「シャンパーニュ生産者インタヴュー」第1回:若きアルチザン『シャルトーニュ・タイエ』、その哲学
Column
シャンパーニュの造り手それぞれが考える『哲学』。
それを知ってから実際のワインを口にすると、より深く「その1本の存在意義」を感じ取れるはず。
シャンパーニュは「最上の“乾杯のお酒”」ですが、素晴らしい品質を携えた「ワイン」のひとつでもあります。
華やかなブランドに隠れてしまいがちなシャンパーニュ生産者ひとりひとりの哲学を、こちらのコラムページで丁寧に紐解いていきたいと思います。
それではシリーズ第1回、始めましょう!
≪★Firadis WINE CLUB生産者一問一答インタヴュー 第1回★≫
-シャンパーニュ「シャルトーニュ・タイエ」現当主アレクサンドル・タイエ-
今や世界で奪い合いになる「シャルトーニュ・タイエ」のシャンパーニュ。
30代の若さでシャンパーニュの次世代を担うリーダーとして注目されるアレクサンドル・タイエは、「テロワールを忠実にワインに映し出すこと」に魂を注ぎ続ける情熱的な男です。
彼の考え方が、近い将来シャンパーニュ生産者のスタンダードになっていくのでは・・・。
●あなたの目指すシャンパーニュとは?
シャンパーニュは生産者や人間が造り出すものではありません。
シャンパーニュは第一に、土壌・地質・クリマの関係を記録しようと試みた自然そのものの帰結であり、ある一つの土地から生み出される明確な表現物です。
もし私にゴールがあるのなら、私が所有する土地そのものを明確に味わいのワインを造り出すことになるでしょう。
我々が現在も今世紀中もいつでも認識するのは、生産者の名前ではなく、ワインの中に表現された「土地の味」です。
私の仕事は何世紀か前に修道士によって名づけられたこの特有の土地に仕えること。
栽培家になることは親になることに似ています。
我々は子どもの性格を理解しながら進むべき道を指し示す努力をしなければなりません。
子どもにしてはいけないのと同じように、ワインにも彼らが進みたがらない方向に行くことを強制すべきではないのです。
全て彼らのDNAに書かれていることなのですから。
●シャンパーニュ造りの哲学(大切にしていること、考え)
私はいつも土地の表現を妨げないように、自分の介入はソフトで最低限に抑えるように努力しています。
豊かさは始めから自然を構成する細部に備わっています。
全ての植物・木・動物が、最も印象的で美味しいワインを生む手助けをしてくれます。
私は鳥や牛、馬、羊のように全ての要素を自然に戻そうとしています。
私はただ、ブドウ畑の中で営まれる自然のコミュニケーションを助けるだけです。
●人生で一番衝撃を受けたワイン
一番のワインを選ぶのは、自分の子どもの中から1人だけ好きな子を選ぶがごとく難しいです・・・。
ごめんなさい、やっぱり私には選べません!
もし1人生産者を選べというのなら、私はアンセロム・セロス(ジャック・セロス現当主)を選びます。
彼の1998年マグナムは特に私に良い思い出になっています。
●シャンパーニュ造りの工程の中で一番嬉しい瞬間
ブドウ畑の中にいること。
黙って静寂を感じると、とても元気になります。
●シャンパーニュを造る上で、今まで一番辛かったことは何か?そしてそれをどうやって乗り越えたか?
どんなにどす黒い悲しみの中にも明るい光は見えるものです。
ワインにいかなるプレッシャーやストレスを与えないように、私はいつも楽観的でいるようにしています。
私たちは辛い瞬間を過ごすこともありますが、それによってより強くなり、
他者を助け、良い方向に進むことがでいるようになります。
死はいつも人生で最もつらい出来事です。
私の耕作馬が6年前に亡くなりましたが、簡単に立ち直ることは出来ませんでした。
●自分の造るシャンパーニュを一言で表現すると?
ただ一言・・・『メルフィ』(*訳注:シャルトーニュ・タイエのある村の名前です)
●自分にとって、RM(レコルタン・マニピュラン)とは何か?
正直に言うと、私はこの言葉はワイン造り(ワイン生産者)を表わす上で非常に悪い言葉だと思います。
マニピュランとは、操作することを意味します。
真実の姿に対して影響を与えることを画策し、変更し、動かしてしまう人物です。
しかし、RMは18世紀のワインの理解に再度向き合う大きな責任を持っています。
醸造学や現代的なブドウ栽培を当てはめようとはせずに、テロワールのもたらす結果に誇りを持ち、何も変えないままの真のワインを発見するということです。
私たちはRMとして我々のブドウ畑と土壌を理解し、自然を「支配」しようとするのではなく「奉仕」しなければなりません。
どうでしょう・・・アレクサンドル・タイエならではの確固たる考え方が伝わってくる、深く重い言葉の数々だと思います。
今回数人の生産者に同じ質問をぶつけてみたところ、ひとりひとりが実に個性的な回答を寄せてくれました。
その中でもアレクサンドルの哲学は際立って「テロワール原理主義者」的。
土の力を、生き物としての葡萄の力を信じ、それをそのままボトルの中に閉じ込めようとする、献身的な姿勢を感じました。
そんな彼の作品、まだ未体験の方は是非この機会に。
『シャルトーニュ・タイエ キュヴェ・サンタンヌ・ブリュット N.V.』
誰でも知っている有名ブランドとはコストパフォーマンスが桁違い、ということだけは申し上げておきます。
是非、そのクオリティを体験してください。
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