
しかしながら霜害はいまだに発生しています。シャンパーニュ・メゾンOlivier Horiotは数年前に2台の風車を畑に導入しましたが、4月7-9日の寒波では地上よりも更に高い位置の空気が冷たかったので、風車は意味をなさなかったと語ります。気温がマイナス2度を下回った際に発生する黒霜では、その対策がより複雑なものになるといいます。オーブ県では気温がマイナス7度まで落ち込み、夕方に発生した雪やみぞれによる高湿度が状況を更に悪化させました。
Louis Roedererは大規模な霜害対策を打ち出した唯一のシャンパーニュ・メゾンで、彼らはクローンのブドウ樹を保護するために0.8ヘクタールにつき168本の割合で木材を燃やし続けてきました。同社のJohann Merleは、未来のブドウ樹を保護することはワインの質と多様性を維持するために不可欠だったと説明しています。
霜害対策を行わないシャンパーニュの生産者が多い理由の一つは、シャンパーニュ生産者団体SGVのMaxime Toubartの説明に要約されています。「霜害に対する大きな緩衝材として、アペラシオン規定の収量を畑のブドウからでは満たせない場合、過去に取りだめしておいたリザーヴワインを使用することができます。」
たとえ売上と収穫高の激減が予測されたとしても、霜の季節は5月中旬のSaintes Glacesと呼ばれる祝日のシーズンまで終わることがないため、生産者はリザーヴワインを頼りにせざるを得ないかもしれません。しかしシャンパーニュでも他の地域と同様に、早い段階での正確な収穫高損失を予測することはできません。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/04/winters-last-gasp-devastates-french-vineyards
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