価格の引き下げと優れたワインがあったにもかかわらず、生産者とネゴシアンはまだバランスを欠いているとの声が上がっています。
ボルドーの2023年アン・プリムール・キャンペーンは、今年の印象的な価格引き下げと2023年ヴィンテージの高評価にもかかわらず、現地では大々的に失敗と宣言され、シャトー・オーナーやネゴシアンはその心配を公然と嘆いています。
最近の数ヶ月の報道では、ボルドーでは全てが順調とは言えないとされていましたが、市場の主要人物への最近のインタビューによると、ワイン商からの価格設定に対する不満(アン・プリムール・キャンペーンの常)にもかかわらず、このシステムが危機に瀕していることが明らかになってきました。
「こんなことは見たことがありません。結果は壊滅的です」
Châteaux d’Issan、 Pedesclaux、Lafon-Rochet、Lilian Ladouysを所有するCruse Lorenzettiのゼネラル・ディレクター、Emmanuel Cruseはフランスの経済紙Les Echosにこのように語りました。Cruseによると、ボルドーの3大主要市場(アメリカ、ヨーロッパ、中国)はすべて「不調」だそうです。
La ConseillanteのJean-Valmy Nicolasもこの感想に共鳴しており、2023年のアン・プリムールは「5本の指に入るベスト・ヴィンテージに対して、過去30年で最悪のキャンペーンだった」と話し、「私たちのワインに対する関心は他の年よりも著しく低かった」と付け加えます。
一方、ネゴシアン側(シャトーからワインを購入し、世界中に販売するワイン商人たち)もその不満を露わにしました。
フランスのワインニュースサイトVitisphere.comとの激しいインタビューで、ボルドーのネゴシアンハウスのグループを率いるPhilippe Tapiéは、アン・プリムール・キャンペーンが「的外れだった」と述べました。
玉に瑕の理由
Tapiéは、今年のシャトー側の大幅な価格引き下げを認める一方で、価格水準自体が最初から不適切だったと指摘しました。
「発端は2021年のヴィンテージです」そうTapiéは言います。
「2022年は例外的なヴィンテージですが、(その価格は)経済的に完全に的外れだった2021年に基づいています。そして、2023年の価格を30%引き下げた一部のシャトーのフラストレーションは理解できますが(価格の)方程式は良くないスタート価格に基づいています。私にとって問題は2021年です。」
彼によると、コロナ後の好景気とそれに伴うフランス政府からの財政支援策によって価格が急騰し、一部の最高級ワインの価格が過去10年間で3倍になったといいます。また、シャトーの価格上昇を押し戻すことなく、これほどの高騰になるまで受け入れてしまったネゴシアンにも一部の責任があると認めています。
「我々は”ノー“と言わなければならない時に”ノー”という方法を知っておくべきでした。ボルドーのバランスはブローカー、シャトー、ネゴシアンという3つのファミリーの平等な関係にあります。我々は2021年に警告の笛を吹くべきでしたが、結局、皆がワインを買い求め、我々は誰の頭にも銃を突きつけることはありませんでした。」
(3者の)バランスの問題は最近何度も取り上げられています。
「シャトーとネゴシアンの間では力の均衡が必要ですが、最近はシャトーに大きく有利に傾いています」
ネゴシアン大手Ulysse Cazabonneの代表、François Dugouaは5月、フランスのワインサイト「Terre de Vins」にこう語りました。「私たちは多少のバランスを取り戻さなければならない時点に近づいてきています。そうでないと、取引は息苦しくなり、投資能力(販売チーム、在庫、海外プロモーション)を失うことになりますが、これはシャトーのサポートなしにはできません。市場の実態の認識と価格の調整が必要です。」
複雑なジグソー
プレイヤー間の関係は複雑です。アン・プリムール制度では、批評家がボトル詰めされる前のワインをテイスティングし評価します。その後、エステート(ほとんどの場合はシャトー)が一定価格でいくつかのケースをネゴシアンにリリースしますが、これはしばしばブローカーのネットワークを通じて行います。
Lynch-BagesのJean-Charles Cazesは、トップワインにはまだ需要があると信じていますが、「15ユーロから40ユーロの間のセグメントが厳しくなっている」と認めています。
この点について、Tapiéはさらに率直に語りました。
「私たちネゴシアンはシャトーにメッセージを送っています:もう一度素晴らしいワインを、ファーストワインを作ってください、と。」これはワイナリーの名を冠した”グラン・ヴァン”をほのめかしており、「アン・プリムールで立場のないセカンド、サード、フォースラベルで私たちを困らせるのはやめてくれ」とも話します。
「エゴと地位に基づいているのでしょうが、なぜトップワインのための引き立て役をわざわざ作るのでしょうか?」彼は続けます。
「意味がありません。主要ブランドの主要ラベルにボリュームを戻せばよいのです。」
実際、アン・プリムールの全体の目的は、歴史的には商人から消費者まで誰もがボルドーの先物を購入し、ボトルが届いたときに良い取引を得たと感じさせることであり、同時にワイン生産者の運転資金を増やすものでしたが、この目的は損なわれているようです。この感想は、近年多くの評論家が触れてきました。
「アメリカでは金利が8パーセントもあるのに、前もって買って在庫を持つことに誰も興味を示さないのです。」La ConseillanteのNicolasはそう言います。
経済的な問題に加え、供給と需要の問題も浮上しています。
「現在、プライベートセラーの在庫を除いても、世界に50~70億ユーロ分のボルドー在庫があるとされています」と経済紙Les Echosは報じています。この新聞はさらに、ボルドーのネゴシアン市場から年間約15億ユーロ相当のワインが出ていることが、アン・プリムールの経済活動の低下に寄与していると付け加えました。
理解できることではありますが、Tapiéはシャトー・ラトゥールが12年前に顕著に行ったように、アン・プリムールシステム全体を回避すべきかどうかについては言及を避けました。
「それについては言及しません」と彼はVitisphereに語り、「むしろChâteau Cheval Blancの話をしたいです。Cheval Blancはこのアイディアを検討していましたが、結局それを取りやめました。完全にボルドーの流儀に戻っているCheval Blancはここ3年間、これまで以上に良い状態にあります。」
Tapiéはまた、「ラ・プラス」がボルドー以外の地域のワインを提供している理由についても指摘しました。
「なぜ我々がボルドー以外の素晴らしいワインを提供しているのか?それは生計を立てなければならないからです。」
Cruseのように、解決策は2024年の収穫(降雨量過多によりカビが大量発生し、とても厳しいと見込まれる)が終わった後に「理性的な人々」としてすべてのプレイヤーがテーブルに座ることだと考えています。
一方、ボルドー市場のもう一つの側面では、地元政府とワイン業界が新たに補助金付きのブドウ畑の撤去を発表しており、今回はすでに撤去された推定8000ヘクタール(20,000エーカー)に加えて約1000ヘクタール(2500エーカー)をカバーする予定です。
引用元: Recriminations in Bordeaux after En Primeur “Failure”
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