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≪知っているとちょっとお得なワインマメ知識≫ワインが「熟成する」って結局どういうことなの??①2016/03/07

これまでの「ワインのマメ知識コラム」では、収穫後に仕込まれたワインがオーク樽や硝子瓶に詰められて、
醸造家が設定した”飲み頃”に変化していくのを待つ間のプロセスが「熟成」ということお話ししてきました。
じゃあこの「熟成」というのは、そもそもどんな変化なのでしょうか、というのが今回のテーマです。

「飲み頃」の時の話と同じように最初に残念な結論を申し上げてしまいますが・・・、
ワインやお酒の「熟成」という現象については完全には解明されていません。

以前の「飲み頃がいつか」というのに続いて未確定な内容で申し訳ないな…とは思いますが、
すべてが解明されていないからこそ、ワインというお酒は神秘的でロマンティック、なので・・・。
でも、幾つかの要素については、ワインの熟成メカニズムというものが科学的に解明されています。
今回から、3回に分けて説明をしていきたいと思います。

ワインの「熟成」とは、とても不愛想に言えば、
酸素に触れ続けることによる「酸化」という化学反応によって起こる段階的な変化です。
こう言ってしまうと一気に現実的でツマラナイですが、でもそれが根本の原理ではあります。

そして、熟成の結果として現れるのは2つの「円」だと思って理解していただければと思います。
2つの「円」とは、・・・・・「円熟」と「円滑」です。
文字のとおり、年を経てフレッシュな果物による果実酒が、全く異なる味わいの素晴らしいお酒に成長を遂げる「円熟」と、
ワインが物理的に体感できる滑らかさ・柔らかさを獲得する「円滑」です。

それでは「ワインの熟成」メカニズムについて、ワイン中の成分一つ一つを分解して考えていきましょう。


まずはワインそのものの構成要素がどんなものかを知る必要があります。
ワインは何で出来ているのでしょうか??

まず、当然ですがほとんどは水分です。
この水分そのものは、熟成するわけではありません(但し他の要素の熟成に関係はしているのです)。
それ以外の要素を挙げてみましょうか。


・色素成分(赤ワインは特にたくさんの色素成分を含んでいます。)
・アルコール分                                                                                                                                                                  ・水分                                                                                                          ・渋味成分である「タンニン」(お茶と同様に、カテキンなどが含まれてます)
・有機酸(ワインの中には、様々な酸が含まれます。酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸などです)

などです。
もちろんこれ以外にもたくさんの成分が含まれているのですが、
今回は「熟成」の全体像を把握していくのがテーマですので、このくらいにしておきますね。

それでは、一つ一つの変化について簡単にご説明していきます。
まず今回は、外観から考えましょう。熟成による「色素」の変化です。
ワインに含まれる色素は、主にブドウの果皮に含まれています。
巨峰の実から手で皮を剥くと、少しだけ果肉に紫の部分が付着して残りますよね。
あれが色素、代表的なものは「アントシアニン」(名前は覚えなくても良いです)です。

色素成分はワインの中に浮遊しています。
さあ、ここで高校時代の化学の教科書を思い出してください。
「重合」「コロイド」っていう言葉、ありませんでしたか??思い出せたら、素晴らしい記憶力です!

色素成分は、酸素と触れるにつれてお互いがくっつきはじめ、
「コロイド」と呼ばれる塊を形成します。
同じ成分同士が、自然と手を繋いでくっついていく、という現象です。
そして、くっついていく過程で、酸化の影響で色素自体の色調に変化を来します。
最初はピンクや紫がかった若々しい色から、濃い赤に、そして茶褐色に変化していきます。

これがワインを寝かしておくと、段々色が枯れていくメカニズム、と言う訳です。
年数が経った古酒で、青々しさやピンク色のものって無いですもんね。

次の項では、熟成によって「アルコール分」と「水分」にどんな変化が現れるのか、について触れていきます。                                        お楽しみに!

 

Firasid WINE CLUB 店長 五十嵐 祐介