生産者の紹介
ワイナリーの創始者が惚れ込んだシチリアの土地の多彩な個性を、多様な品種を通して鮮やかに映し出す注目の生産者。
地中海最大の島であるシチリアでは、その広大な土地に多彩なテロワールが眠っている上に土着品種の宝庫であるため、ひとえに「シチリアワイン」と言っても一括りには出来ない奥深さがあるが、その表現に早くから取り組み成功を収めたのがこのBaglio di Pianettoである。このワイナリーはシチリアが世界的に大きな注目を浴び始めるよりも前の1997年に、元フェラーリのプロレーシングドライバーという異色の経歴を持つオーナー、パオロ・マルツォット伯爵によって設立された。彼はドライバーを引退後、イタリア各地のワイナリーにて研鑽を積み、そのキャリアの中ではアメリカ市場で最も多く販売されている白ワインの生産者サンタ・マルゲリータ社の社長を14年も務めるなど豊富な経験を積んでいたが、自らのワイナリーを建設するにあたっては本人が幼い頃から憧れていた、そして何より多彩な個性を持つ土壌と数多くの品種が栽培されているという大いなるポテンシャルを秘めたシチリアに白羽の矢を立て、シチリアの地でワイン造りを始めた。
2023年に伯爵の甥にあたるグレゴワール・デフォルジュが3代目の当主として就任すると、更なる品質向上に向けてワイナリーは大きな改革を進める。現在ワイナリーが所有する畑は島の北西部、シチリアの州都パレルモから約20kmほど南に下ったところにあり、ワイナリー名の由来でもあるピアネットと呼ばれる地区に位置している。山岳エリアに広がるピアネットは標高700-950mという高地であり、気温や畑の向きに多様なパターンがあることが特徴だ。シチリアの中では冷涼なクリマとなるため昨今の気候変動にも対応しやすく、ブドウはフレッシュな酸とアロマの複雑性を持ち、ワイナリーが目指すクリーンなスタイルをより表現しやすい。もともとはこの畑の他に島の南東部の2拠点に畑を所有していたが、南東部の畑を手放してピアネットに集約し、更に標高の高いエリアに新たに畑を買い足し改革のハード面を完成させる。また改革のソフト面ではSassicaiaやCasanova di Neriなどイタリアの名だたるワイナリーで醸造担当として活躍してきた敏腕醸造家、グラツィアーナ・グラッシーニを新たに醸造家として招き入れ、自分たちが目指すスタイルをより高いレベルで表現する体制をより強固なものにした。
栽培においては「ワインを愛することは自然を愛すること」という哲学に基づき、ブドウ畑はもちろん所有する土地全てにおいてオーガニック認証を取得するなど抜かりがない。そして同じ品種でも収穫をわざと複数回に分割して行い、酸度や糖度の異なるブドウをブレンドして最適なバランスを取るなど細かな工夫も行なっている。そして極め付けは、醸造及び熟成施設であるセラーを地上1階~地下3階の4階構造という重力だけで醸造〜熟成〜瓶詰めまでのフローを実現できる特注仕様だ。こうしてこのような様々なこだわりから生まれたワイン達は見事に土地と品種の個性をクリーンに、余すところなく表現してくれている。伯爵のシチリア愛を引き継いだ新生ワイナリーは、新たな畑とチームで更なる高みを目指す。
みんなのワインレビュー
バッリョ・ディ・ピアネット シラー(伊シチリア産赤750ml)
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