ヴァレ・ド・ラ・マルヌ右岸キュイル村に居を構えるムッセは、17世紀から続く歴史あるブドウ栽培農家で、1923年に現当主セドリックの曾祖父ウジェーヌ・ムッセが、この地区で最初の1人としてシャンパーニュ造りを開始したことからワイナリーとしての歴史が始まりました。

「ピュアでナチュラル、そして、緊張感のあるムニエ」を造り出すことポリシーにシャンパーニュ造りを行うムッセですが、それは高品質なブドウがあってこそ可能になるもの。つまり、そのブドウを育む畑が何よりも重要であるのをおわかりいただけるのではないでしょうか。

この蔵元が所有する17ヘクタールの畑は、本拠地キュイルを中心に3つの村にまたがって日照に恵まれる南向きの斜面にあるとともに、他の地域ではあまり見られない「イライト (Illit)」と呼ばれる緑色の粘土層が広がっているのですが、この粘土こそがムッセのテロワールのDNAであると現当主のセドリックは語ります。というのも、この粘土層は暑く乾燥した夏でも土壌の湿度を保つとともに、酸化鉄やマグネシウムを豊富に含んでいることが、ムニエに柑橘類、白い果実、白桃のアロマを与え、味わいにほのかな苦みと長い余韻をもたらすのだそう。

このように豊かな日照と様々な要素を与える土壌を持つ恵まれた畑において、2020年以降は農法をリュット・レゾネからビオディナミに移行し、除草剤は使用しないなど、豊かな環境の維持に取り組むセドリック。そして、そこで育まれたブドウの素材感を生かすべく、2017年以降は、ドザージュ量を下げる・新樽を使用しない・ステンレスタンクへ切り替える・SO2使用量を最小限に留めるなど、最小限の介入と明確な目的を持つ醸造アプローチでワインづくりを行い、理想とするワインづくりを実現しているのです。

このようにして生み出されるムッセのシャンパーニュは、知名度こそまだまだ高いとは言えないものの、実は著名な評価誌上で高く評価されはじめており、Decanter誌は「セドリック・ムッセはマルヌ・ヴァレーで最も洗練されたチャーミングなムニエを造っている」、Vinous誌は「ムッセのシャンパーニュは、ダイナミックなエネルギーと繊細さによって特徴づけられている。注目すべきドメーヌであり、今後も大きなポテンシャルを秘めている」と称賛しているほど。

数十本試飲しても一本も採用にならないということが珍しくないフィラディス社内の選定試飲の際にも皆一様に感嘆の声をあげたムッセのシャンパーニュは、それほどの味わいでありながら、フィラディスが取扱う数々のシャンパーニュの中でも比較的手に取りやすい価格で皆様にご紹介できるというのも、このムッセの大きな魅力であると言えるでしょう。

まさに今、大きな注目を集める前夜であることを確信させるムッセのシャンパーニュ。栽培から醸造に至るまで揺るがない哲学と理想を持ち生み出され逸品を、ぜひご堪能ください。