Riojaの品種の多様性と、『Rioja=テンプラニーリョ』となった背景を追う(営業 寺坂 和也)
皆さま、こんにちは。 今回のニュースレターでは、スペイン最大級の試飲会Fenavinで生産者から聞いた非常に興味深かったスペイン最上のワイン産地Riojaの歴史に伴う、ブドウ品種の歴史についてお話ししたいと思います。
『テンプラニーリョ・ブランコ』誕生の秘密
約5000種類もあるとされるワイン用のブドウ品種ですが、その成り立ち・誕生は様々です。元々土着として生育していたもの、交配などを行って品種改良によって出来たもの、また突然変異によって誕生したものもあります。突然変異と言えば、ピノ・ノワールから派生したピノ・ブラン、ピノ・グリ等が有名ですが、リオハの主要品種のテンプラニーリョが突然変異して誕生したのが『テンプラニーリョ・ブランコ』です。
私はこの品種の存在自体知らなかったのですが、今回その突然変異が発生した時の写真を見ることができました!
1988年にムリーリョ・デ・リオ・レサという地域の古樹の畑で、テンプラニーリョの古樹の内、1本の枝にだけ2房の白ブドウがなっているのが発見されました。実際にきれいに黒ブドウと白ブドウが枝分かれしている光景は、「合成!?」と思うほどです。
テンプラニーリョ・ブランコの枝が発見された後は大学の研究所に持ちこまれ、自根で植えた後、台木に接ぎ木し100本に増やされました。現在では植樹する生産者も徐々に増え(とはいっても9生産者のみですが)、2007年にDOCa Riojaに認可されています。日本にも僅かに入荷されているようです。今は赤ワインの銘醸地Riojaですが、今後は良質な白ワインの生産も期待されており、赤・白ともに銘醸地と呼ばれる日が来るかもしれません。
驚愕!しましま模様のブドウ!!
その後、更に驚くようなブドウを見せてもらいました。初めて見る驚愕の “しましま模様”のブドウです!品種名はメロネーラといいます。
こんなブドウを見るのは初めてで、その場にいた社長の石田と戸谷、 私・寺坂の3人とも、「なんじゃこりゃ~!!」と大変驚きました。
話によると昔のRiojaの土着品種で、現在は絶滅危惧種だそうです。しましま模様のブドウ故、生産されるワインは必然的にロゼになるそうです。現在生産している生産者はほとんどいませんが、昔Riojaには200種類もの土着品種があったそうなので、他にもまだまだ面白い土着品種が沢山あったのではないかとわくわくさせられました。
何故、『Rioja=テンプラニーリョ』になったのか
8月号の戸谷のニュースレターにて、近年少数派ではあるもののガルナッチャを使って高品質なワインを造る生産者が高い評価を受けている事例をお伝えしました。何故生産者が今ガルナッチャに注目するのでしょうか?その答えは単純です!ガルナッチャがRiojaで元々非常に多く栽培されていた土着品種だからです。
Riojaではその昔、土着品種が200種類以上もあり、マトゥラナ・ティンタやモナステル等の聞いた事もないような土着品種が数多く栽培されていました。しかし、1912年には44種に減り、1942年には11種に、2000年には7種まで減少してしまったのです。1973年時点では、Rioja全体の生産量はガルナッチャ39%、テンプラニーリョ31%とガルナッチャが上回っていたものの、2014年現在では、ガルナッチャ8%、テンプラニーリョ87%と圧倒的にテンプラニーリョの割合が上回っています。
これでは私たちの中にも『Rioja=テンプラニーリョ』という概念が作られて当然です。では、何故このようなテンプラニーリョの一極集中化が起こったのでしょうか?
まず第1の理由として、収量の違いがあります。スペイン・リオハのガルナッチャは粒が非常に小さくとても凝縮する為、フランスのグルナッシュとは比べものにならないくらい低収量になります。その収量の少なさ故に力をかける生産者が減少していき、粒も大きく収量が多いテンプラニーリョを求めて、ブドウの樹を植え替える生産者が増加したのです。
第2の理由としては、高品質なワインを求める生産者が増加したことです。良質なワイン造りに最適だと言われるリオハ・アルタの中心地・アーロ周辺の土壌は、粘土石灰質と含鉄粘土の組み合わせで、粘土がワインに濃度と力強さを与え、含鉄粘土は複雑さを生むため、高品質なワインを生み出すポテンシャルの高いテンプラニーリョには理想的でした。質の高いワインを造ろうとする生産者にとっては、リオハ×テンプラニーリョという組み合わせが最良だったのです。
Riojaの土壌の多くはテンプラニーリョに適しており、有名なRiojaワインはテンプラニーリョを主体としたものがほとんどです。フィラディスのお客様がRiojaに求めるパワフルさを体現できるのも、やはりテンプラニーリョを主体としたワインです。今回私たちが現地で探してきた中から社内で検討して採用になったワインも、現在のRiojaの王道であるテンプラニーリョを主体としたワインです。
フィラディスとして、お客様に自信を持ってご提案したい“今飲むべきRioja”のワイナリーを来年からご紹介させていただきますので、是非楽しみにお待ちください!
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