ワイン主要評価メディア 2022年最新事情
現在フィラディスでは右の一覧にあるような世界的に権威のあるワインメディアの評価を採用しています。
今回はこれらの中から特に重要な評価メディアを改めてご説明するとともに、「ワイン・スペクテイターTOP100」に代表されるような有名なワインランキングも併せてご紹介したいと思います。
インターナショナル
The Wine Adovocate ワイン・アドヴォケイト
「WA」は、ワイン業界に多大な影響を与えたワイン評論家のロバート・パーカー氏が1978年に立ち上げた評価誌です。そのため、WAの点数がそのままパーカーポイントとして知られていましたが、2011年より数名のテイスターが世界の各産地を分担するチーム制で評価点が付けられており、必ずしもパーカー氏本人のポイントではありません。パーカー氏も2019年に引退しましたので、それ以降のヴィンテージでは彼の点数は存在しません。
創刊以来、外部からの影響を排除するため広告を受け入れずに評価を行っており、評価されるワインの数も他の評価誌と比べて最も多いため、世界で最も影響力を持つワイン評価誌と言っても過言ではありません。現在は雑誌としての発刊はせず、WEBサイトでの運営を行っています。
2019年11月に、ワインアドヴォケイトの所有者がミシュランガイドになったことが発表されたほか、今年2月にはソムリエの星山厚豪さんがSAKEテイスターとして評価を掲載したことがニュースになりました 。
Wine Spectator ワイン・スペクテイター
「WS」は1976年創刊で、ライフスタイルマガジンという位置付けのためワインレビュー以外にニュースやレストラン紹介、産地の紹介など一般層に向けた娯楽記事が多い印象です。毎年末にその年のTOP100を決める目玉企画があり、新世界を含めてかなり広範囲にわたるエリアから選出されます。アメリカ、特に西海岸では大きな影響力を持ちますが日本での影響は限定的です。
「WA」「Vinous(IWC)」「AM」が有料会員のみのサービスなのに対して、「WS」は月2回発行の雑誌の販売とデジタルの会員登録が運営の収入源となります。雑誌という媒体の特性上、数多くの紙面広告を受け入れており、それが評価点に影響しないとは言い切れません。そのため、「WA」などと比較して「WS」だけ高評価を受けていることが稀にあり、特定のワインに対しては甘めに評価される場合があるとも言われていますし、商業的な側面があるのは事実です。
Vinous ヴィノス
「WA」でブルゴーニュ、シャンパーニュ等を担当し、パーカー氏の右腕として活躍していたアントニオ・ガローニ氏が立ち上げたのが「Vinous」です。ガローニ氏のWA時代の評価データは全てWAに置いてこなければならなかったため過去のヴィンテージのデータ量が不足しており、2014年にInternational Wine Celler(IWC)を買収してWAに対抗出来うる総合評価誌としての道を選びました。現在WAに次ぐ有力な評価誌(WEBサイト)となっています。
IWCはステファン・タンザー氏中心の評価誌でしたが、タンザー氏は他の評論家に比べて点数が辛口で、繊細かつ華やかなワインを高く評価する傾向にあります。それはガローニ氏や現在ブルゴーニュやボルドーをメインで担当する元WAのニール・マーティン氏も同様で、ブルゴーニュの評価などでは特に支持されています 。
Jancis Robinson ジャンシス・ロビンソン
「JR」はワインの女王と呼ばれるイギリスのワイン評論家ジャンシス・ロビンソン氏の評価です。ロビンソン氏は20点満点で評価を行っています。彼女はジャーナリストで最初に「マスター・オヴ・ワイン」の称号を得た方で、世界的に人気の高い評論家です 。
Decanter デカンタ
イギリスで創刊されたライフスタイルマガジンで、イギリス版のWSだという声もあります。WSと同様に、産地やレストランの紹介など記事内容は多岐に渡ります。ワインの評価は100点法で行われます。それ以外に「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」と言うコンテストを毎年行っており、 年間15,000を超えるエントリーがある世界最大規模のワインコンペティションとなっています。
Michael Broadbent マイケル・ブロードベント
「MB」は、オークション・ハウス「クリスティーズ」のワイン部門を世界的に育てたワイン鑑定家マイケル・ブロードベント氏の評価です。半世紀以上に渡ってワイン業界に携わり、古くは18世紀末のワインから書き記した著書「Vintage Wine」は、パーカー出現前の古酒を知るには大変貴重な一冊です。2020年に92歳で亡くなられましたが、ヴィンテージワインの評価では現在でも参考にされています。
Allen Meadow アラン・メドー
「AM」はアラン・メドー氏のみの評価で、ブルゴーニュとシャンパーニュ、新世界のピノ・ノワール、シャルドネに評価を特化しています。ブルゴーニュワインの基準は一貫しており、村名格のワインが特級格に匹敵する点数がつく事はありません。また点数とは別に「Sweet Spot Outstanding」、「Outstanding」、「Outstanding Top Value」という記載をされる場合もあります。「Outstanding」は傑出したワインを指し、「Sweet Spot Outstanding」はそれ以上にアラン・メドー氏の心を打ったワインを指すようです。「Outstanding Top Value」はポイントとしては90点以下のものが多く、概して村名格以下のワインに付けられますので、価格以上のお値打ち感を表していると思われます。
ブルゴーニュの評価自体が少ないWAに代わって、現在強い影響力を持っています。尚、AMの評価は、ミネラル感やタイトさ、エレガントさに重点を置いている点が特徴です。
フランス
Richard Juhlin リチャード・ジューリン
「RJ」はシャンパーニュに特化した評価誌です。シャンパンのブラインド・テイスティングで50銘柄中43銘柄を的中させたとして注目を集めたスウェーデン人のリチャード・ジューリン氏は、「2000 Champagnes」、「4000 Champagnes」と評価本数を増やし、 2013年には「8000 Champagnes」を出版しました。圧倒的な古酒の評価量からいって、シャンパーニュの大家と言ってよいでしょう。
大きな評価を得た「4000 Champagne」以降の彼の活躍により、古酒シャンパーニュが高騰したのも事実です。著作が「2000」、「4000」、「8000」と倍々で出版されているので、次回作は「16000」か?!と期待しましたが、今年2022年に最新版の「8000 Champagnes」が出版されています。
Le Guide Hachette des Vins ギド・アシェット
1985年に創刊されたワイン評価誌で、フランスで最も歴史があり大きな影響力を持ちます。
ワインは全てアペラシオンのみが公表され、その他はブラインドでテイスティングされます。評価は6段階で行われますが、掲載されるのは0から3つ星までの4段階のみです。また審査員のお勧めワインにはハートマーク(COUPS DE COEUR)が記載されます。生産者ではなく最新ヴィンテージのワインを評価することが最大の特徴です。2008年からオンラインでも検索可能になりました。
Le Meilleurs Vins de France レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス
1927年創刊の歴史あるワイン雑誌「La Revue du vin de France」が発行するフランスワインの評価誌です。元々はクラスマン(Le Classement des Meilleurs Vins de france)という名前でしたが、2008年に現在の名称に変更されました。2000年度の世界最優秀ソムリエであるオリヴィエ・プシエ氏を含む10名のスペシャリストが採点をしており、2021年版より20点法だったスコアが100点法に変わりました。生産者は0から3つ星までの4段階評価です。
Guide des Vins bettane + desseauve ベタンヌ&ドゥソーヴ
フランスの有力なワイン評論家、ミッシェル・ベタンヌ(Michel Bettane)氏とティエリー・ドゥソーヴ(Thierry Desseauve氏)が共著するワイン評価誌です。二人はそれぞれ1980年代と1990年代の「La Revue du vin de France」の編集長を務めました。生産者を6段階で評価し、最高は5ツ星が付与されます。ワインは20点法での採点です。
イタリア
Gambero Rosso ガンベロ・ロッソ
イタリア語で「赤いエビ」を意味するガンベロ・ロッソはグルメ専門の出版社で、同社が発行するすべての出版物にこの名前が付けられています。ワインのガイドブック「ヴィーニ・ディタリア(Vini d’Italia)」は年1回発行で、イタリア産ワインの評価では世界的に最も影響力があります。評価に使われるのは1〜3杯のグラス(ビッキエリ bicchieri)で、最高評価はグラス3杯(トレ・ビッキエリ Tre Bicchieri)です。
BIBENDA ビベンダ
イタリアソムリエ協会発行のワイン専門メディアです。データ量が豊富で生産者やプロから信頼を集めています。評価は5段階のぶどうの房で表され、最高評価は チンクエ・グラッポリ(Cinque Grappoli 5房)です。更に計10回以上のチンクエ・グラッポリを獲得するとタスティヴァンマークが得られ、品質が安定した生産者かどうか判断することができます。
SLOW WINE スロー・ワイン
2014年に創刊されたWEBマガジンで、イタリアのナチュラルワインをメインに紹介しています。ワイナリーの歴史やテロワールへのアプローチ、サステナブルなワイン造りかどうか、品質と価格とのバランスなども審査基準として多角的に評価しており、点数での評価は行っていません。
スペイン
GUIA PENIN ギア・ペニン
1990年にスペインのワイン評論家ホセ・ペニン氏が立ち上げたワイン評価誌がギア・ペニンです。評価は100点法で行われ、スペインワインの評価としては最も影響力が高いメディアです。8,000以上のスペインワインのテイスティングコメントとスコアが掲載されており、現在ではチリやアルゼンチンワインのガイドブックも出版しています。
ドイツ/オーストリア
Gault Milau ゴー・ミヨ
ゴー・ミヨは1972年にフランスで創刊された著名なレストランガイドですが、「Gault Millau Guide to German Wines」というドイツワインガイドを発行しており、ドイツワインの評価では最も影響力があります。ワインの評価は100点法で行われます。
Eichelman アイヒェルマン
2000年にゲアハルト・アイヒェルマン氏が出版したドイツワインガイドが「アイヒェルマン」(正式名称は Eichelmann Deutschlands Weine)です。生産者評価とワイン評価が分かれており、生産者には最大5つ星(世界クラスの国際的なトッププロデューサー)を与えます。ワイン評価は100点法です。
Falstaff ファルスタッフ
ファルスタッフは、1980年にオーストリアで創刊されたワイン・料理・旅行をテーマとしたライフスタイル誌です。ワインの評価は100点法で行われており、オーストリア、ドイツ、イタリア、ボルドー、スイスワインに重きが置かれています。
主要ワインランキング
*Wine Spectator (ワイン・スペクテイター)Top100
毎年12月に発表される同誌の目玉企画。世界で最も有名なワインランキングです。
*Wine Enthusiast(ワイン・エンスージアスト)Top100
アメリカでWA、WSに次ぐワインメディアであるWine Enthusiastが以下の3種類のランキングを毎年発表しています。
- 15ドル以下のベストバイTop100
- セラーに置いておくべき(熟成させるべき)ワインTop100
- 全体から選んだ総合Top100
*Wine&Spirits Magazine Top100 ワイナリー
Wine&Spirits というワイン誌が年間の100生産者を選ぶランキング。WSと異なり生産者の評価を行っています。
*James Suckling(ジェームズ・サックリング)Top100
ワイン評論家ジェームズ・サックリングもTop100ワインの評価誌を毎年発行しています。イタリア、スペイン、ニュージーランドなど主要産出国ごとのTop100と、全世界の総合Top100ランキングを行っています。
*Jeb Dunnuck(ジェブ・ダナック)Top100
2013〜2017年までWAでテイスターとして活躍していたアメリカのワイン評論家ジェブ・ダナックが独立して立ち上げたメディア。主にカリフォルニア、ワシントン、オレゴン、シャンパーニュ、南仏、ボルドーを評価しており、1年間でテイスティングしたワインからTop100を選ぶランキングです。
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