一般的に干ばつが発生した年はワインにとって良い年になると言われています。しかしカリフォルニアは今年、その限界を試されることになるでしょう。
アメリカ海洋大気庁によると、2021年のカリフォルニアは観測史上4番目に乾燥した年となっており、2020年は3番目でした。そしてその影響は至る所で確認されています。9月中旬、カリフォルニア州はロシアン・リヴァーからの水源確保の停止を企業や団体に命じました。対象となるのは農家が中心ですが、その対象にはソノマの主要ワイン生産地であるクローバーデール市やヒールスバーグ市も含まれています。ここ数カ月の間にナパやヨントヴィル、セントヘレナ、カリストガの各市が水の緊急事態を宣言し、節水を命じました。メンドシーノは住民に必要な水を列車で運ぶことを検討しています。
ワイン愛好家にとっての良いニュースは、水不足はブドウの凝縮感を高めるので質の高いワインが期待できるということです。一方で悪いニュースは、収量の低下が予測されるということです。フランスでは(干ばつにより)30%もの収量低下が報告されています。もし同じことがカリフォルニアで起これば、特定のワインの入手が困難になり、価格上昇へと繋がる可能性があります。
カリフォルニアの栽培家たちはすでに畑作業で調整を始めています。多くの栽培家たちは、従業員に成長したブドウの房を樹から切り落とすこと(摘房)を命じています。そうすることでブドウの樹は限られた水分を残されたブドウに供給することができます。
ナパのワイナリー Truchard Vineyards でジェネラルマネージャーを務める Anthony Truchard によると、どういうわけか干ばつの影響を最も受けているのは、シャルドネとジンファンデルだそうです。彼らの所有地には雨水を蓄えるための貯水池が9か所ありますが、その一部は底が見えてしまうほどで、それでも彼らは近隣のワイナリーよりも十分な水量を蓄えているそうです。
影響の大小にはブドウ畑の位置が関係しています。ヒールスバーグのワイナリー Truett-Hurst のCEOである Paul Dolan は4つの畑を所有していますが、川の側に位置するホップランドと、大きな地下貯水池を備えるユカイアに位置する畑は大きな影響を受けていないそうです。しかし降雨に依存している丘陵地に位置する2つの畑は苦戦しており、通常の30%程度のワインしか生産できないだろうと予測しています。
不安定な時代の到来
Dolan は次のように述べています。「地下水が重要な水源です。私のように農業をしていると、土壌の水分を維持するために有機物を増やすことに多くの時間を費やします。2年連続で降雨がなければ、ブドウ樹が保持する水分が失われます。私は無灌漑農業を多く取り入れていますが、通常の約650-900mm 程度の年間降雨量があればノースコーストの土壌には十分な量なので、灌漑はあまり必要ありません。しかし状況は変化しており、1年間降雨がないのは大きな問題ではありませんが、それが2年連続となるとブドウ樹は非常に苦しい状況下に置かれます」 Dolanは、来年も同じように乾燥した年になれば丘陵地のブドウ樹は枯渇してしまうだろうと考えています。
ブドウ樹が乾燥すると誰しもが山火事を心配します。カリフォルニアで現在発生している大規模な山火事はワイン生産地の大部分を占める北部と東部で発生しています。カリフォルニアでは雨がほとんど降らず、植物も全て乾燥しているため、まるでホラー映画の序盤のような不安感に苛まれます。
Dolan は次のように述べています。「連日、湿度が10%を下回る日が続いています。その影響は果物の葉にも感じられ、葉の水分が不足しているために、葉同士で摩擦が生じているのです。山火事にとって植物は完璧な状態で、植物が松明のようになってしまうのです」
この地獄のような気候への下り坂への突入に備えて、我々は上質なワインを求めるでしょうし、2021年のカリフォルニアがそれを提供してくれる可能性は大いにあると思いますが、我々が望むような収量は期待できないかもしれません。
ナパのワイナリー Quintessa で醸造責任者を務める Rebekah Wineburg は次のように述べています。「この2年間は非常に厳しく、我々はストレスを抱えています。しかし干ばつが一部の優れたワインを生み出すことも事実です。干ばつの年に我々が留意すべきはタンニンの管理です。干ばつが発生するとタンニンがより強くなる傾向があります。2013年がその良い例です」
Wineburg によると、Quintessa では2年連続で通常の半分程度しか降雨がなく、ワイナリーには降雨を蓄える貯水池を備えているにも関わらず、彼女たちは利用可能な水の量を1インチ単位で計算しなければならないそうです。
「干ばつに伴う問題点の一つは、シーズン終盤に訪れる熱波に対する余裕を持てないことです。もしシーズン終盤に熱波が発生してしまうと、十分な水分がなければブドウ樹が正常に活動せず、果実が望んでいる熟度に達することはできません。ミスを犯す余地がないのです」とWineburg は説明します。
「困難な年をどれだけ経験しても、我々のビジネスは成り立つのでしょうか?その答えを出すためには気候変動と山火事の問題を解決しなければなりません。難しいヴィンテージに慣れているボルドーの生産者たちはナパの状況を気にかけています。我々がこれまでやってきたように、植えたい場所に植樹し、利用可能な水の量を気にせずやっていけるのでしょうか」と Wineburg は疑問を呈しています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/08/california-faces-another-dustbowl-vintage
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