生産者のこだわり

若き注目の生産者セサール・マルケス。スペインのビエルソを世界の注目産地へと引き上げた”生きる伝説”：ラウル・ペレスを叔父にもつ。偉大な叔父のもとでワインづくりを学び、さらに叔父の実家で18世紀からワインづくりを行っているというカストロ・ベントーサのプロジェクトで数年間経験を積んだのちに始めたのが、自身の名を冠したワイナリーである。

もともとローマ時代から長いワイン造りの歴史を誇り、中世にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が通る地域としてワイン文化が発展したD.O.ビエルソ。カステーリャ・イ・レオンの北西端、ガルシアとの州境の山間部の盆地に位置し、周囲を高い山に囲まれているためスペイン内陸と比べると温暖湿潤な気候が特徴だ。スペインの他のマイナー産地と同じく、長らくワイン造りの近代化から取り残されていた過去を持つが、1989年のD.O.昇格を経て、2000年以降は新進気鋭の生産者達がメンシアから高品質な赤ワインを競うように生産するようになると、一躍世界の注目を集める産地へと成長した。メンシアの品質を一気に押し上げた立役者の一人が叔父のラウル・ペレスで、伝統を重んじつつも自身の直感に従いルールに縛られない柔軟なワイン造りを続け、今や世界で最もエキサイティングなワインメーカーの1人と評されている。

偉大な叔父からは技術だけではなく信念も受け継ぎ、あくまでビエルソのテロワールを丁寧に表現することをモットーとしている。そのため、ボトリング前の少量のSO2以外に添加物はなく、伝統的な除梗をしない醸造で、それぞれの村で収穫されたブドウは別々に醸造される。また非常にデリケートなメンシアの魅力を最大限生かすために新樽は使わない。さらに栽培ではブッシュ ヴァイン仕立てと呼ばれる南アフリカの伝統的な栽培方法を用い、ワイヤーを使わず樹をそのまま地面に立てることで、樹の背丈が低い方が根から吸いあげた水分を樹全体に効率よく行き渡らせている。

こうした試みをはじめ、叔父ラウル・ペレスやカストロ・ベントーサで培った技術を最大限用いることで、セサール・マルケスはビエルソに所有する、樹齢120年以上に及ぶブドウが植わった素晴らしいテロワールをそれぞれのキュヴェで見事に表現している。2020年ヴィンテージはワイン・アドヴォケイト誌の評価において、スタンダード・キュヴェで93点、上級キュヴェで96点という高評価を得ていて、今後のさらなる飛躍が期待される注目の若手生産者である。