存在を消して、
ワインを感じる。

INTERVIEW / 01
ASIA’S BEST SOMMELIER AWARD 2025

小澤一貴が語る、
ワインとグラス、
そして体験

小澤 一貴 / Crony Owner Sommelier

オーナーソムリエの小澤一貴さんとオーナーシェフの春田理宏さんが 2016 年、東京・西麻布にオープンした「Crony クローニー」。フレンチをベースとしたイノベーティブな春田さんの料理と、ワインの本質を知り尽くし、独自の解釈でワインを提供する小澤さんのサービスにより、唯一無二の存在感を放っている。2021年には現在の東麻布に移転し、『ミシュランガイド東京2022』で2つ星を獲得。ワインのセレクトや温度やタイミング、料理や空間まで含めて店を演出する小澤さんに、Sydonios(シドニオス)の魅力とはなにかについてうかがいました。

INTERVIEW FILM
01 / WINE & GLASS

ひとつとして、同じ条件はない

Q.Cronyでは、ワインとグラスをどのように合わせていますか。

このワインの銘柄にこのグラスというのは、私のなかでは特に決めていません。一般的な常識はありますが、すべてそれに当てはまるわけではないですから。ワイン 1 本 1 本のコンディションも違いますし、お客さまとお話をして、その方がなにを求めているのか、どれくらいのワインレベルの方なのか、そのワインをどのように飲みたいかによっても、グラス選びは変わってきます。たとえば今日は暑いから冷やし気味に飲みたい、あるいは香りを引き出すためにややワインの温度を上げてほしいなど、お客さまの要望に合わせられるようにグラスの数というのは、それなりに揃えています。

Q.Sydoniosは、どのような場面で使うことが多いですか。

ペアリングで使うことが多いですね。たとえば日本料理は、素材の味を引き立たせるために引き算に引き算を重ねて、その素材の持つどの部分を、どう楽しませたいかと考えます。春田の料理も同じく洗練された、研ぎ澄まされたものです。玉ねぎを使う時もそれをさまざまなスタイルで調理し、ひとつの素材を 360 度から感じてもらえるようにする。そうやって春田の料理が、ひとつの素材の多面性を研ぎ澄ませて見せるように、Sydonios(シドニオス)もワインの一部分をシャープに抜き出しながら、全体感を立体的に捉えられるグラスなのです。Sydonios(シドニオス)は人の感覚を鋭敏にすることができるグラスといえます。

Q.Cronyのペアリングで大切にしていることは何ですか。

ペアリングはシェフの世界観と自分のサービスを体感してもらう最良の方法だと考えています。お料理とワインそれぞれの説明も大事ですが、なぜこの料理にこのワインを合わせたかというストーリーがあるとより楽しむことができます。春田や私の海外での文化体験、それから日本各地の食材文化というものを、Crony(クローニー)の料理やサービスを通してお客さまに体験していただきたい。そのために私の言葉やワインの色、グラスのシェイプの美しさやテーブルウェアといったすべての要素があると思っています。映画や演劇と私たちがやっている仕事は、あまり変わらないのではないかと感じるほどです。

またレストランというのは「体験」を提供する場で、家庭ではなかなか使う機会のないワイングラスなどに、レストランで初めて触れていただくというのは大事なことのひとつ。Sydonios(シドニオス)のグラスというのはそれにふさわしい経験のできる、価値あるものといえます。

Q.ボトルで楽しむ場合、Sydoniosはどのように使いますか。

昔からのお客さまのなかには、やはりワインはボトルで 1 本飲まないとわからないとおっしゃる方がいます。そういうケースで Sydonios(シドニオス)を使うのは、ハイエンドなワインが多いですね。Sydonios(シドニオス)で飲むとワインの表現がはっきりするというか、さまざまな香りがばっと 1 時間も 2 時間も出続けるクラスなので、ワインに慣れていない方、カジュアルに飲みたい方だと逆に疲れてしまうかもしれません。そのあたりはお客さまのワインのレベルも見て選びますが、ワイン愛好家の方たちには、Sydonios(シドニオス)のグラスは大変に好評です。

02 / EXPERIENCE

佇まいと、快適さ

Q.Sydoniosの軽さや手触りを、どのように感じていますか。

レストランでは快適性を非常に重要視しています。たとえフォルムが美しくても重いグラスだと、それを手で持ちつつ、飲み続けるうちに疲れてしまいます。Crony(クローニー)はカトラリーも重いシルバーではなく、ステンレスを使っています。現代のレストラン料理は 2 皿、3 皿構成ではなく品数も多いですし、お客さまがどれだけ快適に過ごせるかというのは大事なテーマです。Sydonios(シドニオス)を手に持った時の軽さや手触りというのは、2 時間から 3 時間かけて食事をするあいだ、いつも快適に過ごせるという意味でも現代性に合っていると感じます。

Q.テーブル上でのSydoniosの見え方はいかがですか。

視覚については逆に、シャープすぎないのがいいと思っています。Crony(クローニー)では「五感で楽しんでいただく」のをテーマにテーブルウェアを選び、料理もそのコンセプトに沿っていますが、Sydonios(シドニオス)は、男性が『カッコいい』と感じるグラスというよりは、女性が「カワイイ」と思うようなハンドメイドならではの柔らかさや和みがあります。

それから、ステムの高さのバランスもいいなと感じていて。一時期、すごく背の高いグラスが流行ったことがありました。それだと、お客さまが隣に座っている方と話す時に、グラスが少し目に映り込んでしまうんです。でも Sydonios(シドニオス)は、視覚に入ってこない。話しながらグラスに手を伸ばして、ワインを飲んで、という一連の動作のなかの目線として見ても理想的です。ハンドメイドのグラスのなかには、並べてみるとステムの太さがかなり違うというものもありますが、Sydonios(シドニオス)はコンディションがいいというか、安定しているのも長所です。

でも Sydonios(シドニオス)は、視覚に入ってこない。

小澤 一貴 / CRONY
03 / PROFESSIONAL

生産者、インポーター、ソムリエ

Q.生産者やトップテイスターから支持される理由は、どこにあるとお考えですか。

ワインを造るなかで、生産者は毎年異なる香りの成分や味わいを、きちんと感じ取りたいと考えています。自分たちが目指しているところへ果たして着地できているのかを確認するためにも、グラスという道具が非常に大切になってくるわけです。

私は KENZO ESTATE でワイン造りに携わっていましたが、毎週ワインのコンディションを見るためにカーヴでテイスティングをしていました。そうやって 1 年中ワインを見ていくと、少しずつ変化しているのがわかります。

ワインの生産者のなかには、「液体の濃度や重さが日によって変わる」という人がいます。ワインの液体 1ml を 1g と考えると、満潮か干潮か、あるいは気圧の変化などで、数㎍(マイクログラム)変わってくる、と。その生産者が感じ取っているのは本当にわずかな差ですが、そのイメージというのは、私も同感できるところがあります。

Sydonios(シドニオス)は大変に軽いので、そのワインの比重の変化を感じやすい。生産者が抱くワインへのイメージをダイレクトに感じられるグラスなのです。生産者は非常に繊細に自分のワインを見つめているので、生産者から支持されるグラスというのは、やはりそれだけの価値があるといえます。

Q.プロのテイスティングにも向いているグラスでしょうか。

これからワインを勉強する人やソムリエを目指す人は、こういうグラスでテイスティングをすると、しっかりワインの味わいや香りを取れるのでお薦めです。ワインに慣れない初心者でも、比較的ワインの香りを感じ取りやすい。ワインというのはグラスの表面積の大きさとワインの容量バランス、そして温度で、成分としてどれだけ細かく香りや味わいが取れるかというのは大きく変わってくるものなのです。

Q.SydoniosとCronyのサステナビリティには、どのような共通点がありますか。

私たちのレストランでは、海の資源を守るために稚魚や絶滅危惧種は使わないようにしていますし、食品ロスの観点から規格外の野菜を仕入れてもいます。Crony(クローニー)には、『永続的な茶飲み友達』という意味があり、お客さまや生産者の方もふくめて、幸せな楽しい状態をずっと長く続けていきたいと考えています。サステナブルの方向性というのは、レストランを継続していくためにも大切なことだと感じています。

Q.これまでの多様な経験は、現在のサービスにどのように生きていますか。

さまざまな方向から、物ごとを見るのが好きなんです。ワインをソムリエとして見るのか、インポーターとして見るのか、生産者として見るのか。それによりテイスティングのテーマも変わってきます。経験というのはインテリジェンスを生むものですから、自分のなかの知性をきちんと育むためにも、多くのことを経験したい。そういう多面的な視点によって、ソムリエとしてグラスを選ぶにしても、提供するにしても、考え方が変わってくるのではないかと思います。

使用画像 20260520_0405.jpg / ワインを注ぐサービスの所作。プロフェッショナルの仕事へ接続
04 / KAZUTAKA OZAWA

小澤一貴というソムリエ

AWARD HISTORY 受賞歴
2025

Asia’s Best Sommelier Award

Q.「アジアのベストソムリエ賞」に選ばれた時のお気持ちは。

当日会場で発表されるまでサプライズだったので、選ばれた時はもう驚きしかありませんでした。誰が投票してくれたんだろう、海外から来てくださったお客さまかな、などと思い浮かべながら、ステージまで歩いたのを覚えています。コンクールは自分が勉強すれば優勝できますが、こういった賞はどこかで誰かが見てくれていた、日々目の前のお客さまに向き合ってきた結果ですから、本当にありがたいですね。自分の仕事がいい形で評価されたという意味では、一番うれしい賞といえるかもしれません。

Q.良いソムリエの条件とは何でしょうか。

ソムリエへのイメージというのはさまざまですが、「ワインを扱う人」と思ってる方が多いと思います。でも実際にソムリエというのは、レストランのなかで飲料を中心としてサービスに従事する人間であり、お客さまにいかに楽しんで過ごしてもらえるかが大切です。日本人は真面目なので、ワインを勉強して知識を持ち、ワインを理解していることが大切だと考えがちです。もちろん、お客さまの目の前に立った時に、お客さまを満足させるために知識は必要で、でもそれは自分のなかではひとつのコンテンツに過ぎません。ソムリエの資格を持っていればいい、というものでもないですしね。やはりお客さまをハッピーにできるのがソムリエなのではないか、と。私はじつは、今まで「ソムリエ」という肩書きを用いて働いたことはないんですよ。

Q.その考え方の原点はどこにありますか。

私の母は人のことが好きで、保険の営業をやっていました。私は小さいころ、よく一緒に行って仕事する母の姿を見ていた。でも、保険の商品を売るのが仕事なのに、保険の話をほとんどしないんですね。その姿から、大事なのは人間関係をつくることなのだと、小学生の時にはすでに学んでいたと思います。その影響もあって、お客さまとの距離をどれだけ詰められるかというのが、私にとっては今でも大事なテーマです。もちろん自分の居場所に線を引くお客さまもいるので、そういう時は踏み込みませんが、杓子定規なサービスだけはしたくないという思いは心のなかに大事に握りしめています。そのベースを作ってくれたのは、母の存在だったといえると思います。

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PROFILE

小澤 一貴

Kazutaka Ozawa

1974年、神奈川県生まれ。1994年よりフレンチレストラン「アピシウス」で働き、メートルドテルとなる。2002年より「Four Seasons Hotel 丸の内」のメインダイニング「EKKI」、さらにレストラン開業コンサルティングやワイン輸入会社を経て、KENZO ESTATEでワイン造りを経験。2007年より三ツ星「カンテサンス」のディレクトールに就任。2016年12月に「Crony」をオープン。ミシュランガイド東京2018で一つ星を獲得し、2022では二つ星へ昇格。同時にミシュラングリーンスターも獲得した。

存在を消して、
ワインを感じる。