アルザス出張報告 ~アルザスの格付けを巡る生産者や村々の動き(営業 池田 賢二)
フィラディスでは、コストパフォーマンスに優れ、テロワールの個性を楽しむことができ、何より素直に美味しいアルザスワインにこれまで力を入れてきました。 今回の出張では、既存ワイナリーの最新ヴィンテージの確認に加え、皆さまにご紹介するに足る高品質のピノ・ノワールを探してきたのですが、生産者訪問を続ける中で、とても興味深い現在のアルザスの動向を聞くことができました。
“アルザス=白”ではない?!ピノ・ノワールのグランクリュ格付けの動き
アルザスでは現在51のグランクリュが制定されていますが、全て白ワインであり、リースリング、ゲビュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカの4種類(一部例外は除く)のみが認められています。白一辺倒の格付けですし、“アルザス=白”だという認識を持っていらっしゃる方も多いと思いますが、今ピノ・ノワールもグランクリュに格付けしようとする動きがあるのだそうです。
この動きの背景として、温暖化の影響で以前より暖かくなったためピノ・ノワールが完熟するようになり、よりパワフルで上質なブドウが採れるようになったことが要因の一つだと考えられます。実際に、素直に美味しいと思えるワインも増えてきたと感じます。更には、そういった上質なピノが出来るという共通認識が生産者や関係者の間にも広がり、“アルザス=白”ではなくなってきていることも大きいでしょう。
格付けへのアプローチ方法としては、優れた畑を持つ生産者たちがグランクリュへの制定を求めて直接Inaoへ申請します。これは、現在のグランクリュと同様にリューディー単位で行われます。
いくつか候補はありますが、ピノ・ノワールの生産比率・品質・生産者の数という条件が揃っているため最短での格上げが有力視されているのがKirchberg(キルシュベルグ)だそうです。キルシュベルグでは、弊社で取り扱いのあるHeringがピノ・ノワールを造っていますが、ブルゴーニュと同じタイプの石灰泥灰質土壌を持ち、クオリティの高いブドウが育っています。また、Rieffelではキルシュベルグのブドウを白から赤に造り替えようとしており、このことからもピノ・ノワールに対するポテンシャルの高さが窺えます。
アルザスにプルミエクリュが制定される日は来るか?
もう一つ、アルザスで動向が注目されているのがプルミエクリュの制定への動きです。現在アルザスにはグランクリュと村名しかありませんが、産地としてプルミエクリュを作ろうという動きがあります。これを主導するのは、ワインを生産している村々がそれぞれ抱える栽培家組合サンディカです。ブルゴーニュなどと同様に、どの区画をプルミエクリュにするかを決めるのは全て組合サンディカに委ねられており、各村々で話し合いが行われている状況です。
そして、この流れの中で、こちらでもピノ・ノワールの格付けが検討されています。ピノ・ノワールに適したテロワールを持つ村であるRodern(ロデルンはアルザスにおけるピノ・ノワール発祥の地)、Ottrotto、Marlenheim、St.Hiippolytte、Roschwihrなどがピノ・ノワールでもプルミエクリュを作ろうとしているとのことでした。
1975年に制定されたアルザス・グランクリュですが、ピノ・ノワールがグランクリュに制定されるにしろ、プルミエクリュが出現するにしろ、新しい時代を迎える日はそう遠くないかもしれません。
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