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INTERVIEW / インタビュー
田邉ソムリエ

持っても持っていないような感覚で、 グラスが消えて液体が直接 入ってくるようなニュアンス。


田邉公一さんはワインディレクターであり、ソムリエです。レストランやイベントの飲料監修を行い、さらにワインを含めたお酒の価値、ライフスタイルにおける楽しみ方を提案しています。長年レコール・デュ・ヴァン講師も務めて、一般のワイン愛好家とも接点のある田邉さんに、Sydonios(シドニオス)を選ぶ理由について聞きました。


――Sydonios(シドニオス)との出会いを教えてください。

2020年の夏に、当時のインポーターさんから「新しいグラスを日本に輸入することになったので、お送りしていいですか」と言われて、届いたのがSydonios(シドニオス)でした。コロナ禍だったこともあって飲食店ではなく、どちらかというと自宅で使用してもらいたい、そのためにSNSなどで拡散して認知度を上げてほしいという依頼でした。グラスが特徴的できれいだし、写真映えもいいなと思って、撮影したのを覚えています。

――グラスが特徴的というのは、具体的にどういう部分についてですか。

グラスは、見た時の印象や存在感というのが大事だと思います。たとえばサーブする際に、ワインを注ぐ前にまずグラスをテーブルに置きますよね。すると「わー、このグラスで飲めるんだ」と、それだけで喜んでくださる方がけっこういらっしゃるんです。レストランのペアリングコースでそのたびにグラスを変えるというのは、そういう変化や驚きを大事にしている部分もあります。今は本当に多様なグラスが存在していますが、Sydonios(シドニオス)はなかでも見た目の美しさのインパクトは強いと感じます。

――Sydonios(シドニオス)でワインを飲んだ時の味わいや香りの印象はいかがでしたか。

手元に送られてきたのは、「Racine(ラシーヌ)」コレクションのうちの「L'Universelルニヴェルセル」と「L'Estheteレステット」でした。まず第一印象はやはり薄いし、軽いな、と。グラスを持っても持っていない感覚というか。ワインを飲んだ時も全然グラスを感じなくて、グラスが消えたというか、まさに液体が直接入ってくるようなニュアンスでした。それは過去にない新しい体感でしたし、進化系のグラスだという印象を持ちました。それまでのグラスというのは存在感があって、それがいいと思っていましたが、ある意味逆転の発想ですよね。メーカー側の資料に「インディビシュアルグラス」「見えないグラス」と説明されているのも納得できました。

――非常に繊細なグラスですが、ワイン愛好家が家で楽しむこともできるのでしょうか。

お客さまのなかには、レストランで新しいワイングラスを体験をしたあとに、「すごくいいから、買って家でも使ってみたい」という方がけっこういらっしゃいます。以前は、「シェフの料理を家で真似たい」というのが主流でしたが、それが今はグラスやお皿にまで広がっている。特にコロナ禍以降は、ホームパーティもふくめて、家飲みをより充実したいという方が増えました。
Sydoniosは(シドニオス)非常に薄く、繊細に見えるグラスなので、一般の方は「割れそう」「扱いが難しそう」と感じるかもしれません。でも決して、「薄い=弱い」ではないですし、毎日使うというよりも、特別なワインを開ける時に丁寧に使うと考えれば、Sydonios(シドニオス)は家庭でも十分に楽しめるグラスです。
加えて、ワイン全体のトレンドとしては量より質という流れがあって、リーズナブルなワインをたくさん飲むのではなく、高級ワインを少しずつゆっくり味わいたいという価値観が重視されています。高級ワインを飲むなら、家でもやはりそのワインの格に合うグラスを選びたい。だからSydonios(シドニオス)のようなグラスは、今後ますます需要が上がっていくでしょう。

――特別に豊かな食事の時間を紡ぐ時、またホームパーティをする時のテーブルコーディネート、グラス選びなどのコツを教えてください。

今はクロスを使わないレストランやホテルダイニングが世界中にあるので、家庭でもシンプルできれいなテーブルがひとつあればいいのではないでしょうか。ただ、できれば大きめのテーブルで、空間に余裕をもてるといいかなと思います。そこにSydonios(シドニオス)のようなシンプルな美学を持つグラスを置くだけで、華やぎが出ます。そういった第一印象の美しさというのもじつはとても大事で、それが人に心地よい印象を与える役割もあるのです。その意味で、ホームパーティなどには、まさにふさわしいグラスです。
家だと、じつはグラスの種類はそれほど必要ないですよね。私もたくさん持っていますが、結果的に使うグラスというのは2~3種類と限られています。そう考えると、Sydonios(シドニオス)2種類だけが棚をあけると美しく並んでいるというのも、究極のシンプルという意味でかっこいいかもしれません。
それからワインを注ぐ際にはラベルをきちんと見せながら、一緒に食事をする人の目の前で行ってほしいですね。視覚や聴覚も味わいのひとつになるので、そのプロセスも楽しんでほしい。ワインの香りや味わいのポテンシャルを最大に引き出してくれるグラスは、そういった一連の流れすべてに関わるものなので、非常に重要な存在です。
あとはボトルを冷蔵庫に戻さずにテーブルのうえに置くというのも視覚的に訴えるポイントです。何本か飲んだなら、テーブルのうえにボトルをすべて並べておくのもいい。また今の時代は写真に撮るなどして記録に残しておくと、その食事自体がすごく特別なものになっていくのではないでしょうか。Sydonios(シドニオス)のグラスは美しいので、SNS映えもすると思います。

――日々、食する美味しい料理とワインは、人生の活力になると常々お話されていますね。

はい。そのためにはやはりグラスはすごく大事だと感じます。たとえばけっこう熟成したプレステージシャンパンがあって、そういう時にSydonios(シドニオス)のグラスを使うと、家飲みでも確実にレストランで楽しむのに近いような体験ができます。そういうあたり前の日常のなかで贅沢な体験を積み上げていくことが、生きる活力になります。Sydonios(シドニオス)はそんな日常の豊かさを演出してくれるグラスです。

――レコール・デュ・ヴァンの講師を長年務められて、田邉さんのクラスはソムリエ試験の合格率が非常に高いと聞いています。ワインを勉強されている方たちにとってはいかがでしょうか。

ワインエキスパートやソムリエ、WSETなどの資格試験は、この10年ほどさらに盛り上がってきています。試験対策の時に決まった小さなグラスでテイスティングを行うのは、すべてのワインを平等に見るためです。品種や産地が違うワインを、同じグラスに入れてテイスティングすることで、その差が明確になる。グラスによる変化よりも、大事なのは一定性なのです。ただワインの基礎がわかって、ソムリエ試験対策などもすでにクリアしている方には、ぜひSydonios(シドニオス)などのグラスを体験してほしい。それは香りや味わいの取り方が、まったく異なるからです。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンの品種の個性だけを知りたいなら、もちろん通常のテイスティンググラスでも十分に読み取れます。でも、ワインの持つ真のポテンシャルを引き出すには、グラスの力が絶対的に必要です。自分で体感しないとわからない部分もありますので使ってみてほしいですし、グラスによってワインはまるで別物になることを知ってほしい。それほどグラスというのは重要なのです。

――多種多様な種類があるなかで、どのような基準でワイングラスを選べばいいのでしょうか。

私はフレンチで働いた経験もありますし、フランスの文化が好きです。ソムリエとしてのキャリアの前半はフランスに留学したり、開催されるコンテストに出場したり、ワイナリーを訪ねたりして過ごしました。ソムリエコンクールも英語とフランス語を選択できますが、フランス語を選んで決勝戦にまで行きました。
言語を覚える際にも、単に単語を記憶するというだけではなく、その言語の文化や精神性も含めて知っていくという側面がありますよね。国によって文化や歴史、思考が違いますから、グラスの産地により個性も異なります。
Sydonios(シドニオス)はフランス産であり、グラスにもそれぞれフランス語の名がついています。「le Septentrionalル・セプタントリオナル」というグラスは「北部の」という意味を持ち、冷涼産地の繊細さを備えたワインに向いています。また「le Méridionalル・メリディオナル」は「南部の」という意味で、暖かい地域のワインの果実感を引き出してくれる。そして、このグラス名をもっと深掘りしていくと、ル・セプタントリオナルには「北斗七星」、ル・メリディオナルには「太陽が最も高く昇る時」という意味もあるのです。それを調べていくと、よりその名前の奥にあるフランスの哲学やスピリチュアルも感じ取ることができます。

――グラスには文化や精神性が表れるというのは非常に興味深いです。では、時代性という点ではいかがでしょうか。

Sydonios(シドニオス)は2018年から始まった比較的新しいメーカーなので、現代的な価値を映し出しています。
先ほど話したように、Sydonios(シドニオス)のグラスはバーガンディグラス、ボルドーグラスという枠組みではなく、世界のリージョン全体を大きく北部と南部、あるいはクールとウォームというふたつにわけています。メーカーによってはブドウ品種ごと、またはもっと狭くある国のある産地限定といったグラスを出していますが、そうやって増えに増えて頂点まで細分化されたグラスを、減らしていこうという流れのなかでSydonios(シドニオス)は出てきたのではないでしょうか。産地品種を、グラスでは語らない。なにかひとつの大きな波が来ると、必ずその反動で逆方向のものが出てくるというのは、どの世界にもみられることです。
私はこのSydonios(シドニオス)の新しいチャレンジにすごく共感しますし、将来に向けてのポテンシャルもあると感じています。最初は孤独なスタートでしょうが、それが今後、ワイン業界のなかでどのような潮流を生んでいくのかを見ていきたいですね。時代はシンプルに向かっているので、その意味でも現代にあっているのではとも感じます。

――多くの物や情報が溢れかえっている時代に、Sydonios(シドニオス)の示す価値がある、と。

2012年に私は、日本ではまだほとんどなかったペアリングコースをチーフソムリエをしていたレストランで始めました。当時はまだ、ワインを潔く一本飲むというスタイルが主流で、めずらしがられたり、「大丈夫なのか」と言われたりしました。
でも共感される力を持つものはいずれ誰かが真似します。今はペアリングがレストランの主流になっているといっても過言ではないほどです。ペアリングをやっていた時は、私もとにかくグラスのバリエーションを増やしていました。たくさん揃えたグラスに対しての情報というのは記憶のなかに残っていて、そこにワインならではのロマンがあるのも知っています。
ただ最近思うのは、時代がシンプルに向かっているなかで、あえてグラスも絞っていくやり方もあるのではないか、ということです。だからSydonios(シドニオス)を初めて知った時に、「ああ、潔ぎいいな」「すごくシンプルだ」と感じた。形状も頭で考えすぎずに、ワインがスッと身体に体感として入っていくようなグラスフォーラムでもありますし。

――ありがとうございます。最後に、改めて田邉さんにとってワインとはどういうものか教えてください。

究極の質問ですね(笑)。ワインは単純にアルコール飲料というだけでは語れない、概念的なものを含んでいますよね。私はワインのおかげで全然知らない世界を知ることができたし、ワインによってさまざまな国へ連れて行ってもらったという感覚を抱いています。ワインを勉強していなければ絶対に行くはずもなかった地球上のあらゆるところへ行くきっかけを与えてくれた。
ワインにより英語やフランス語といった言語も習得し、世界中の人と話をして、多くの感動も得ることができました。そういう体験というのは、人生の道筋までをも変化させるほどの力を持ちます。多くの人が、「ワインによって人生変えられた」という話をしますが、それは決してカッコつけて言っているのではなく、実際に人生を真に豊かにしてもらった実感から出た言葉なのです。それだけワインには、魔力と魅力があります。

SOMMELIER PROFILE

田邉 公一

Koichi Tanabe


ザ・リッツ・カールトン東京開業時よりソムリエを務めて、在職中にフランス・パリ二つ星レストラン「サンドランス」で研修。フランスへ短期留学を経験し、2005年、ロワールワインソムリエコンクールファイナリスト、2007年キュヴェ・ルイーズポメリーソムリエコンテスト優勝。2012年、レストランL'AS のオープンと同時に同店のシェフ・ソムリエに就任。2014年、全日本最優秀ソムリエコンクール クォーターファイナリスト。現在はレコール・デュ・ヴァンの講師兼ワイン&日本酒ディレクター、16以上の企業のコンサルタントを務める。著書に「ワインを楽しむ〜人気ソムリエが教えるワインセレクト法〜」「THE STUDY OF WINE」。映画「シグナチャー 〜日本を世界の銘醸地に〜」にソムリエ役として出演。オリジナル日本酒「几鏡 by Koichi Tanabe」を2024年よりリリース
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