【インバウンド対策★虎の巻★】 宗教からベジタリアンまで・・・『食事規定』を整理します! (広報 浅原 有里)
現在、国を挙げて外国人旅行者の誘致に取り組んでいますが、実際にその効果はすさまじく、10年前の2007年に約835万人だった訪日外国人旅行者数は、2017年では約2869 万人と、わずか10年で3倍以上に増加しました。(日本政府観光局調べ) そして人数の増加に伴って国籍の多様化も進んでおり、タイやインド、マレーシア、インドネシアなど東南アジア諸国やヨーロッパ、オセアニア、中東からの旅行者数も大きく伸びてきています。 そして、そんな外国人旅行者の方々の最大の楽しみといえば、和食を中心とした食の体験です。実際に2016年の観光庁の調査でも「訪日前に期待していたこと」の第1位(69.7%)が「日本食を食べること」でしたし(※2016 年観光庁の訪日外国人消費動向調査)、日本での食の体験に大きな期待をかけていることが伺えます。 しかし先述のように多様化する国籍・文化をもつ外国人に対して、彼らの宗教や文化に根付く『食事規定』への対応が課題となっています。 この『食事規定』は非常に多様ですし、日本では調理環境を整えることすら難しい条件等もあるため、全てに対応することは不可能かもしれませんが、まずは正しい基礎知識を持てるように整理してみたいと思います。
【食事規定の種類】
食事規定を整理するにあたり、以下の3つに分けて考えてみます。
① 食べてはいけないもの(宗教)
宗教上の教義や信念に関する理由で食べることを忌避しているもの。
食べてしまっても健康上の影響はないが、深刻なトラブルを引き起こす可能性が高いため、注意が必要です。
② 食べることができないもの(アレルギー)
健康上の理由で一切口にすることができないもの、最悪の場合には死に至ってしまうアレルギーなど。
対象の食材を扱う場合には細心の注意が必要であり、お客様に対しても事前に確認を取ることが重要。
③ 食べたくないもの(ベジタリアン)
個人の主義や嗜好に関する理由で食べることを忌避しているものが対象となります。
★注意点★
※①②③の分類に関わらず、食への考え方には個人差が大きいため、柔軟に考える必要があります。
※『食事規定』をもつ方は、食べられるかどうかを判断するため、正確な情報が必要です。
お店で扱っている食材と料理の内容について、日本語と英語が併記されたメニュー等を用意することが求められますし、無用なトラブルを避けることにもなります。
【①食べてはいけないもの(宗教)】
<共通する注意事項>
★出汁(動物性)
カツオなどの動物性食品を使った「出汁」は、魚食を禁忌とする宗教 (ヒンドゥー教、ジャイナ教)やベジタリアンのお客様には使用することはできません。
★ブイヨン、ゼラチン、肉・魚エキス
これらの食品には、鶏・牛・豚・魚の肉や骨が使われています。様々な料理、菓子、飲料などに使用されており、ごく少量で分かりづらい場合も多いため、十分な確認が必要です。
★動物性油脂、加工油脂
バター(牛乳の脂肪)、ラード(豚の脂肪)、ヘット(牛の脂肪)、鶏油、魚油、馬油などの動物性油脂には注意が必要です。加工油脂であるマーガリンにも、原料として動物性油脂が使われている場合もあります。ショートニングは、基本的には植物性油脂を原料としているが、製造に使われる乳化剤に動物性油脂が使われることもあります。
【②食べることができないもの(アレルギー)】
<食物アレルギーの種類> ※深刻さは人それぞれ。最悪は死に至る場合もあります。
★皮膚粘膜症状 ・・・ 皮膚に湿疹やかゆみがみられる
★消化器症状 ・・・ 腹痛や吐き気を催す
★呼吸器症状 ・・・ くしゃみが出る、息苦しくなる
★アナフィラキシー ・・・ 全身で起こるショック症状
<消費者庁が表示義務等を規定している品目>
★必ず表示される7 品目
そば、落花生 ・・・ 食物アレルギーの症状が重篤のもので、微量でも表示が義務づけられている
卵、乳、小麦、えび、かに ・・・ 食物アレルギーの頻度が高いもの
★表示が奨励されている 20 品目
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、ごま、カシューナッツ ・・・ 過去に一定頻度で発症が報告されたもの
<外国人旅行者に対して、特に注意すべき種類>
★落花生(ピーナッツ)アレルギー
アレルギー症状が重篤であることが知られており、欧米では、食物由来のアナフィラキシーで死亡する例の大半はピーナッツアレルギーである。ピーナッツバターやお菓子だけではなく、バンバンジーや担々麺、炒め物などの料理にも使用されることがあるため注意が必要。
★小麦アレルギー
小麦に由来するアレルギーであるセリアック病はEUでは推計で500万人以上いるほか、アメリカデータは100人に1人がセリアック病である。これらの疾患は呼吸器系に出たり、下痢や便秘に出たりするなど、人によって症状が極めて様々であり、唯一の治療法が無グルテン食(グルテンフリー)を厳守することだと言われている。
発酵食品が多い日本では、味噌、醤油、酢などの基本調味料にもグルテンが含まれているので注意が必要である。
【③食べたくないもの(ベジタリアン)】
ベジタリアンは世界各地に分布しており、特にアジアと欧米に多くいます。その語源は、ラテン語の「vegetus(活気のある、生命力に満ち溢れた)」であり、「Vegetable」ではありません。つまり、ベジタリアンは「野菜のみを食べる人」という意味ではなく、「健康で活気のある、生命力に溢れた人」という意味を持つ言葉です。
ベジタリアンは、単に肉・魚など動物性の食品を食べない人たちのみではなく、ライフスタイルなどにより、さまざまなタイプがあります。
<ベジタリアンが食べない、又は食べないことがある食品>
★肉全般 ★魚介類全般 ★卵(一部) ★乳製品(一部)
★根菜・球根類などの地中の野菜類(一部) ★五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)
<代表的なベジタリアンの種類>
★ビーガン (Vegan)、ピュア・ベジタリアン (Pure-Vegetarian:純粋菜食)
一切の動物性食品(肉類・魚介類・乳製品・卵など)のほか、蜂蜜も食べず、革製品などの製品等も使用しない。
果食主義者のフルータリアン (Fruitarian)は植物を収穫しても死滅しないように実や葉だけを食べ、根などは食べない。
★ ラクト・ベジタリアン (Lacto-Vegetarian:乳菜食)
植物性食品に加えて乳・乳製品などを食べる。
★ ラクト・オボ・ベジタリアン (Lacto-Ovo-Vegetarian:乳卵菜食)
植物性食品と牛乳やチーズなどの乳製品・卵を食べる。欧米のベジタリアンの大半がこのタイプである。
★オリエンタル・ベジタリアン (Oriental Vegetarian:仏教系菜食)
菜食主義ではあるが、五葷(ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)は食べない。
★ペスキタリアン (Pescetarian:魚菜食)
菜食に魚介類を加えた食事法で、ペスコ・ベジタリアン (Pesco-Vegetarian)とも呼ぶ。
★ポヨ・ベジタリアン (Pollo-Vegetarian)
牛などの動物は食べないが、鶏肉と魚介類は食べる部分的な菜食主義者。
来年にはラグビーワールドカップが日本で初開催されますし、2020年はオリンピック/パラリンピックの開催が予定されており、更に多くの外国人旅行者が押し寄せてきます。
彼らが来店した際に無用なトラブルを避けるために、また全ての方に食事を楽しんでいただくためにも、少なくとも貴店の料理がどこまで対応できるのかを説明できるようにしておくと安心ではないでしょうか。今回のニュースレターを食事規定の “早見表”としてお手元に置いていただけたら幸いに思います。
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