シャンパーニュでは、史上最も早い収穫に対応するため、地域全体が慌ただしく動き始めています。
多くの栽培家や収穫作業員がまだ休暇中とみられるなか、シャンパーニュはこれまでにない早さで収穫期へ突入しています。8月4日、多くの生産者は、収穫開始が目前に迫っていることを知り驚かされました。
シャンパーニュの収穫前熟度モニタリング・ネットワーク「Réseau Matu(RM)」による最初の調査では、平均潜在アルコール度数が8.2%に達し、わずか1週間で3ポイント上昇していることが判明しました。その1週間後には、アペラシオン全体の平均潜在アルコール度数は10.2%、総酸度は9g/Lとなりました。糖/酸比は19.7に達し、理想的な収穫の目安とされる20の目前です。つまり、8月11日の時点で発せられたメッセージは、「収穫すべき時は今」というものでした。
実際、収穫はすでに始まっています。8月6日、モングーの栽培家Vincent Finotは特例措置を受け、収穫を開始しました。その畑では潜在アルコール度数がすでに11%に達し、酸度が急速に低下していたうえ、サワー・ロット(sour rot)も発生し始めていました。その後、モングー村全体も同じ理由から特例を申請し、8月8日に収穫を開始しました。同村では週初めに30mmの降雨があり、それをきっかけに成熟が猛烈な勢いで進んだのです。
8月12日に村ごとの公式収穫開始日が発表される前に、前倒しでの収穫開始を申請した村は他にもありました。オーブ県ではランドルヴィル、メレ=シュル=アルス、ヌーヴィル=シュル=セーヌ、ビュシユル、セル=シュル=ウルス、ポリジー、ヴィヴィエ=シュル=アルトー、マルヌ県ではアンボネイとモンジュノが8月10日の開始を選択し、オーブ県のヴィルノー=ラ=グランドは8月11日の開始を申請しました。しかし最終的には、アペラシオンの約3分の1が8月17日を収穫開始日とし、さらに約10%が8月18~22日を選択しました。
比較すると、前年の収穫開始日は8月18日で、これでも当時は史上最速でした。しかし今年は、その記録を一気に10日も更新したことになります。オーガニック生産者Champagne Pascal DoquetのPascal DoquetはWine-Searcherに対し、この10日間は成熟サイクルそのものが短縮された結果だと語っています。今年の成熟期間は72~75日で、前年の82~85日から大幅に短縮されました。さらに1月中旬以降の温暖な気候により、生育期そのものも史上最も早く始まりました。萌芽は3月末、開花は5月末に起こったため、当初から8月末の収穫が予想されていました。しかし、生育サイクルが12%も加速することまでは誰も予想していませんでした。その結果、収穫開始日の前倒しを求める声が相次いだにもかかわらず、多くの栽培家は物流面で準備が整っておらず、実際に収穫を始められるのは8月17日の週からとなっています。
シャンパーニュではすべてのブドウを手摘みし、毎年8万~10万人もの人々が収穫のために地域へ集まります。多くのワイナリーは収穫作業員を8月17日の週から手配していました。しかもバカンスシーズンの真っただ中であり、予定を1週間前倒しして人員を確保するのは容易ではありません。
さらにシャンパーニュでは近年、収穫作業員の労働・宿泊環境の改善に多額の投資を行ってきましたが、それが意図せず、半ばプロ化した季節収穫労働者を利用しにくくする結果にもつながっています。たとえばボルドーとシャンパーニュでプロの収穫作業員と生産者をつなぐ独立コンサルタント、Sébastien Charbeyは、候補となっていた作業員の約3分の1をボルドーに残さざるを得なかったと説明します。彼らは通常テントで寝泊まりしますが、現在のシャンパーニュではそれが認められていないためです。また、アペラシオン当局は複数の行政機関と連携し、収穫時の監視も強化しています。そのため、多くの生産者は規則違反が発覚した場合の影響を警戒しています。
人道的な観点から見ればこれは好ましい変化ですが、一方で生産者は難しい立場に置かれています。最新のRMの報告によれば、8月17日前後から収穫を開始した場合、潜在アルコール度数が12.5%以上に達する可能性が高く、それと同時に酸度が低下すると予測されています。実際、RMは栽培家に対し、最も熟した区画はいったん後回しにし、収穫開始時には潜在アルコール度数が低く、酸度の高い畑を優先するよう勧めています。技術的には非常に理にかなった方法ですが、多くの栽培家にとっては直感に反します。最も熟したブドウをすぐに収穫しなければ、傷んでしまうのではないかと恐れるからです。
Pascal Doquetはそうした懸念を抱いていません。彼は酸を維持するため、潜在アルコール度数が低く酸度の高い区画から収穫し、最も熟した区画を最後に回す方法を好みます。Doquetは、ブドウの糖度上昇は今週中に頭打ちになる可能性が高く、そのため潜在アルコール度数はそれほど上昇しないと考えています。一方、すでに過熟した畑から収穫を始めれば、その間に残された畑がさらに過熟していき、「より過熟した畑を次々に収穫する」という悪循環に陥り、全体として酸度が低下する可能性があります。Doquetは、イタリアでは畑を2回に分けて収穫し、後からブレンドすることで酸を維持しながら風味を最適化する手法が一般的に行われていると指摘します。
それでもシャンパーニュ委員会(CIVC)の研究・開発・イノベーション部門ディレクターSébastien Debuissonは、異例のスピードで上昇している潜在アルコール度数を注意深く監視する必要があると強調します。最初の1週間の測定では、潜在アルコール度数は1日あたり0.45ポイント上昇しました。先週には1日あたり0.27ポイントまで成熟速度が落ち着いたものの、現在の熱波によってこのペースが維持される可能性があります。
猛暑を乗り切る
今季5回目となる今回の熱波は収穫作業をさらに難しくし、収穫作業員とブドウ双方の健康・品質を脅かす可能性があります。8月15日までは最高40℃に達する気温が予想されています。
死亡事故を避けるため、RMはフランスの労働規則において、28℃を超える環境での肉体労働は危険を伴うとされていることを栽培家に改めて注意喚起しました。
そのためCIVCは、収穫作業員に対し、夜明けとともに作業を開始すること、定期的に水分補給の休憩を取ること、1日に数回、少なくとも顔と前腕を冷やすこと、淡い色で可能であればUVカット機能のある衣服を着用すること、熱中症を防ぐため帽子などで頭部を覆うこと、そして日焼け止めを定期的に塗ることを推奨しています。また栽培家には、休憩用の日陰を確保し、水と日焼け止めを提供することが求められています。
Champagne Philippe GonetのChantal Gonetは8月10日、モングーで前年より9日早く収穫を開始しました。作業員は午前5時に仕事を始め、昼までには終了します。午後は暑すぎるためです。「午前10時30分を過ぎると日差しが本当に強くなります。そのため注意を怠らず、11時30分から正午までには作業を終えることが重要です」と彼女はWine-Searcherに語っています。
ブドウの品質を最大限に保つため、CIVCの研究・開発・イノベーションチームは、白色の収穫箱を使用すること、箱を直射日光の当たらない日陰に置くこと、迅速に運搬できるよう最初からパレット上に置くこと、そして劣化を防ぐため、その日のうちにすべてのブドウを処理することを推奨しています。一方、暑く乾燥したシーズンはブドウの健全性には好影響をもたらしました。RMは今年のブドウを「例外的に健全」と評価しています。8月中旬時点では酸度も維持されており、Debuissonによれば、同じ潜在アルコール度数で比較すると、むしろ前年よりわずかに酸度が高いほどです。その理由として彼は、今年特徴的な小粒のブドウを挙げています。果粒が小さいことで、酸を含む代謝物質がより濃縮されるためです。
しかし、この小粒傾向によって房重量も軽くなっています。現在、アペラシオン全体の平均房重量は95gで、2012年以来最も軽い水準です。Debuissonは、今後数グラム増える可能性はあるものの、7月に期待されていた平均110gに達する可能性は低いと考えています。「今季は極端に乾燥しており、果粒は小さいまま成熟するよう形成されています。大雨が降ったとしても、これは変わりません」と彼は述べています。その例として挙げたのが、セザネ地区のヴァンデイです。同村では8月3日の嵐で60mmの雨が降ったにもかかわらず、房重量は依然として110g前後にとどまっています。
房重量の低さは、もともと低かった収量をさらに押し下げています。7月第3週の時点で予想収量は7,000~8,000kg/haとされていましたが、その後、販売可能収量、つまり収穫して瓶詰めできるブドウ量は8,800kg/haに設定されました。生産者がこの販売可能収量に届かなかった場合は、個別リザーヴ(Réserve Individuelle=RI)を利用して不足分を補うことができます。これは豊作年に余剰分を確保し、不作年に使用できるようにする緩衝制度です。
今年の収量ポテンシャルを大きく損なったのは、春に発生した深刻な霜害でした。これによってアペラシオン全体の芽の約40%が失われました。さらに開花・結実期の気温変動によってミルランダージュが発生しました。これは一つの房の中に非常に小さな果粒と通常サイズの果粒が混在する現象です。こうした一連の自然災害の結果、今年のアペラシオン全体の収量は過去40年以上で最低になる可能性が高く、7,000kg/haを下回ることも考えられています。
果粒に含まれる果汁量は比較的少ないものの、Debuissonによれば、現時点で圧搾サイクルが大幅に長くなっているわけではありません。ただし、最終的な結論を出すにはまだ早いとも指摘しています。シャンパーニュの規則では、1回の圧搾に投入する4,000kgのブドウから2,550Lを搾汁すると定められており、果汁量の少なさは圧搾時間に影響する可能性があります。Gonetもこれを裏付けており、今年のブドウの圧搾時間は平均をわずかに上回った程度だと述べています。さらに彼女は、果汁の全体的な味わいにも良い意味で驚かされたといいます。潜在アルコール度数が11.4%に達しているにもかかわらず、十分なフレッシュさを保っていたからです。
Debuissonは、2026年ヴィンテージには総じて大きな可能性があり、醸造と栽培の両面から非常に興味深い年になると考えています。というのも、このようなシーズンが今後、シャンパーニュにおける「新たな標準」となる可能性があるからです。多くの場所で収穫開始がやや遅すぎることになる可能性は認めつつも、酸が維持されている限り、高すぎるアルコール度数は醸造段階でのブレンドによって調整できると彼は指摘します。栽培面についてDoquetは、シャンパーニュは今後の時代に対応するための「答え」をまだ完全には見つけていないものの、急速に学んでいると付け加えています。
結論として、熱波のなかで突然収穫へと追い立てられる形になったものの、2026年のシャンパーニュは依然として有望なヴィンテージです。ただし、その生産量は非常に少ないものとなりそうです。
引用元:Champagne Harvest Earliest Ever
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
文責はFiradisに帰属します。