生産者の紹介
ブルゴーニュにおいて、家族経営のワイナリーが直面する試練の一つが、複雑な相続手続きとそれに伴う畑の分割である。2020ヴィンテージから新たな歩みを始めたパスカル・リオン・ドロタルも、まさにそうした困難な転換期を乗り越えて誕生したワイナリーだ。オーナー兼醸造責任者を務めるパスカルは、1955年に創設された名門ダニエル・リオンの創始者の末娘である。父ダニエルの傍らで長年ワイン造りの哲学を学び、ともにドメーヌを支え続けてきたが、父の死後、実家のワイナリーは惜しまれつつもその歴史に幕を下ろした。そんな中にあっても、父から受け継いだワイン造りへの情熱を絶やさなかった彼女は、複雑な相続を乗り越え、引き継いだ大切な畑と共に、自身のドメーヌを立ち上げた。
現在、パスカルが所有する畑は4.3ヘクタール。引き継いだテロワールへ深い敬意を抱き、グラン・クリュから広域アペラシオンまで、すべての畑に対して同じ姿勢で丁寧に向き合うことを信条としている。その畑で育つブドウ樹は、一番若くても樹齢30年、なかには祖父の代に植えられた区画もあり、ダニエル・リオン時代のマサル・セレクションが大切に守り抜かれている。畑の管理も当時のやり方に倣い、冬場は土質改善のために豆科のカバークロップをはやし、春夏には水分や養分の過度な競合を防ぐため刈り込んでいる。こうして育てられたブドウは、理想的なタイミングを見極め、すべて手で丁寧に収穫される。
彼女がワイン造りの拠点としているのは、シャンボール・ミュジニーの名門アミオ・セルヴェルが、手狭になったため移転するまで使用していたセラーである。この歴史ある空間で、パスカルは奇をてらうことなく、伝統的な手法を大切にしながら、ピュアな果実味を引き出すワイン造りを行っている。収穫されたブドウは基本的に100%除梗され、自然酵母を用いて発酵。マストの温度が25℃に達するまでピジャージュを行い、発酵が進み25℃を超えると、苦みや強い収れん性のあるタンニンの抽出を避けるため、より穏やかな抽出方法であるルモンタージュへと切り替えるなど、状態を見極めながら丁寧に醸造を行っている。自身の名を冠したドメーヌを立ち上げ、優良な畑と伝統を継承したパスカル。リリース直後から、世界的な評価誌『Bettane+Desseauve』をはじめ、複数のサイトから高い評価を受けている。高い品質の根底にあるのは、彼女が父から引き継いだワイン造りへの誇りと、家族の歴史に対する深いリスペクトにほかならず、その思いは、エチケットのロゴマークにも象徴的に刻まれている。バラのマークには、旧姓の「Rion」のR、父「Daniel」と新姓「Delhautal」のDが密かに忍ばせられている。父が遺した大切な畑を守りながら、未来へと一歩ずつ歩みを進めるパスカルのワインからは、今後も目が離せない。
みんなのワインレビュー
パスカル・リオン・ドロタル クロ・ヴージョ プティ・モーペルテュイ (仏ブルゴーニュ産赤750ml)
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