シニアソムリエ 藤巻 暁さんが指南!“ヴィンテージワインの抜栓方法”虎の巻 (広報 浅原 有里)
フィラディスでは、熟成したワインならではの美味しさをたくさんの方々に味わってもらいたいと数々のオールド・ヴィンテージワインをご案内しておりますが、いざ楽しもう!という時にハードルとなるのが抜栓ではないでしょうか。
実際に、ヴィンテージワインの抜栓方法についてはソムリエ協会の教本などにも記載はなく、各店のベテランソムリエさんから後輩に受け継がれている部分が大きいようで、そういった先達が身近にいなければ習得は難しい状況です。
そこで今回、幾多のヴィンテージワイン抜栓経験を持つシニアソムリエの藤巻 暁氏に、藤巻流の抜栓方法を伺いました。Youtubeのフィラディスチャンネルにて動画も公開しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
【ソムリエナイフによる基本の抜栓方法】
まずは、全ての基礎となるソムリエナイフでの抜栓方法をご紹介します。
1. ワインはパニエに入れて準備をする
パニエを使用すれば、澱などの沈殿物を液中に舞い上がらせずに最後まで提供することが可能です。 また、万一抜栓時にコルクが崩れてしまった場合でも、入口付近に留まってくれるので失敗を最小に抑えられます。
2. キャプセルは全てはがす
3. 濡らしたトーションで瓶口部分を包んで蒸らし、汚れを拭う
瓶の口周りをキレイにして、コルクの状態を確認します。
4. スクリューはコルクの端に刺し込み、対角線に入れていく
真ん中から真下に刺すよりも、より一層コルクをホールドします。
5. 力は下方向ではなく、回す方向に加える
コルクがもろくなっていると、少し力を入れただけでボトル内に 落ちてしまうことがあるため、下方向ではなく差し込む方向に 力を加えます。
6. スクリューの先端を貫通させた後少し戻し、 ボトル内に空気を入れる
ボトル内が密封されたままでコルクを引き抜こうとすると、戻そう という逆の圧力がかかり、残り5mmくらいが千切れて残ってしま うことがあるので、空気を入れて圧を逃がしてから抜きます。
7. 貫通させた状態でフックを引っかけて引き上げる
8. コルクの破片が残った場合は、ピンセットなどで取り出す
9. 汚れをトーションで拭いたら完了!
このソムリエナイフを使った抜栓の応用として、ソムリエナイフ2本を使った抜栓方法もあります。
その場合は、「4. スクリューはコルクの端に刺し込み、対角線に入れていく」までは同様ですが、その後更にもう1本のソムリエナイフを先に入れたものの隙間に差し込み、両方が刺さったところで少しずつ回しながら引き上げます。2本のソムリエナイフをコルクに刺すことで、よりコルクのホールド力を高めることが出来ます。
【プロング式ワインオープナーを使用する抜栓方法】
ヴィンテージワインの抜栓では、二枚刃のプロング式やアーソー式と呼ばれるワインオープナーがよく使用されます。特にボロボロになりそうなコルクや、瓶にくっついてしまったコルクなどに有効です。
プロング式だけを使うのではなく、ソムリエナイフと併用することで、落ちやすいコルクにも対応できます。
1~6まではP1の基本方法と同様
まずはソムリエナイフをしっかりと根元まで刺し込みます。
7. ソムリエナイフの上からプロング式オープナーを入れる
プロング式オープナーは、左右交互に動かしながら入れていく。
8. 2つのオープナーを回しながら同時に引き抜く
テコの原理を使うのではなく、2つ一緒に回しながら引き抜きます。
プロング式のオープナーでは、ソムリエナイフと2枚刃のオープナーが合体した『デュランド』という商品が販売されており、ヴィンテージワインを多く取り扱うお店では非常に重宝されています。
【コルクがボトル内に落ちてしまったら・・・】
少し触っただけでコルクがボトルの中に落ちてしまったり、引き抜く途中で折れてしまい、中に落とさざるを得なかった場合、どのように対処されているでしょうか?
コルクくずがたくさん入ってしまったのであればガーゼとデキャンタを使ってワインを濾すのが最適かもしれませんが、濾すのは抵抗がある、あるいはかたまりのコルクが落ちただけでそれを取り出すだけで済むという場合の対処法をご紹介します。
*コルクリフトを使う
一般的なものはコルクリフトで引き上げる方法です。元々落ちたコルクを引っ張り上げるための道具ですが、現在はほとんど販売されていません。使い方はコルクを挟んで絞りながら引き上げるだけととても簡単です。
*凧糸を使う
その他には、レストランに置いてある可能性の高い凧糸を使う方法があります。
凧糸を30cmくらいの長さに2本切り、それを重ねて半分に追って折り曲げた部分をパフェスプーンや菜箸などでボトル内に入れ込みます。コルクの向こう側(瓶口の反対側)に引っかけて引っ張ることで、凧糸のデコボコが中のコルクに絡み引き上げることができます。瓶口近くまで引き上げたら、ソムリエナイフを使って抜きます。
今回ご紹介した抜栓方法は、ちょっとしたコツは必要ではありますが、どれもシンプルでどなたにも習得可能です。また、 慌てずに落ち着いて行えば、どんなトラブルにも対処できます。
これを機に、たくさんの方にヴィンテージワインの抜栓に挑戦していただき、古酒ならではの奥深い魅力を身近に感じていただけたら嬉しく思います。
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