Allied Grape Growersの代表であるJeff Bitterによると、カリフォルニアは2020年におけるブドウ収穫量の約8%を山火事の煙害で失いました。
今年は山火事が発生しなかったとしても気候の影響による収穫量の減少が予測されていたので、山火事と悪天候の両者が相まってカリフォルニアのブドウ収穫量は2011年以来の凶作になるかもしれません。
この予測はワイン業界にとっては良い傾向をもたらすかもしれませんが、消費者にとってはそうではありません。カリフォルニアはバルクワインの生産量が増加しており、バルクワインをスーパーマーケットで1本15ドルのワインとして売るために、新しいブランドが雑草のように軒並み誕生していました。
消費者がナパ・ヴァレー産の無名なカベルネ・ソーヴィニヨンを15ドルで見かける機会は減るかもしれませんが、ブドウ栽培者はバルクワイン用の2020年のブドウを昨年よりも高値で卸しています。
パンデミックとワインの消費
Wine Industry Networkのオンライン会議では新たな事実が浮き上がってきました。この不安定な時世におけるプレゼンターの予測は楽観的なもので、ワインの消費量は増加するだろうというものでした。
コロナの影響で職を失う人々が増加する一方で、富裕層の人々はパンデミックの不況を物ともしていません。ワイン消費者の大半が大打撃を受けた2008年のリーマンショックによる不景気の時とは状況が違うようです。
「多くの消費者は散財をしています。彼らは自由に使える資金があるにも関わらず、今は旅行や映画といった娯楽にお金を使えません」と、Turrentine BrokerageのBryan Fosterは話します。Fosterは、パンデミックの前と比べると消費者はより高価格帯のワインを小売店で購入していますが、その一方で高級ワインの動きは鈍化していると言います。
富裕な年配の顧客がレストランで高級ワインをオーダーする傾向がありますが、コロナの影響でレストランでのワイン消費が大幅に減少しており、これが大きく足を引っ張っているのです。
”HENRY”の時代
ソノマのワインビジネス学者であるDamien Wilsonは、ワイナリーは”HENRY(High Earning Not Rich Yet=高収入だがまだ富裕層ではない)”と呼ばれる消費者層に目を向けるべきだと言います。HENRYの中心であるミレニアル世代は「ブランドの社会的価値を他人に共有できるか」ということを重要視してブランドを選択するので、ワインのような象徴的消費は彼らにとって重要になるからです。
ワインの種類別売上や輸入国にも大きな変化があります。SipSourceのDale Strattonは、2019年12月時点では主要なワインインポーターが販売するワインのうちの14.8%をレストランが占めていましたが、2020年10月には8.6%まで落ち込んだと述べています。
スパークリングワインやピノ・ノワールは一般的にレストランでの消費率が高いワインですが、ブレンドの赤ワインは家庭の消費率が高い傾向があります。Strattonによると、10月のシャンパーニュとプロセッコの売上が3月以降初めて上昇傾向を見せましたが、カヴァの売上は9.6%低下したそうです。
また、10年間にわたって上昇傾向を見せていたフランスからの輸入は、アメリカの関税の影響で10月に37%も低下したそうです。一方でニュージーランドの輸入は5%上昇し、ポルトガルの輸入は19.5%も上昇しました。
ワイン産地の未来
Wine Industry Networkのオンライン会議は2021年の経済予想を議題にプレゼンテーションが行われました。ソノマの経済学者であるRobert Eylerは、全世界での景気回復は旅行やワインの消費を促進させるだろうと考えます。
しかしながら、ナパのような旅行者に依存している国や地域はワイナリーそのものよりも深刻な問題が潜んでいるといいます。ワイン産地に訪れる人々がその地域でワインを楽しむのはもちろんですが、同時に食事や宿泊施設にも期待しています。
しかしパンデミックの影響でレストランは休業しており、更にホテルは労働力不足によって閉業せざるを得ない可能性があるそうです。経済が回復した時、従業員はより賃金の高い仕事を探して求職するでしょう。
そして、ホテルやワイナリーはその「賃金の高い仕事」には当てはまらないかもしれません。Eylerは「人々がワイン産地へ旅行する時、宿泊先の選択肢は限られたものになるでしょう。我々はレストランの存続を見守ることしかできないのかもしれません」とまとめています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/12/smoke-taint-reduces-california-wine-crop
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