気候変動とワイン造り~ADVICLIMが示すブドウ栽培の未来③~ 末冨春菜

気候変動とワイン造り~ADVICLIMが示すブドウ栽培の未来③~  末冨春菜

地球上で生きている私たちにとって切っても切れない地球温暖化の問題。
第一回目は、導入編として、ブドウ栽培における気候変動の概要をご紹介しました。
https://firadis.net/column_pro/202503/
二回目は、主要な短期的アプローチについて、ADVICLIM※の提言と、実際の生産者の導入例をご紹介しました。
https://firadis.net/column_pro/202510-2/

最終回となる今回は、主要な中期~長期的アプローチをご紹介したいと思います。
まずは前回の振り返りとして、ADVICLIMがまとめた短期~長期的な対応策と、気候変動への効果の表を振り返りましょう。

※ADVICLIM・・フランス国立農学研究所(INRA)やドイツのガイゼンハイム大学をはじめとした国際的パートナーによる気候変動へのブドウ栽培の適応方法を検討したプロジェクト

 

中期的なアプローチ

今回は主要な中期〜長期の適応戦略について見ていきたいと思います。

① クローンの選択

同じブドウ品種であっても、クローンによって成熟時期にはバラつきがあります。ADVICLIMの調査では、主要なブドウ品種の多くで、クローン間で8〜10日の成熟度の差が見られることが分かっており、「成熟が遅い晩熟クローンを選択し、収穫時期を遅らせる」ことを提言しています。
この方法は、新しい畑にブドウ樹を植え付ける際にすぐに利用でき、生産サイクルをシフトして成熟を遅らせ、暑すぎる時期に収穫することを避けることができます。また、産地の個性を大きく変えない点もメリットです。

< ワイナリーでの導入例 >

★ マッサル・セレクションへの回帰

バルバレスコのガヤは、気候変動への適応のため、「マッサル・セレクション*に回帰した」と話します。現在のガヤのブドウ畑の平均樹齢は55年で、特に古いものは樹齢60〜80年にも及びます。これらは全てマッサル・セレクションで植えられており、一本一本の樹が異なる個性を持つため、非常に興味深いとガイア・ガヤは語ります。

1980年代後半にネッビオーロのクローン・セレクションが初めて利用可能になった際、優れた品質と安定性があると考え、ガヤでは植え替えの際にはクローン・セレクションを採用するようになりました。当時入手可能になったクローンは、通常よりも早く熟し、色味の濃さ、果実味の豊かさ、そして僅かに高いアルコール度数をもたらす特性がありました。その当時、ネッビオーロを完熟させるのは難しく、果実味のあるワインを造るのは非常に困難だったため、このクローンが魅力的に映ったのです。
しかし、気候変動により、成熟が早く、わずかに高いアルコール度数をもたらすクローン・セレクションの区画は、新たな問題に直面しました。そこで彼らは、約15年前からマッサル・セレクションへの回帰を決めたのです。

遺伝学の専門家の助けを借りて、ガヤは過去6年間にわたり集中的なマッサル・セレクションを進めてきました。この活動の中で、彼らの最も古い6つのブドウ畑から、288種類もの異なるネッビオーロのクローンが特定され、現在の再植樹にはこれらのクローンが使用されています。「これらのクローンは、長期にわたりこの地で栽培されてきたので、この地域の気候や環境を理解し、適応していく驚くべき能力を持っている」とガイア氏は話します。
さらに、6年間の調査の中で、カビ病や幹の感染症などの病気への耐性を見ており、テロワールへの適応力が最も高く、最も回復力があると判断されたものが選ばれています。また、病気の症状を示したにも関わらず、時間の経過とともに病状が軽減し、回復しているブドウ樹についても調査を続けています。これらの「回復力のある樹」は、他のどの樹よりも強くなる可能性があり、将来的に選抜に含められる可能性があります。

ガヤ以外にも、シャンパーニュ、ブルゴーニュ、イタリアなど様々なエリアの生産者が、畑の特徴を語る際に「マッサル・セレクションで植樹された区画」という点を協調しているのをよく耳にします。ガイア・ガヤ氏が話すように、特定の地域で長く根付いてきたブドウ樹は、その地においてより適応力を発揮する不思議な力があるのだと信じずにはいられません。

*マッサル・セレクション:畑のブドウ樹から優れた樹を複数選び、台木に接ぎ木して育てていく方法。対してクローン・セレクションは、単一の苗木を繁殖させるもの。1つの区画がすべて単一のクローンに統一される。

 

★ 古樹のDNAを利用する

ドイツ・モーゼルのカール・ローウェンは、この歴史ある産地において、所有する畑の大部分が樹齢100年越えの古樹であり、さらに全体の15%程度がプレ・フィロキセラの接ぎ木なしのブドウ樹であるという、ドイツでも屈指の素晴らしい畑を有しています。
古樹のメリットは、収量は低くなるものの、より凝縮感のある複雑なブドウを育むこと(=高品質のワイン)。そして、根系が発達し、根が地中深くまで伸びているため、深い地下水が利用でき、気候変動に適応力があることを、カール・ローウェン、および他の多くの生産者が指摘しています。さらに、古樹は樹勢が弱く、ブドウがゆっくりと育つため糖度の蓄積も遅く、低アルコールですが、より複雑で余韻の長いワインを生み出すとしています。

 

Carl Lowenの樹齢100年越えの古木
Carl Lowenの樹齢100年越えの古木

カール・ローウェンは、若い区画では高収量かつ果実味豊かなブドウが育つものの、ワインのミッドパレートに厚みがなく、余韻は短く凝縮感に欠けることを認識し、自身の樹齢100年越えの区画からのマッサル・セレクションで畑を植え替えていくことを決めました
1980年頃から取り組んだ結果、現在は100%マッサル・セレクションで植え替えられた畑となっており、若い区画ながらも、樹齢100年越えのリースリングのDNAを持つ畑であることから、「収量も低くなり、味わいの凝縮感も高まった」と話しています。

 

★ 種子からの栽培

バローロのロアーニャもマッサル・セレクションを導入していますが、さらに、彼は乾燥に適応したネッビオーロの新たな株を見つけるため、より未来を見据えた研究として2009年から「種子からの研究」を行っています。具体的には、ブドウの種を植え、そこからブドウ樹の苗を育てていくのです。ブドウ栽培において、種子から育てることはタブーとされていますが、それは遺伝的な特性が安定しない(親と同じ品種にならない)ことが最大の理由とされています。
そんな中、この実験を率いるルカ・ロアーニャ氏はこのように語ります。「現在ブドウ品種は世界に約6,000〜7,000種存在するが、これはメソポタミア時代(8,000年前)から、花の交配や修道士の尽力によって長年にわたり進化してきた結果であり、種子からの栽培はその多様性を生み出す方法だ。種子からの繁殖は親株に良く似ているものの、異なる独自の特性を持つ子株を得ることが可能になる。この技術は、ブドウ栽培の起源以来そうだったように、新品種の選抜において興味深い可能性を切り拓くだろう。」

彼は、種子の記憶が適応に良い影響をもたらすと考え、特に乾燥したシーズンに収穫されたブドウの種を用いることを目指しています。この研究のアイディアは、ルカ氏がとある有名シェフと交わした議論に影響を受けているといいます。そのシェフは、自分の庭でトマトを育てていますが、乾燥したシーズンに採れたトマトの種を使うと、その新しい樹は乾燥の影響を受けにくくなる、という経験をルカ氏に話したようです。
この長期的な研究はまだ進行中で、成果を出すまでに、さらに10〜15年の研究と作業が必要になると見積もっています。ルカ氏は、暑かった2023年のブドウの種からブドウ畑を植えることを計画しているそうで、将来どのようなネッビオーロのクローンが生まれるのか非常に気になるところです。

 

② 台木の選択

干ばつが進行する状況下において、台木はブドウ畑を水不足ストレスに適応させるための主要なツールです。ADVICLIMでは、「干ばつに強い台木(例:140 Ruggeriや110 Richterなど)を選択する」ことを提言しています。
台木はブドウ樹の生育(水分の供給、樹勢)を根本から条件付けます。水不足ストレスに強い台木を選ぶことは、生産コストを抑えつつ環境負荷をかけずに水分不足を克服できる、持続可能なアプローチです。

< ワイナリーでの導入例 >

シャンパーニュ、ジャック・セロスのギヨーム氏は、2003年頃から温暖化による変化を感じるようになったと語り、温暖化に伴う春の霜や暑く乾燥した夏に対応するため、台木の選定を重要なプロジェクトとして進めています。それまでは、シャンパーニュの伝統的に使われてきた41Bという台木を採用してきましたが、現在は420A、3309など、異なる台木を導入し、様々なテストを続けています。また、ブドウ畑の一部を新しい台木の選択で植え替える計画があるそうです。

台木の種類 特徴と目的
41B シャンパーニュのチョーク土壌(白亜質土壌)で非常に古典的に使用されている台木
420A(試験中) 非常に低い収量と低い活力(強度)をもたらす台木を試している
3309(試験中) 高い活力を持つ台木。ブドウ樹にストレスを与えるため、カバークロップ(下草)との競争を意図して使用されている

ヴァッハウのプラーガーも、温暖化への対応策として「台木の選択・見直し」を検討項目に入れていると、最近の来日時に明かしていました。

 

③ 植栽システム

ADVICLIMの提言書には詳細な植栽システムへの提案はありませんが、ブドウの樹を畑に植える際の方法や配置などについて、生産者から聞いた内容をお伝えします。

< ワイナリーでの導入例 >

★ 植樹密度を高める

植栽密度とは、1haあたりに植えるブドウ樹の本数を指します。水分ストレスが懸念される地域では、ブドウ樹同士の競争を減らすために、植栽密度を低くするという選択肢が取られることがあります。(例:スペイン、カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ州など)
一方で、温暖化への適応のため、植樹密度を高める取り組みもよく耳にするようになりました。ジャック・セロスのギヨーム氏によると、シャンパーニュは10,000本/haの密度制限がありますが、10年程前に20,000本/haの密度で植栽を試みたそうです。これは、ブドウ樹間の競争により、水分や栄養を求め、根を深く張らせるための取り組みです。残念ながら、この20,000本/haの畑は、2年後にCIVC(シャンパーニュ委員会)によってアペラシオンを剥奪されてしまったと言いますが、現在新しい植栽を行う際は、アペラシオンを維持するため、最大密度である10,000本/ヘクタールを守りつつも、新しい台木を使用し、植栽前にカバークロップを導入し、直接深い根を張らせる競争を与えるようにしています。

一方、ブルゴーニュには植栽密度の制限がないため、アルヌー・ラショーは積極的に高密度の植栽を導入しています。ブルゴーニュの現在の平均密度は10,000本/haですが、フィロキセラ以前のブルゴーニュでは、棒仕立てを用いて20,000本〜25,000本/haという高密度で植樹されていたそうです。その後、フィロキセラによる植え替えと機械化により、垣根仕立てが一般的となりましたが、アルヌー・ラショーは、古い習慣にインスパイアを受け、自身の畑で17,000本/haの植栽を行っています。
彼の経験によると、1haあたり1万本を超えるあたりから、樹同士の競争が起き、より深く根を伸ばし、より土壌の細かい要素を取りに行くようになると実感しているそうです。さらに、17,000本/haの区画では、生えてくる野草をそのままにしている事から、近隣の様々な生産者に「ブドウ樹が枯れてしまうぞ」と言われたそうですが、今ではその区画は最も美しい区画の1つだと誇らしげに語ります。
もちろん最初の1~2年は苦しむ樹があり、枯れる樹もありますが、地中深くまで根を張り、他の草や他のブドウ樹との競争に打ち勝った強い個体だけが生き残ること、さらに収量が減り、凝縮したブドウが収穫できることから、温暖化・品質の両面で高密度の植栽に成果を感じているとのことでした。

 

★ 配置の工夫

ブルネッロのカルト的造り手、チェルバイオーナは、新しい畑を植える際に、14,300本/haという高い植樹密度+セットンス(Settonce)という配置を用い、土壌の中の根の空間、日射量が全ての樹に均等にバランス良く共有されるよう設計したといいます。セットンスでは、畑の各ブドウ樹が、その周囲にある6本の樹全てから等しい距離になるよう配置され、それらを線で結ぶと、それぞれの樹から周囲に向かって6つの正三角形が伸びているような形になります。
この畑では、植密度が高いので4輪トラクターは入れず、1年の特定の時期にのみ、2輪の手動耕うん機が使用できるそうです。鍬を使い手作業で耕すため多くの労働力が必要になりますが、トラクターを使用しないため土壌を柔らかく保つことが出来る、とそのメリットを語ります。


日射によるダメージを軽減するために、畑の植え替え時に列の向きを北東向きに変える取り組みも時折耳にしますが、これはなかなか大変な作業であるようです。
また、ナパ・ヴァレーでは、畑の日射量を高めるためにメインストリートである州道29号線に沿って平行に植えるのが歴史的な慣習でしたが、現在は日射によるダメージを減らすため、道路に対して垂直にブドウ樹を並べるように変更されているそうです。

 

④ 適地選定

広域だけではなく、よりミクロな小域レベルにおいても、ワイン生産者が気候変動に適応できるような地形や土壌条件が数多く存在します。ADVICLIMは、地域の「ミクロクリマ(微小気候)」を分析し、より冷涼な環境を持つ畑を選び直すことも中期的な戦略だと提示しています

標高・斜面の向きの活用
同じ地域内でも、丘陵地の標高や斜面の向きが異なれば、気温や日照量も大きく変わります。丘の頂上と麓では気温が数度異なることがあり、より冷涼な場所や、日照時間が少ない北向きの斜面を選ぶことで、成熟を遅らせることが可能になります。

土壌の深さの活用
干ばつが増加する状況では、保水性が高い深い土壌が有利になります。水分ストレスに敏感な品種は保水力の高い場所に植え、水分ストレスに強い品種をより乾燥した土壌に移動することで、適応が可能になります。

< ワイナリーでの導入例 >

★ 土壌の保水性と品種の関係

オーストリア・ヴァッハウは、グリューナー・フェルトリーナーとリースリングによる偉大な白ワインが有名ですが、この地のトップ生産者プラーガーが品種に合わせた植栽の例を話してくれました。リースリングに比べると、グリューナーは渇水を嫌います。彼らのグリューナー・フェダーシュピールの畑は、相性の良い腐植土に富んだ保水性の高い深い土壌に植えられています。では、何故この畑からスマラクトワインを造らないかと聞いたところ、スマラクトワインには複雑さを生み出すためのある種のストレスも必要なため、渇水ストレスを受ける片麻岩の石が多い土壌の方が適している、という回答でした。フェダーシュピールの畑ではブドウ木がそこまでのストレスを感じないため、軽やかなスタイルには最適だそうです。
また、別のヴァッハウの生産者から、斜面上部の水はけの良い区画にはリースリングを、傾斜が緩やかで保水性が高まる斜面下部にグリューナーを植える、という話も耳にしたことがあります。

 

★ 深い土壌がもたらすもの

温暖化の影響は、ブルゴーニュのテロワールの評価を「逆転」させ始めています。その典型例が、かつて「タフで角張っている」と軽視されていたポマールです。ブルゴーニュの権威であるジャスパー・モリスMWは、気候変動がもたらすパラダイムシフトについて、以下のように述べています。「歴史的に、冷涼な年には表土の浅い南向きの斜面に植えられたブドウ畑から素晴らしいワインが造られた。しかし、気温上昇により、浅い土壌はすぐに干上がり、水分ストレスによる熱を入れたような味わいなど品質低下のリスクが高まっている。気候変動により、特定のテロワールがもたらすものが逆転し始めているのだ。」

ポマールの畑の多くは標高が低い場所に位置しており、石灰質の表土が2メートルほどと深くなっています。かつては多湿が懸念されたこの土壌の高い保水力が、乾燥化する現代においてブドウ木を水ストレスから守り、質の高い果実を安定的に収穫できる強みとなっているのです。

 

★ 標高の活用

エレガントなブルネッロを生むレ・ポタッツィーネは、かつて標高の高さから冷涼すぎてサンジョヴェーゼの成熟は困難と判断され、見向きもされない場所であった標高507mの区画、レ・プラータに早くから目を付け、この畑でのワイン造りを1993年より開始しました。
「適切な栽培をすれば、フレッシュで個性的なブルネッロが生まれる」と信じた彼らの予感は正しく、今では質の高いサンジョヴェーゼを生むエリアの1つとして認知され、彼らのワインがその高いポテンシャルを証明しています。現在では、ボルゲリを含むトスカーナの多くの生産者がこぞって標高の高い畑に投資をしていると言われています。

 

標高の高さが特徴のレ・ポタッツィーネの畑
標高の高さが特徴のレ・ポタッツィーネの畑

 

④ ブドウ品種の選定

ADVICLIMの調査では、ブドウ品種の選択や灌漑の使用といった長期的な対策が最も効果的だと結論を出しています。しかし、ブドウ品種の変更は、ワインのスタイルと品質に大きな変化をもたらすため、ワインのTipicity (産地の個性)を守りたい生産者にとって必ずしも最適な選択肢ではありません。このジレンマの中で、ワイナリーはどのような適応策を取っているのでしょうか。

< ワイナリーでの導入例 >

★ シャンパーニュで注目されるプティ・メリエ

シャンパーニュの生産者に「温暖化への対策は?」という質問をぶつけると、「プティ・メリエ種の導入」という回答をよく聞くようになりました。プティ・メリエは古くからシャンパーニュ地方に根付く品種ですが、シャンパーニュ全体のブドウ畑の0.1%未満にとどまり、忘れられた品種ともいわれています。プティ・メリエは晩熟な品種で非常に酸が高く、かつてのシャンパーニュでは熟すことができないため敬遠されていたのです。

SO2無添加のシャンパンを生み出すレコルタン・コーペラトゥール、シャヴォストは2024年以降、プティ・メリエを徐々に植樹していると話します。彼らはムニエも多く持っていますが、温暖化によって果皮が薄くて繊細なムニエ(湿度に弱く、カビ病や日焼けへの耐性が低い)が特に影響を受けているため、徐々にプティ・メリエに植え替える計画を立てています。シャヴォスト曰く、プティ・メリエ(白ブドウ)はバナナやマンゴーを思わせるエキゾチックな果実味がありながら、十分に成熟した状態で収穫しても、高い酸をしっかりと維持してくれるところが魅力だとのこと。
シャンパーニュでは、主要3品種以外では、ピノ・ブランやピノ・グリ、アルバンヌも認められていますが、彼らにとってはプティ・メリエが一番魅力的に映っているようです。

シャヴォストと同じシャヴォ村を拠点とするラエルト・フレールも、自然な酸の高さを評価し、プティ・メリエを含む古代品種も栽培しており、A.ベルジェールも今後ポテンシャルのある品種としてプティ・メリエの名を挙げています。

 

★ 他産地の例

ボルドーにも、静かな変化の波が押し寄せています。2021年には、気候変動に適応してワインのバランスを維持するため、INAOによってトウリガ・ナショナルを含む赤ワイン用ブドウ4品種と、アルバリーニョを含む白ワイン用ブドウ2品種が正式に認められるようになりました。

ポムロールのシャトー・クリネの畑はメルローが主体となっていますが、2020年頃よりメルローを一部引き抜き、カベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えているといいます。理由は2つあり、1つはシャトー・クリネの一部の区画が、メルローよりカベルネ・ソーヴィニヨンに適しているテロワールだと分かったこと、2つ目は温暖化の影響を受け、カベルネ・ソーヴィニヨンの方が暑さに耐えられるからだと言います。2023年の時点で、2品種の比率は、メルロー75%、カベルネ・ソーヴィニヨン25%となっています。

また、カリフォルニアのNotre Vue Estate Wineryでは、冷涼な気候を好むピノ・ノワールをこれ以上植えないようにし、その代わりに、短期的にはローヌ品種を、そして長期的には20年後を見据えて、スペインや南ギリシャの品種(グルナッシュ・ブランなど)を植えることを検討しているといいます。

冷涼産地として知られるアルト・アディジェも例外ではありません。当地のオーガニックおよびビオディナミ生産者であるアロイス・ラゲデールは、高地栽培が気候変動への適応策として一般的に語られるようになる以前から、畑を標高の高いエリア(最大914m)に設け、更に、冷涼な北イタリアにおいて前例のなかったルーサンヌ、マルサンヌ、ヴィオニエ、アシリティコといった温暖気候向きのブドウ品種の導入・栽培にも取り組んでいます。


全3回のコラムを通して、世界各地のワイン生産者が、いかに真摯に気候変動への適応に向き合っているのかをご紹介してきました。ここで取り上げたのは、数えきれないほど存在するアプローチのごく一部に過ぎませんが、とりわけ近年注目度が高まり、現場でも頻繁に語られるようになった象徴的な事例を中心に整理しています。

それぞれの取り組みに共通しているのは、自らの土地のテロワールを深く理解し、伝統を尊重しながらも、革新的な品種や技術を柔軟に取り入れていく姿勢です。温暖化という大きな課題に対し、生産者たちの試行錯誤は今なお続いています。本コラムが、彼らの努力と多様なアプローチへの理解を深める一助となれば幸いです。

 

【参考出典元】

LIFE ADVICLIM “Adapting Viticulture to Climate Change Guidance Manual to Support Wine Growers’ decision-making” 2016年

Paris Wine Advocate Symposium 2023 Masterclass Full

https://www.wine-searcher.com/m/2024/12/wine-drinkers-thirsty-for-change

https://www.wine-searcher.com/m/2022/09/californias-cool-loving-grapes-swelter

https://www.roagna.com/en/stories/experimentation-with-seed-vines/

https://www.wine-searcher.com/m/2022/06/pommard-burgundys-next-big-thing

 

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