多くのワイナリーがボトルの軽量化に目を向けていますが、イタリアではconsorzio(イタリア原産地呼称協会)が舵を切りました。
伝統的な重いボトルは、なんとなく安心感を与えるかもしれませんが、地球には良い影響を与えません。
ワインの世界では、持続可能性に影響を与える要素として、市場で生産、輸送、販売されるガラス瓶に注目が集まっていますが、過去18年間、北イタリアのピエモンテ州にあるAlbeisa consorzioは、革新的で戦略的なアプローチでこの問題に取り組んできました。
ピエモンテ州のランゲとロエロという小地域を包括するAlbeisa consorzioは、318のワイナリーが加盟する協会で、バローロとバルバレスコの名だたるワイナリーのほぼ全てが加盟しています。2024年は2400万本の生産となりました。全メンバーには、2024年から軽量化されたAlbeisaのボトルを使用することが義務付けられています。独創的で魅力的なブランディングのひとつであるこのボトルには、首の上部を囲むように4箇所にAlbeisa の文字が浮き彫りにされています。
ボトルの軽量化に向けたAlbeisa の長期的な取り組みは、環境の持続可能性に対する具体的なコミットメントとなっています。歴史的にはAlbeisa のボトルの重さは575gで、2024年にはAlbeisa の会員のワイン約1200万本が出荷されました。相当な重量になります。しかし2007年、Albeisa は30%軽量化したleggera (light) という名前の450gの新ボトルを発表しました。2007年に100万本出荷されたleggeraのボトルは、2024年には約500万本に増えました。
2025年の新ボトルecovà は410g。leggeraによる軽量化により、二酸化炭素排出量は22%削減され、ecovà の410gボトルを使用した場合はさらに9%削減されます。全てのボトルにリサイクルガラスが一定割合含まれていますが、最大の効果は輸送時の二酸化炭素排出量削減にあります。
AlbeisaのMarina Marcarino会長は、軽量ボトル使用のきっかけについて説明します。
「ボトルを軽くする目的は、消費者と生産者の双方をより環境に優しい世界に近づけることです。すでに多くの生産者が、より持続可能な生産方法を取り入れており、軽量ボトルも、この哲学を市場でサポートするのに一役買っています。生産者からのフィードバックは非常に好意的です。持続可能性というメッセージをできるだけ広く伝え、気候変動に対応して世界をより環境に優しいものにする方法を見つけることに、誰もがもっと気づき、参加できるようにしたい」。
バルバレスコにある家族経営のワイナリーPunsetのMarcarino は1980年代初頭、ピエモンテにおいて有機農法導入をしたパイオニアであり、それ以来、ビオディナミ農法を取り入れて大きな成功を収めています。2004年には、オーガニックワイン生産者によるVintesa Italian Wines Consortiumを設立しました。ベテランのブドウ栽培者・醸造家であるMarcarino は、知識、経験、そして哲学を持っていて、それがAlbeisaが持続可能性を実践するための成功の要因となったのです。
小さなアクション、大きな違い
Federica Boffa-Borgognoの家族経営のワイナリーが所有するFratelli Serio & Battista Borgognoは、バローロで最も名高い畑のひとつ、カンヌビの丘の上にあります。持続可能性について、Federica は語ります。「雨水の収集、廃棄物のリサイクル、分別収集、キロメートル・ゼロ (生産者、料理人、消費者が食のローカル再発見をする活動)など、小さな行動が大きな違いを生む」。
集めた雨水は、飲料水の代わりにブドウ畑や野菜園、その他の作業に使います。除草剤は使用しません。カンヌビのブドウ畑での試験的プロジェクトでは、ブドウ畑の生物多様性を高めるため、約50種の在来種の植物を畝に植えています。
Boffa-Borgognaは、二酸化炭素排出削減のための軽量ボトル化に熱心です。
ワイナリーでは現在、軽量ボトルに必要な積荷下ろし設備と出荷用パッケージの改修をしているため、伝統的なボトルを使用していますが、彼女は近い将来の変化を楽観的に見ています。Albeisa のワイナリーによる軽量ボトルの使用が年々増加していることから、Boffa-Borgognoの同業者の多くが同じように感じています。
Albeisa がピエモンテで成功したことで、ヴェネト、プーリア、エミリア=ロマーニャ、トスカーナの他のワイナリー組合も追随する可能性が高くなりました。世界中のより多くの生産者がより軽いボトルを採用するようになれば、二酸化炭素排出量と持続可能性に大きなプラスの影響を与えるでしょう。
ガラス瓶は、二酸化炭素排出量と持続可能性にとって最大の負債です。Sustainable Wine Roundtable の報告書は、「ワインに関連する二酸化炭素排出において、1/3から1/2を占める最大の原因は、ワインボトルである。これは、ガラスの製造に必要な大量のエネルギーと、ワインボトルの輸送による排出によるものである。従って、二酸化炭素排出の観点からは、ボトルの重量を減らすことができれば、ワイン業界にとって大きな利点となる可能性がある」と指摘しています。
SWR(The Sustainable Wine Roundtable)が提案するボトル重量協定では、750mlのスティルワインボトルについて、SWRの小売会員は2026年末までに、現在の平均ボトル重量約550gから420g未満に移行することになっています。会員には、カナダのSociété des alcools du Québec (SAQ)、英国のWaitrose & PartnersとMajestic Wines、オランダのAhold Delhaize、米国のWhole Foods Marketなど、著名なワイン小売業者が名を連ねています。これらの企業は世界でも有数のワイン卸売業者です。
引用元:Lighter Wine Bottles have Heavy Impact
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