ちなみにマルベックは遺伝的にメルロに近い品種といわれています。マルベックを飲んだことがない方はメルロのような品種だと思っていただければと思います。メルロのように色があまり濃くならず、タンニンも柔らかい品種です。しかしこういった標高の高い産地で栽培されると先述のような特徴を持ちます。こういったメンドーサのような場所で育てられるようになって、偉大な品種の仲間入りを果たしたのがマルベックです。

【テイスティングコメント】
色合いはマルベックらしく淡いです。そして香りもこの品種らしい甘い香りが感じられます。潰れたようなラズベリー、ブラックベリー、甘いリコリス、ほのかにアニス（八角）のようなニュアンス。ほんの少しだけハーバルな雰囲気もあります。さらには胡椒系の香りも。全体としての香りの印象は、潰れた果実が存在しながら、少しのハーブと少しのスパイスが重くなりすぎないように調整されているイメージ。強さとしてはやや控えめで、前に出すぎていない香りだといえます。 口に含むとチャーミングですね。標高の高さがもたらした酸味が活き活きとしています。さらさらとした柔らかいタンニンが後半に現れます。 ミディアムボディのワインで、優しくまろやかなフルーティーさがありながら、酸によってピンと張ったようなテンションがしっかり感じられる良いワインです。重すぎず、軽すぎず、ミディアムというのがぴったりです。複雑性こそありませんが、親しみやすさとチャーミングさが持ち味のワインになっています。

【おすすめの楽しみ方】
温度は14-16度くらいがおすすめです。いわゆる中間位の温度帯で楽しんでいただければと思います。グラスはあまり大きすぎず、白ワイングラス位で良いと思います。 現地では、アサードというバーベキューと一緒に食べられます。アサードは赤身のお肉をしっかりと焼いて、爽やかなハーブのソースで食べるというのが定番です。その時にこういう柔らかいマルベックを合わせます。他にも 焼き鳥の柚子胡椒とかも良いです。ほのかにハーブの香りがあるので、青ゆず系の香りとかも相性が良いと思いますし、ピリッとした風味がスパイシーな雰囲気とも合います。

【アルゼンチンのマルベックについて補足】
アルゼンチンでこんなにもマルベックが発展したのは、政府主導でワイン産業を発展させるためにメンドーサの栽培を奨励したという背景があります。メルロも植わっているんですが、ボルドーなどのイメージがあるメルロよりマルベックのほうがアルゼンチンならではの品種として売り出しやすいという背景がありました。 ちなみにフランスのボルドーは、実はフィロキセラという病害によって多くのブドウを失う前に一番栽培されていた品種はマルベックだったそうです。そしてボルドーは壊滅後カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロが主流になっていきました。結局はボルドーでは成功しなかったマルベックはアルゼンチンのスター品種になっていくわけです。