人気のカレーにマリアージュするワインを探しました!(広報 浅原有里)
今回のニュースレターは、社内で行ったプチマリアージュ実験のレポートをお届けします。
テーマは、みんな大好き「カレー」です!
インドカレーを中心に、ワインを合わせたくなる人気のカレーをピックアップして、その相性を検証してみました。
合わせたカレー
実験の肝となるカレーですが、このレポートを読んでくださる皆さまにもイメージしていただきやすいよう、常時50種類以上のラインナップを揃えるレトルトカレーの猛者「無印良品」さんで以下の5品を購入してきました。
- バターチキン
- グリーン
- フォン・ド・ヴォーのスパイシービーフカレー(欧風ビーフカレー)
- ジンジャードライキーマ(キーマカレー)
- ダール(豆のカレー)
お米は日本の白米で、必ず少量のお米もカレーと一緒に食べながらワインと合わせました。
マリアージュの判断方法
「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析します。
同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)
※理論的なマリアージュの考えについては、若手ソムリエ応援プロジェクトの第1回セミナーにて大越基裕講師に解説いただき、2013年12月のニュースレターで公開しております。コチラに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
合わせたワイン
ワイン名 | 品種 | 産地 | 希望小売価格(税抜) | |||
スパークリングワイン | ||||||
1 | NV | I’m Blanc de Blancs from France | Because, | シャルドネ100% | 仏 | オープン |
2 | NV | Jade | Vinosia | ファランギーナ100% | 伊、カンパーニャ | ¥2,150 |
3 | NV | Cremant de Loire Brut | Ch. de L’Aulee | シュナン・ブラン100% | 仏、ロワール | ¥2,450 |
4 | NV | Cava Brut Reserva | Sabartes | パレリャーダ41%、チャレロ36%、マカベオ23% | 西、ペネデス | ¥2,000 |
5 | NV | Cava Brut Rosado | Sabartes | ピノ・ノワール100% | 西、ペネデス | ¥2,300 |
白ワイン | ||||||
6 | 2020 | Chardonnay | Anayon | シャルドネ100% | 西、カリニェナ | ¥2,800 |
7 | 2021 | Chardonnay | Tramin | シャルドネ100% | 伊、アルト・アディジェ | ¥2,700 |
8 | 2020 | Alchimie | Terres Blanches | ソーヴィニヨン・ブラン100% | 仏、ロワール | ¥2,750 |
9 | 2021 | Riesling Quant | Carl Loewen | リースリング100% | 独、モーゼル | ¥2,600 |
10 | 2020 | Gewurztraminer G.C. Kirchberg de Barr Clos Gaensbroennel | Hering | ゲヴュルツトラミネール100% | 仏、アルザス | ¥4,900 |
11 | 2018 | Savagnin | Philippe Vandelle | サヴァニャン100% | 仏、ジュラ | ¥4,200 |
12 | 2018 | Just B | Just B Wines | アルバリーニョ100% | 西、リアス・バイシャス | ¥2,800 |
13 | 2021 | Moscatel | Juan Gil | モスカテル100% | 西、フミーリャ | ¥2,000 |
14 | 2021 | Blanco Semidulce フラワーボトル | Baron de Ley | ソーヴィニヨン・ブラン100% | 西、リオハ | ¥2,000 |
15 | 2021 | Soave Classico | Gini | ガルガーネガ100% | 伊、ヴェネト | ¥3,100 |
ロゼワイン | ||||||
16 | 2021 | Caprice de Clementine Rose | Ch. Les Valentines | サンソー50%、グルナッシュ50% | 仏、プロヴァンス | ¥2,850 |
赤ワイン | ||||||
17 | 2020 | Santenay V.V. | Lucien Muzard | ピノ・ノワール100% | 仏、ブルゴーニュ | ¥4,250 |
18 | 2019 | Chinon Silenes | Charles Joguet | カベルネ・フラン100% | 仏、ロワール | ¥3,000 |
19 | NV | I’m Nero d’Avola from Sicily Italy | Because, | ネロ・ダーヴォラ100% | 伊、シチリア | オープン |
20 | 2020 | Langhe Dolcetto Visadi | Domenico Clerico | ドルチェット100% | 伊、ピエモンテ | ¥2,700 |
21 | 2020 | Nebbiolo d’Alba Valmaggiore | Giacomo Grimaldi | ネッビオーロ100% | 伊、ピエモンテ | ¥3,400 |
22 | 2017 | Rosso di Montalcino | Lecciaia | サンジョヴェーゼ・グロッソ100% | 伊、トスカーナ | ¥2,800 |
23 | 2021 | Cotes du Rhone Villages Visan Gloire de Mon Pere | Bastide | シラー95%、グルナッシュ5% | 仏、ローヌ | ¥2,400 |
24 | 2020 | Cuvee Confidence | Fond Croze | グルナッシュ70%、シラー30% | 仏、ローヌ | ¥2,100 |
25 | 2017 | Rioja Reserva | Baron de Ley | テンプラニーリョ93%、マトゥラナ5%、グラシアーノ2% | 西、リオハ | ¥2,750 |
26 | 2019 | I’m Cabernet Sauvignon from Southern France | Because, | カベルネ・ソーヴィニヨン100% | 仏 | オープン |
27 | 2019 | Seigneurs d’Aiguilhe | Cotes de Castillon | メルロー85%、カベルネ・フラン15% | 仏、ボルドー | ¥3,200 |
28 | 2021 | 4 Meses | Juan Gil | モナストレル100% | 西、フミーリャ | ¥2,000 |
29 | 2018 | 7 Deadly Zins | Michael David | ジンファンデル80%、プティ・シラー20% | 米、カリフォルニア | ¥3,500 |
結果
バターチキン
ワイン | 評価 | |||
泡 | NV | Jade / Vinosia | ◎ | 素直に美味しい!と思える組み合わせ。カレーの香りが泡で引き上げられてスパイスが優雅に香る。また、Jade特有のふわっとした柔らかいテクスチャーもカレーのテクスチャーや辛味・風味とよく合っていた。米にもGOOD。 |
白 | 2018 | Savagnin / Philippe Vandelle | ◎ | サヴァニャンの複雑な風味がカレーのスパイスやバターなどの要素と不思議と喧嘩せずに上手く絡み合い、非常にガストロノミックなマリアージュだった。旨味が相乗し、余韻が長く続いた。 |
白 | 2021 | Blanco Semidulce フラワーボトル / Baron de Ley | ◎ | 辛味のあるバターチキンカレーに、ワインが甘味とハーブ感を足してくれ、相乗効果で双方が美味しく感じられた。カレーにローリエなどのハーブ香をふわりと載せたよう。 |
白 | 2020 | Chardonnay / Anayon | ◎ | 樽香とカレーのバター感、ワインの酸味とトマトの酸味が同調したお手本のようなマリアージュ。合いすぎて面白みに欠けるという意見も出るほどぴたりと合っていた。 |
赤 | 2020 | Cuvee Confidence / Fond Croze | ◯ | 若干ワインが勝ってしまう印象はあったが、ワインのもったりと柔らかなテクスチャーとカレーのテクスチャーが合っていた。トマトの風味と果実味も好相性。 |
トマトの風味が活きたバターチキンカレーは、スパークリングから赤ワインまで比較的幅広く合わせることができました。
酸味が強すぎるもの、また赤ワインについては強い樽香やタンニンは目立ちすぎたり浮いてしまったりと合いづらい傾向にありました。
グリーン
ワイン | 評価 | |||
泡 | NV | Cremant de Loire Brut / Ch. de L’Aulee | ◎ | とても美しく上品なマリアージュ!双方の香りが調和し、上方向に綺麗に伸びる余韻がぴったりと合った。ワイン単体で飲むよりも段違いに美味しく、カレーの深みも増した。 |
白 | 2018 | Savagnin / Philippe Vandelle | ◎ | ワインのボディの厚み、甘やかさが辛味を中和し、カレーのスパイス感を際立たせた。カレーとワイン双方の旨味が相乗効果となり、非常に美味しい組み合わせだった。 |
白 | 2021 | Moscatel / Juan Gil | ◎ | 双方のスパイス感(フレーバー)が同調し、香りを引き上げるような効果を発揮。味わいの方向性が同じであるため、素直に美味しいと思える秀逸なマリアージュだった。 |
白 | 2021 | Riesling Quant / Carl Loewen | ◯ | グリーンカレーの酸と辛味に、リースリングの酸と甘味が寄り添い合うように同調した。 |
ロゼ | 2021 | Caprice de Clementine Rose / Ch. Les Valentines | ◯ | カレーのシャバシャバしたテクスチャーが、ワインの硬質なテクスチャーと合った。アタックはとても良いが、アフターにカレーの辛味とワインの苦味が分離する印象。 |
グリーンカレーに対しては、スパークリングや白ワインは合わせやすい傾向にありました。
しかし、赤ワインはベリーフレーバーと樽香、タンニンがどうしてもカレーのココナッツからくるまろやかさに合わず、全滅となってしまいました。
欧風ビーフカレー
ワイン | 評価 | |||
白 | 2018 | Savagnin / Philippe Vandelle | ◎ | 白系で唯一のマリアージュ。コクのあるビーフカレーにもワインの複雑さや風味、旨味が負けておらず、もっと食べたくなり飲みたくなる組み合わせだった。 |
赤 | NV | Because, I’m Nero d’Avola from Sicily Italy | ◎ | 果実のボリューム感がカレーと相性が良く、ワインが甘味やスパイスを足すとともに、カレーがワインの鉄分をまろやかに感じさせた。粘性もちょうど合い、アフターが心地良いため双方を美味しく楽しませてくれた。 |
赤 | 2017 | Rosso di Montalcino / Lecciaia | ◎ | カレーの味わいに綺麗に寄り添い、食べ飲み進めても疲れない組み合わせ。ワインにおおらかさや穏やかさがあるので、カレーをしっかり受け止め、風味がしっかり同調していた。 |
赤 | 2021 | Cotes du Rhone Villages Visan Gloire de Mon Pere / Bastide | ◎ | コクのあるカレーにワインの旨味が足され、しっかりとしたボリューム感を感じさせた。アフターにかけてはカレーのスパイシーな風味が引き上げられた。Rosso di Montalcinoとはまた別方向のどっしり食べ応えがあるマリアージュだった。 |
ビーフブイヨンがきき、コク深い味わいや強い甘味・旨味が特徴のカレーのため、スパークリングや白ワインではワインが負け、酸味も浮いてしまいました。
赤ワインでもタイトな味わいのものや酸味や樽香が強いものはことごとく合いませんでした。
ジンジャードライキーマ(キーマカレー)
ワイン | 評価 | |||
白 | 2018 | Savagnin / Philippe Vandelle | ◎ | 生姜のピリッとしたスパイス感にサヴァニャンの癖のある風味が非常に良く合った。カレーとワインそれぞれの旨味が掛け合わさり、旨味の相乗が顕著。また、余韻の辛味を引き立て、もっと!と後を引く味わいとなった。 |
白 | 2021 | Moscatel / Juan Gil | ◯ | 双方のフレーバーのスパイス感が喧嘩することなく合い、香りを引き上げてくれた。味わいの方向性が同じでボリューム感などのバランスも良い。 |
赤 | 2017 | Rosso di Montalcino / Lecciaia | ◎ | ワインの強すぎない果実味がカレーに絶妙に合い、旨味が相乗して辛味を少しまろやかにしてくれて、とても美味しい!何杯も飲みたくなる!カレーが止まらない!との意見多数。 |
赤 | 2021 | Cotes du Rhone Villages Visan Gloire de Mon Pere / Bastide | ◎ | カレーの生姜の風味や塩味に、ワインのミネラル感が寄り添い、爽やかさを感じる組み合わせ。旨味が相乗するので存在感がしっかりあり、カレーのスパイス感を鮮やかに感じた。アフターに若干苦味が残る。 |
赤 | 2020 | Cuvee Confidence / Fond Croze | ◎ | ワインの果実味や甘味からくる豊満さがカレーを包み、柔らかく感じられた。生姜の風味やスパイスとも相性が良く、Cotes du Rhoneとは方向性の異なるマリアージュを見せてくれた。 |
赤 | 2021 | 4 Meses / Juan Gil | ◯ | カレーにもう一つ薬膳的なフレーバーや甘味を足すようなニュアンスが感じられたのが、良いという意見と苦手という意見に分かれた。カレーに果実味や柔らかさを足して全体的なバランスはGOOD。 |
今回試食したカレーの中では最も辛味が強く、塩気も強く感じる味わいで、スパークリングやタイトだったりシンプルな味わいの白ワインでは負けてしまいました。
赤ワインは比較的どれも悪くありませんでしたが、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのグリーンな香りやジンファンデルの果実味などはちぐはぐな印象になって合いませんでした。
ダール(豆のカレー)
ワイン | 評価 | |||
泡 | NV | Jade / Vinosia | ◯ | カレーがほっこり優しい風味のため、ワインの柔らかさや甘味と同調した。アフターに若干ワインの酸味が残るのがマイナスだが、十分楽しめる。 |
白 | 2020 | Gewurztraminer G.C. Kirchberg de Barr Clos Gaensbroennel / Hering | ◯ | 豆のほっこり感やふくよかさにスパイスが足されたカレーの味わいに、ワインの風味や甘味がしっくり同調してフィットしていた。アフターに酸味が立ってしまうのが若干の難点。 |
赤 | 2017 | Rosso di Montalcino / Lecciaia | ◎ | 優しいカレーの味わいに、Lecciaiaワインの特徴の柔らかさや大らかさがよく合い、間違いなくベストマリアージュだった。双方の旨味が同調する中で、果実味やカレーのスパイス感が渾然一体となり、滋味深い美味しさが楽しめた。 |
赤 | 2020 | Santenay V.V. / Lucien Muzard | ◎ | ほっこりとした豆カレーに、ワインの穏やかな果実味や酸味、滋味深い旨味がスッと寄り添い、アフターまで柔らかさと優しさを感じさせてくれた。まるで仲の良い老夫婦のようなほのぼのとした美味しさがあった。 |
豆の甘味や旨味の中にスパイスを感じるほっこり感のあるカレー。
鋭い酸やミネラルからくるタイトな味わいや、強すぎるベリー系の果実味や樽香があるワインは、それらがことごとく邪魔をしてNGとなりました。
対して、旨味や滋味に富んだ味わいのワインが素晴らしいマリアージュを生みました。
まとめ
まずは言わせてください・・・サヴァニャンすごい!!
ダールには合いませんでしたが、それ以外の4つのワインには◎のマリアージュとなりました。「カレーに紹興酒」と同じ原理ではありますが、旨味を掛け合わせる素晴らしさや、癖のある風味をぶつけた時のガストロノミックな組み合わせの面白さを改めて実感させてくれました。
そしてローヌ赤ワインの健闘ぶりも特筆すべきものがありました。大らかでジューシーな果実味と旨味のコンビはコクがある肉系のカレーにとても合うことが分かりました。
そしてもう一つ、Rosso di Montalcino / Lecciaia もその底力を存分に発揮しました。
とは言え、「Rosso di Montalcinoやサンジョベーゼがカレーに合う」と言い切るのは少し注意が必要です。今回の検証会では、Lecciaiaという生産者の個性である穏やかさや滋味深さがキーになっていたからです。今後機会があれば典型的なサンジョベーゼでも試してみたいところです。
今回の結果を、皆さまのワインライフの参考にしていただけたら幸いです!
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