ブルゴーニュ出張報告 ~収穫期のオーセロワ地区、コート・シャロネーズ地区を巡る(営業 山口 要)
今秋ブルゴーニュを訪問しました。ブルゴーニュと言っても、今回の行き先はシャブリ南西のオーセロワ地区とコート・シャロネーズ地区。近年コート・ドールのワインの値上がりが著しいため、ブルゴーニュ好きが満足できる品質で価格が控えめなピノ・ノワールとシャルドネを探すことが出張の目的でした。
先に結論を申し上げてしまえば、今回は残念ながら目的に見合うワインは見つからなかったのですが、あまり日本では知られていないオーセロワのテロワールや産出されるワインの特徴など、現地ならではの情報を知ることが出来ました。
Auxerrois オーセロワ地区
オーセロワは、シャブリをぐるりと取り囲むように位置するグラン・オーセロワ地区の中の1つのアペラシオンで、オーセールの南部と南東部のおよそ10村を指します。
シャブリと同じく石灰質(泥灰=キンメリジャン・マール)に富んでおり、シャルドネとアリゴテ、ピノ・ノワールが有名ですが、他にガメイやソーヴィニヨン・ブランも造られています。また、オーセロワ特有の希少なブドウ品種として赤ワイン品種のセザールと白ワイン品種のサシーやムロンなどもあります。
このオーセロワで村名を名乗れる産地として、Irancy (イランシー)とSaint-Bris (サン・ブリ)があり、とても個性的なワインが造られます。
【Irancy イランシー】
※1999年にAOCブルゴーニュ・イランシーから独立し、AOCイランシーになりました。
テロワール: ブドウ畑の斜面に囲まれた盆地で、標高は130~150m。キメリジャンの泥灰土が多く、褐色の石灰質の 表土ではピノ・ワールがよく育ちます。日照の向きは様々ですが、南・南西向きの畑が比較的多くあります。
ブドウ品種: ピノ・ノワールとセザール。ヨンヌ県で唯一、赤ワインのみが認められているAOCです。
ワインの特徴: イランシーのワインの最大の特徴は、ピノ・ノワールをメインに、伝統的品種のセザールを10%まで混ぜる ことが許されていることです。セザールは色が非常に濃く、香りが高く、タンニンが豊かな品種です。オーセロワでは日照量が少なくブドウが熟さないため概してミネラルが強くタイトなワインになります。そ のため、イランシーではセザールをブレンドして色調を濃くし、赤い果実の香りと果実味を補強するととも にしっかりとしたストラクチャーを与えて熟成ワインとしても楽しむことができるワインを造っています。
【Saint-Bris サン・ブリ】
※2003年にVDQSソーヴィニヨン・ド・サン・ブリが昇格し、AOCサン・ブリになりました。
テロワール: 土壌はオーセロワと同じく泥灰土中心で、最良の畑はブドウ が理想的に熟す北向きの斜面だと言われています。サン・ブ リもシャブリのようにすり鉢状の盆地になっており、周囲の丘 にブドウ畑が広がっています。生産者は、雨量が少ない時に は水分が蒸発しないで根にしっかりと行き届くように藁を 周りに敷きつめるといった工夫をしていました。
ブドウ品種: 白ワインのみ。ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・グリ。 ブルゴーニュでソーヴィニヨンを栽培するのはサン・ブリだけです。
ワインの特徴: コート・ドーセールはシャルドネがメイン品種なのですがやはり力強さ・複雑味がやや欠け、幾分ニュート ラルな味になりがちですが、ソーヴィニヨンをメインとするサン・ブリは香りも果実味も非常に力強く味わいに 趣が感じられるものでした。色調はソーヴィニヨンから造られる淡い麦藁色または軽い黄金色であり、香り はグリーンノーズから柑橘系、トロピカルなライチなどに加えて花のニュアンスなど複雑で、アフターには スパイスやヨードが香ります。酒質の高いワインが多いため熟成にも向いており、熟成させると更に香り豊 かなワインになります。
ブドウの熟成を見極めるには?
ブルゴーニュ、コートドール南に位置する「コート・シャロネーズ」では、既存のワイナリーや取り扱いを検討しているワイナリーを訪問して回りました。
早いところではちょうど、クレマン用のシャルドネが収穫時期を迎えており、収穫を少し手伝わせてもらいました。小さい区画だったので、スタッフ全員で早朝から一気に収穫したので楽しかったのですが、粘土石灰質土壌なので靴底につく土の重さがすさまじく、短時間の手伝いなのにヘトヘトに・・・。非常に骨の折れる作業だと改めて実感しました。
収穫の際には、ご存じのようにブドウの熟度の見極めが必要になります。ブドウの熟度を知るには、糖度(潜在アルコール度)とポリフェノール熟度が重要です。糖度については、ほぼ全ての生産者が 糖度計を使って正確に計測していますが、ポリフェノール熟度は、実際にブドウを食べてみてそのテイストを見るのと、実の中で最後に熟す「種」がどれだけ熟しているかで判断します。
充分に熟していればブドウの種はこげ茶色になっており、まだ若いものは薄緑からほんのり茶色になるくらいです。判断する色合いは、黒ブドウ(ピノ・ノワール)でも、白ブドウ(シャルドネ)でも同じであり、ブドウの果肉の甘さや酸度よりもこの『種の熟度』で収穫する区画を決めていくそうです。
もちろん糖度も含めた総合的な判断にはなるのですが、畑で簡単にブドウの熟度を推し測るには最適な方法だと感じました。
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