2020年には多くの変化がありましたが、各国におけるアルコールとの付き合い方もその例外ではありません。
自粛期間の影響により飲酒量の増加を予想した人もいるかもしれませんが、消費者の傾向はむしろその逆だったようです。アルコールに関して言えば、低アルコールやノンアルコールがより主要なものになりました。
2020年のような困難な年に、なぜ消費者(そして生産者)は低アルコールまたはノンアルコール飲料を選ぶようになったのでしょうか?専門家の意見を聞いてみましょう。
ワイン業界では、2011年にスペインのワイナリーであるFreixenetがノンアルコール・スパークリングワインをリリースしました。同社で国際マーケティングマネージャーを務めるKinga Schonpflugは、膨大なリサーチによって発見された顧客の需要に影響されて開発に至ったと語ります。「(2011以降)ノンアルコール部門は成長を遂げており、2019年度のIWSR(アルコール飲料の市場調査機関)の発表によると、過去5年間の成長率は53%増でした。同様にノンアルコール飲料は多くの利益をあげています。」
ニューヨークのレストランPinch Chineseで飲料部門のディレクターを務めるMiguel de Leonは、ノンアルコール飲料を開拓したきっかけをこう語ります。「アルコールを飲まない人がみなジュースやソーダを飲みたいわけではなく、かといってどのバーでもノンアルコール飲料が飲めるわけではありません。アルコールを飲む人は、タンニンや苦み、粘性、辛口といった味に慣れ親しんでおり、それらはジュースやソーダには欠落しているものです。このギャップを埋めるべく、アルコールを飲まない人のためにジュースやソーダにはないものを持つ飲み物がほしいと思ったのです。」
バーテンダーのChris Cardoneもde Leonに共鳴し、飲酒の有無に関わらず全てのゲストが同じような経験ができることが重要だと述べています。「レストランやバーでアルコールを飲む、または飲まないというゲストの選択が彼らの経験に影響を与えるべきではありません。アルコールを飲まないゲストにもオプションを提供することは、現代では非常に重要だと考えます」とChrisは語ります。
繊細なバランス
Freixenetで醸造を務める佐藤氏は、ノンアルコールワインを造るために脱アルコール製法を用いていると述べています。つまり、発酵と醸造のプロセスを経て、その後にアルコールを除去する処理が施されます。「この作業は通常のアルコール飲料を造るよりも高コストですし、さらに手間がかかり複雑です。」と佐藤氏は語ります。アルコール除去した後、ワインが失ったアロマや味わいなどを「取り戻す」必要があるからです。
アルコールは世界で最も優れた防腐剤の一つであり、アルコールを含まない製品の生産には細心の注意が必要になります。Freixenetでは0°に近い低温で醸造し、新鮮さと保存性の高さを実現するために素早く瓶詰めします。またアルコール飲料と異なり、ノンアルコールワインの賞味期限は2年程度です。
ノンアルコールを選択する人の背景には、車の運転や夜勤、健康志向の追求などがあると見ており、ノンアルコール飲料はもはや妊娠中の方や下戸のための飲み物ではないと語ります。Freixenetのノンアルコールワインのマーケットは主にドイツやイギリス、スペインですが、アメリカでも急成長を遂げています。驚くべきは、若い世代がアルコールの摂取量を控える(もしくは、全く飲まない)選択をしていることです。
ノンアルコール飲料のセールスパターン
De Leonは、ニューヨークにおけるノンアルコール飲料のセールスパターンには波があると言いますが、特定の時期(Dry JanuaryやSober Summerといった禁酒キャンペーンなど)には強い需要があるそうでうです。英国のノンアルコール・スピリッツ製造会社のCEOであるBen Bransonは、「社会の変化」が人々のアルコールとの付き合い方を見直すきっかけになっていると語ります。「人々の健康意識が高まり、摂取する食事や飲料に気を遣うようになってきたので、ノンアルコール飲料の需要が増加しました」と述べ、ノンアルコール飲料やモクテル(アルコールを使用せず作るカクテル)の需要は徐々にではあるが確実に増加しているといいます。
将来への見通し
Freixenet社のSchonpflugはノンアルコール飲料の需要が一時的なものではないことを確信しています。「低アルコール飲料やノンアルコール飲料の人気は高まっていますし、人口の25%を占めている健康意識の高いミレニアム層が牽引して、世界的な市場は成長することが予測されています」とSchonpflugは語ります。また、飲酒が禁止されている国(エジプト、イラン、リビアなど)での人気も高まっています。
de Leonもノンアルコール飲料が普及していくことを確信しています。「ノンアルコール飲料に未来はあります。アルコールとの付き合い方を見直す手助けをしてくれますし、バーやレストランへの偏見もなくなります。」アルコール飲料とノンアルコール飲料が比較されるのではなく、ノンアルコール飲料が独自の世界を生み出していくことをde Leonは信じています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/03/wine-in-an-alcohol-free-future
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